Cinema ロケ地別INDEX 俳優 A to Z 女優 A to Z Home

『クロムウェル』Cromwell (1970)

監督・脚本:Ken Hughes

Story

1642年に勃発した清教徒革命は、史上類を見ない国王の公開処刑という劇的な結末を迎える。清教徒革命の立役者オリバー・クロムウェルを中心に描いた史劇。

Timeline

1620 清教徒(ピルグリム・ファーザース)、メイフラワー号でアメリカに移住
1625 チャールズ一世即位
1628 オリバー・クロムウェル、議員となる

チャールズ一世、権利の請願(課税には議会の承認を得ること、不法な逮捕投獄の禁止など)を承認させられる
翌年、議会が解散され、以後11年間議会が召集されなかった。

   
1639 主教戦争(Bishop's War)・・・1637年に長老派(Presbyterian)が主流だったスコットランドに国教会を押し付けようとし、それに対して1639年にスコットランドで反乱が起きる
1640 4月 スコットランドの反乱(主教戦争)を鎮圧する戦費を捻出するために短期議会(The Short Parliament)が召集されるが3週間で解散。

11月長期議会(The Long Parliament)・・・1653年まで続く

1641 アイルランドで反乱が起きる

ストラフォード伯、ロンドン塔で処刑

1642 1月4日、国王が5人の国会議員(John Pym, John Hampden, Denzil Holles, Sir Arthur Haselrig and William Strode)とMandeville卿(後のマンチェスター伯)を反逆罪で捕らえようと兵士を引き連れて下院議員に乗り込み、これをきっかけに内戦が始まる。(*映画ではクロムウェルの名も5人の中に入っていたが、実際のメンバーは上に挙げたとおり)

エッジヒルの戦い(Battle of Edgehill)

1644 7月2日マーストンムーアの戦い(Battle of Marston Moor)

10月27日ニューベリーの戦い(Battle of Newbury)

1645 6月14日ネーズビーの戦い(Battle of Naseby)
1646 (ヘンリー・アイアトン、クロムウェルの長女と結婚)
1647 1月、スコットランドに逃れていたチャールズ一世が捕らえられ、第一次内戦終わる

12月、チャールズ一世脱出

1648 第二次内戦始まる

12月、議会内の独立派・水平派は、王と和解しようとする長老派を追放。残部議会(Rump Parliament)を形成する

1649 国王チャールズ一世の処刑

普通選挙を求める水平派の反乱、指導者の処刑

8月、アイルランドに侵攻

1650 スコットランドに侵攻

ヘンリー・アイアトン、アイルランド総督代理に任命される(翌年病死)

1651 チャールズ二世、スコットランドのスクーンでスコットランド王として即位。ウースターの戦いでクロムウェル軍と対するが、敗れてフランスに逃れる。
1652 第一次 英蘭戦争(イギリス対オランダ)勃発
1653 議会を解散

12月16日 クロムウェル、護国卿(Lord Protector)となる

1654  
1655  
1656  
1657 クロムウェルを国王にしようとする動きがあったが、軍の反対で実現せず
1658 9月3日 オリバー・クロムウェル病死

リチャード・クロムウェル、父の後を継ぎ護国卿となる

1659  
1660 チャールズ二世、誕生日である5月にロンドンに戻り、王政復古を果たす。

 

Check!

清教徒革命(ピューリタン革命)

清教徒が中心になってチャールズ一世の絶対王政を倒した市民革命。下院議会がチャールズ1世の専制的な政治に異議を唱え、1942年に国王が反対派の議員5人を逮捕しようと議会に乗り込んできた事件をきっかけに、王党派と議会派が衝突して内乱となった。議会派のクロムウェルが率いる新式軍隊(New Model Army)が国王軍を破り、1649年に国王が処刑され、イギリスは共和国となる。1658年クロムウェルが死ぬと1660年には再び王政に戻った。

チャールズ1世と王権神授説

チャールズ一世(1600-1649;在位1625-1649)
1600年11月19日、スコットランド王ジョイムズ六世(メアリー・スチュワートの息子)と妃アン・オブ・デンマークの第三子として生まれる。父王は1603年に子供を残さず亡くなったエリザベス一世の後を継いでイングランド王ジェイムズ一世となる。子供の頃は病弱で周囲からほとんどかえりみられることのない孤独な幼年時代を送っていたが、1612年に兄王子ヘンリーの死、1625年の父王の死によって1625年即位。王権神授説をもって絶対王政をしき、議会を解散し親政をとる。1642年に勃発した内乱(清教徒革命)に破れ、1649年に公開処刑される。

