Fishing(釣竿かついで・・・)


◆イギリスの魚事情

実は日本は世界でも有数の釣り大国だ。 釣り人口も多いし、釣竿やリール、仕掛けや針、なにもかも技術革新が進み、精巧な道具が揃っている。 (マイケル・J・フォックスのCMでおなじみの「シマノ」という釣具メーカーは、イギリスやアメリカの通販カタログでも高級品として人気を集めている。)

ところが! 休日になると海や川にどっと釣り人が押し寄せる日本では、魚のほうもスレて用心深くなっていて、なかなか針に食いついてくれない。魚の数に対して人間が多すぎるのだ。

反対にイギリスの魚はのんびりしたもので、底まで見えるほどの透明度の高い清流には無数の魚がゆうゆうと泳いでいる。 そこに餌でも投げ込もうものならたちまち魚は豹変し、我先にと食いついてくる―――まるで池の鯉のようだ。人間に対して警戒心がないのだろう。 これならどんな初心者でも入れ食いになること間違いなし。

魚がこんな状態なので、イギリスではFly Fishingと呼ばれる釣り方が盛んである。小さな羽虫に見せかけた毛鉤で釣竿をひょいひょいと振って、魚のバイト(食いつき)を誘うのだ。フライ・フィッシングやルアー・フィッシングなどの、本物の餌を使わない釣り方というのは、本来これくらい魚に警戒心のないところでするのが楽しい。 日本でもここ数年ルアーフィッシングがブームだが(ミミズなどの餌を使わないので女性も気軽に楽しめる)、スレまくった日本の魚を相手に初心者が挑戦してもなかなか戦果があがらない。

一方、疑似餌でなくエサ釣りのことはCoarse Fishingと呼ぶ。どちらかというとフライ・フィッシングのほうが高級とみなされているようだが、コース・フィッシングは庶民のお手軽な娯楽である。郊外へと向かう汽車の窓から、池や川縁で釣り糸を垂らす人を見掛けた方も多いだろう。たいていの川は所有権がきまっており、入漁券を購入する必要があることも。 「Private Fishing」の看板が下がっているところでは遠慮しよう。

◆釣具屋

先述のように上流階級の間ではフライ・フィッシングという釣り方が主流なので、当然高級な釣具屋はフライ用の道具中心の品揃えだ。ロンドンで有名な店に「ファーローズ」というのがある。(トラファルガーから徒歩圏) ここには伝統的な味わい深い釣り道具や、後に述べるバブアーのコートなど釣り道具好きにはたまらない商品が揃っている。(ただしお値段も張る)店内には綺麗な写真がいっぱいの雑誌「Farlow's Magazine」があり、聞いてみたら無料でもらえた。読み物も沢山載っていて楽しめる。

庶民向けの店は地方の海辺の町などに行くとよく見つかる。ただ、本気で魚を釣り上げたいという向きには、日本で道具を揃えていったほうが良いだろう。 (安いし品質は良いし。)

◆釣りを楽しむ服装(1)
ワックスド・ジャケット

釣りに限らずロンドンでも田舎でも見掛ける、英国人に愛されているワックス・ジャケット。 なかでも「バブアー」というメーカーの品は女王陛下まで着ているほどだ。

今やワックスジャケットの代名詞ともいわれる「バブアー」の創立者のバブアー氏、もともとは変わり易い英国の空の下で、雨ニモ負ケズ・風ニモ負ケズ、釣りを楽しむために考案したといわれている。 ワックスを生地に染み込ませてあるために少々の雨ではびくともしないスグレモノの防水コートなのだ。風も通さないので暖かい。

長年着続けたワックスジャケットには、別売りの缶に入ったワックスを自分で塗れば、また防水効果がよみがえる。 物を大切にして長く使い続ける英国人らしい品物だ。

バブアーのコートは王室御用達マークがついている一流品なだけにお値段のほうも一流だが、ノーブランドならもっと安いもの(50ポンドくらい)が手に入る。バブアーは大きな店なら日本でも手に入る。価格は4〜5万円といったところ。

 

◆釣りを楽しむ服装(2)
ウーリ−・プーリーのセーター

これは別に本来釣り用でもなんでもなく、夫が釣りに行く時に好んで着ているというだけなのだが、参考までに紹介しておく。

正式にはイギリスの陸軍用のセーターなのだが、体にフィットして具合が良い。 よくイギリスのTVや映画などで警官が着ている、エポレットと肩とひじにあて布のついた紺色のリブ編みセーターを思い出して頂けるとわかりやすい。色は紺とオリーブグリーンがあって、紺は主に警官などのオフィシャルな職業の人用で、オリーブグリーンは主に陸軍。(だから肩のあて布はザックを背負う時、ひじは匍匐前進する時にセーターが擦り切れないようにするためのもの。合理的に作られている)こちらのセーターは軍ものの衣料品を扱っている店(アメ横・中田商店など)ならたいてい手に入る。

◆釣り関連本

現地の駅の売店にも何冊も釣りの雑誌が置いてあるので、興味のある方は手にとってみるとよいだろう。「Trout Fisherman」「Stillwater Trout Angler」「Trout & Salmon」など、あちらではマス釣りが人気のようだ。

アイザック・ウォールトン卿の古典的名著「釣魚大全(原題・The complete angler)」は日本語訳もたくさん出版されている。テムズ川沿いの小さな町マーロウには、ウォールトンゆかりのホテル・コンプリート・アングラーがある。


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