『市街戦』Beloved Enemy (1936)

監督：H.C. Potter

Story

1921年、ダブリン。イギリス支配下のアイルランドでは、カリスマ的なリーダー、デニス・リオダン指揮のもと、アイルランド各地でゲリラ戦が展開されていたが、ある日彼らの本部が急襲され、ショーンたちは仲間を守るために自決して果てた。

この状況を打開しようと、ロンドンから外交特使としてアスリー卿と娘のヘレンがやってくる。爆弾騒ぎの中デニスは逮捕されるが、単なる通行人だったとすぐ釈放される。戒厳令下の緊迫したムードの中街を見に出かけたヘレンは、車にイタズラして怪我をした少年を家に送り届けるが、そこはショーンの未亡人キャスリーンの家で、ちょうど見舞いに来ていたデニスとへレンは再会し、互いに好意を抱く。しかし少年の言葉から彼がお尋ね者のデニス・リオダンだと知ってしまったヘレンは、耐え切れず父親に密告してしまった。

恋してはいけない相手でありながら、互いに想いは募るばかり。やがてアスレー卿の進言でアイルランドとの和平交渉会議が開かれることになり、デニスたちは全権代表としてロンドンに赴く。ロンドンで再会したふたりは逢瀬を重ねるが、デニスは交渉の場で苦しい立場に立たされていた。妥協してこれ以上戦火を拡大させないように休戦協定を受け入れるか、休戦協定を受け入れて仲間に裏切り者として命を狙われるか・・・

Check!

モデルはマイケル・コリンズ

「長身で三つ揃いのビジネススーツに身を包み、自転車に乗ってダブリンの街を走り回るカリスマ的な若き指導者」という主人公の人物像は、明らかにアイルランド独立運動の英雄、マイケル・コリンズをモデルにしているものと思われる。 1921年の対英条約調印の翌年、コリンズは31歳という若さで暗殺された。

『マイケル・コリンズ』Michael Collins (1996)

1921年という時期

この映画の時代設定は1921年ということになっているが、これは実際にモデルとなったマイケル・コリンズが条約結んだ年のこと。

1916年のイースター蜂起以来、アイルランドに駐留しているイギリス軍へのテロやゲリラ戦は激しさを増しており、イギリスは軍事的に弾圧しようと試みたが成功しせず、1921年に休戦を持ちかけてきた。その呼びかけに応えてマイケル・コリンズたちは全権代表としてロンドンに赴き、対英条約を結ぶ。しかしその条約はアイルランド自由国を認めはするが、イギリスへの忠誠を要求するというもので、帰国したコリンズを待っていたのは不満の声だった。条約に調印しなければイギリスとの戦争状態に突入することは必至だったため、アイルランド議会と国民投票でこの条約は承認されたが、イーモン・デ・ヴァレラをはじめとするグループはコリンズと袂を分かち、アイルランドは内戦状態となっていく・・・。

戒厳令下のダブリン

アスリー卿が到着したとき、出迎えたのは装甲車のような車。街中にイギリス軍の兵士たちがあふれるという、ものものしい様子が。

ゲリラ戦、子供たちもイギリスに抵抗

デニスの仲間の「フェニックス・パークに爆弾を投げた」云々という台詞があるが、フェニックス・パークはダブリン北部郊外にあるヨーロッパ最大級の公園のこと。

子供たちはアスレー卿が乗った車の後ろに「Up the Rabel」などと落書きを。また、ヘレンがガーバーを家に送り届けたときも、車の下にもぐりこんだ子供たちはガソリンを抜いてしまった。大人から子供に至るまで、イギリス支配に対する抵抗は根強いようだ。

Phoenix Park

　

海を見に遠回り

自動車を壊され、キャスリーンに自転車を借りたデニスとへレンは帰宅途中に見晴らしのいい海岸にゆく。デニスはゲール語をしゃべってみせたり、おなかが空いたふたりがベリーを摘んで食べたり・・・という微笑ましい場面。デニスは「故郷のゴールウェイで農場をやりたい」と夢を語る。ゴールウェイはアイルランド西部の自然の起伏に富んだ美しい地方。

マーケット

デニスはヘレンと"Gregory Street"のマーケットで待ち合わせをする。野菜の他、各種家畜なども売りに出されていて、活気のあるマーケットの様子が映し出される。

その他

ロンドンでの和平交渉に先立ち、アスリー卿の屋敷で催された歓迎会に招かれたデニスたち6人のアイルランド代表。貴族の住まいにふさわしい豪奢な館。
アイルランドに向かおうと駅にやってきたヘレン。駅近くの壁には「Bovril」のクラシカルな看板が。

ロケ地

アイルランドロケがあったのかどうかは不明
ビッグベン＆ウェストミンスター橋

キャスト

Brian Aherne .... Dennis Riordan

Henry Stephenson .... Lord Athleigh (イギリスの政府高官)
Merle Oberon .... Helen Drummond (アスレー卿の娘)
David Niven .... Gerald Preston (アスレー卿の補佐官)

Karen Morley .... Cathleen O'Brien(同志ショーンの妻)
Ronald Sinclair .... Jerry (Cathleenの息子)
Jerome Cowan .... O'Rourke (デニスの仲間)
Donald Crisp .... Burke(デニスの仲間)

参考資料とソフト

http://uk.imdb.com/Title?0027345

(1936年アメリカ 86分)