王権神授説
王の権利は神から直接授けられたものなので、いかなる地上の制限も受けないという考え方で、絶対王政の理論的な支えとなった。

参考資料(もっと詳しく!):
www.bbc.co.uk/history/state/monarchs_leaders/personality_charles_01.shtml
www.bbc.co.uk/history/historic_figures/charles_i_king.shtml

王妃アンリエッタ・マリア

Henrietta Maria (1609-69、1625年結婚)
フランス王アンリ4世(映画『王妃マルゴ』の"ナヴァール公アンリ")の王女で、きょうだいにはルイ13世がいる。チャールズ一世とは1625年に結婚、のちのチャールズ二世とジェイムズ二世の母となる。 結婚後もカトリックの信仰を守り続け、議会派と対立した時に母国フランスやローマ法王などカトリック諸国からの応援を要請したりと画策する。

王妃用カトリックの礼拝堂に毎日通い、皇太子チャールズ(後のチャールズ二世)も母とともによく通っていた。国王は「君個人はいいが、未来の国王がカトリックではまずい」と危惧するが。この礼拝堂はイニゴ・ジョーンズのデザインによるもの。

チャールズ二世

Charles II (1630-1685)
父チャールズ一世の処刑後、1951年にスコットランドのスクーンで即位を宣言、1951年にウースターの戦いでクロムウェル軍と対するが、敗れてフランスに逃れていた。クロムウェルが没すると1660年5月にロンドンに戻り王政復古を果たす。

チャールズ二世と王政復古の時代を描いた映画>>>『恋の闇 愛の光』Restoration(1995)

オリバー・クロムウェル

Oliver Cromwell(1599-1658)
1599年4月25日にイングランド東部Huntingdonのジェントリ(郷紳、上層地主階級)の家に生まれ、母や通っていたグラマースクールからピューリタンの思想を学ぶ。地主のかたわら議員、治安判事の仕事もする。1642年に内乱が勃発すると議会軍に参加。東部連合軍副司令官となって鉄騎隊(ironsides)を編成。のちにNew Model Armyに編成しなおし、ネーズビーの戦いでは大勝利を収める。1649年に国王を処刑し共和制にする。1658年9月3日病没

妻エリザベス(1598-1665)との間に9人の子をもうける
James (1632に生まれすぐ死亡)
Robert (1621-1639)
Oliver (1623-1644)
Bridget(1624-1662) 長女1646年に Henry Iretonと結婚
Richard (1626-1712) 1658 父の後を継ぎ護国卿となる
Henry(1628-1674)
Elizabeth(1629-1658)
Mary (1637-1713)
Frances (1638-1720)

Trivia:モンティ・パイソンの歌の中にクロムウェルを取り上げたものがあり、これが傑作!
こちらで試聴できます(5曲め) >> "Monty Python Sings"

 

ルパート王子(1619-1682)

父はファルツ選帝候フリードリヒ5世、母はイングランド王ジェイムズ1世の娘エリザベス。チャールズ一世は母方の叔父にあたるため、イングランドで内乱が勃発すると国王軍の指揮を任される。マーストン・ムーアの戦い、ネーズビーの戦いで議会軍に破れ、1654年に母国に戻る。 いとこであるチャールズ二世が王政復古を果たすと再びイングランドに渡る。

新大陸への旅立ち

冒頭、クロムウェル一家がアメリカに渡ろうと準備している場面がある。1620年にジェイムズ一世に不満を持った清教徒がアメリカに移住ていたが、クロムウェルらも新天地を求めてアメリカへの移住を計画していた

囲い込み運動(エンクロージャー)

マンチェスター伯爵が共有地に柵を作って農民たちを追い出し、抵抗するジョン・カーターを逮捕する場面があったが、これもイギリスでたびたび行われていた囲い込み運動(エンクロージャー)のひとつとみられる。第一次囲い込み運動は16世紀を中心に、第二次囲い込み運動は18世紀に盛んになった。当時のイギリスで毛織物が重要な産業で、共有地に柵や生垣などをめぐらせて私有地であることを宣言したうえで羊を放牧することがよく行われていた。

カトリックへの反発

教会に飾られていたきらびやかな十字架や燭台を見て、クロムウェルは偶像崇拝だと激昂する。それらは国王の命令でアーチビショップが置かせたものだった。ピューリタンは聖書の教えに忠実に生きることをモットーとし、カトリック的な教会装飾を排除しようとする。

アイルランド

王に招かれた太った老人ストラッフォード伯爵は「アイルランドで痛めた足が痛い」と言っていたが、彼はアイルランド総督としてイングランド同化政策を実行していた。

1649年からクロムウェルはヘンリー・アイアトンを伴ってアイルランドに侵攻し、アイルランド人から土地を収奪し、軍資金を提供してくれたロンドンの大商人たちに分配した。この遠征により各地のカトリック教会は偶像崇拝と破壊し尽くされ、アイルランドは完全にイングランドの植民地となった。

そのアイルランドを蹂躙した張本人であるクロムウェルを、アイルランド人であるリチャード・ハリスが演じるのは複雑な想いがあったのでは。

その他

映画『To Kill a King』(2003)では、ティム・ロスがクロムウェルに扮し、ダグレイ・スコットがトマス・フェアファックス、ルパート・エヴァレットがチャールズ一世という英国俳優好きにはたまらないキャスト。 日本公開熱烈希望。

imdb.com/Title?0302436

 

ロケ地

Hatfield House

www.hatfield-house.co.uk

Awards

米アカデミー賞:衣裳デザイン賞受賞(Nino Novarese)、作曲賞ノミネート

キャスト

Richard Harris .... Oliver Cromwell

[王室関係者]
Alec Guinness .... 英国王 チャールズ一世
Dorothy Tutin .... 王妃 Henrietta Maria
Robin Stewart .... The Prince of Wales (後のチャールズ二世)
Timothy Dalton .... Prince Rupert (1619-1682)

[王党派]
Nigel Stock .... Sir Edward Hyde
Patrick Wymark .... Strafford伯爵 Thomas Wentworth(1593-1641)
Jack Gwillim .... General Byron

[議会軍]
Michael Jayston .... Henry Ireton
Geoffrey Keen .... John Pym (1583-1643)
Ian McCulloch .... John Hampden(1954-1643、クロムウェルの従兄)
Charles Gray .... Essex伯爵 Robert Devereux(1591-1646)
Robert Morley .... Manchester伯爵 Edward Montagu (1602-71)
Douglas Wilmer .... Thomas Fairfax

[水平派]
Patrick O'Connell .... John Lilburne(1615-1657)

[クロムウェルの家族]
Zena Walker .... Mrs. Cromwell
Mel Churcher .... Bridget Cromwell (クロムウェルの長女)
Anthony May .... Richard Cromwell
Richard Cornish .... Oliver Cromwell II(クロムウェルの息子)
Josephine Gillick .... Elizabeth Cromwell (妻)
Anthony Kemp .... Henry Cromwell
Stacy Dorning .... Mary Cromwell

[聖職者]
Andre Van Gyseghem .... Archbishop Rinucinni (カトリックの大司教)
John Welsh .... Bishop Juxon (王の最後に立ち会った司教)

参考資料とソフト

リンク

imdb.com/Title?0065593

The English Civil War Society
www.english-civil-war-society.org

The Cromwell Association
www.olivercromwell.org

Cromwell Museum
http://edweb.camcnty.gov.uk/cromwell/home.htm

BBC
www.bbc.co.uk/history/war/englishcivilwar/

www.britannia.com/history/monarchs/mon48.html

John Hampden Society
www.johnhampden.org

書籍

『イギリス史重要人物101』
小池 滋・青木 康 (編集)新書館(1997/07)

(1970年 イギリス 145分)


Cinema ロケ地別INDEX 俳優 A to Z 女優 A to Z Home

Copyright (c)2003 Cheeky All Rights Reserved
当サイトに掲載されている情報・記事・画像など、全ての内容の無断転載を禁止します。
引用される際は、必ず出典として当サイト名とURLを明示してください。