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『わが命つきるとも』A Man for All Seasons(1966)

監督:Fred Zinnemann、脚本:Robert Bolt
原作はRobert Boltの戯曲。

Story

16世紀初頭、トマス・モアは深い学識を買われて大法官の地位にまで昇りつめる。時のイギリス国王ヘンリー8世は王妃キャサリン・オブ・アラゴンと離婚するために、みずから英国国教会の長となろうとしていたが、モアは信仰上の理由でどうしても賛同できなかった。彼は議会がローマ教皇にではなくイギリス国王に服従する議案を通過させると国璽を返却し、アン・ブーリンの戴冠式にもその後の祝宴にも姿を見せなかった。当代一の人文学者の無言の抵抗が内外に与える影響は計り知れなかったため、ついに国王はモアの処刑を決定し・・・ヘンリー8世の権力とクロムウェルの陰謀に高潔な信念をもって抗い、ついに処刑された人文学者トマス・モアの生涯を描いた歴史絵巻。

 

Check!

テムズ沿いの水運

モアの屋敷(チェルシー)、リッチモンド・パレス、ハンプトンコート、ロンドン塔・・・と、この物語の舞台はすべてテムズ河沿いで展開する。テムズ水運が利用され渡し船が行き交っていた。

ガーゴイル(gargoyle)

映画の冒頭に無数のガーゴイルが映し出される。ガーゴイルはゴシック建築で怪物の形に作った屋根の水落し口。(オックスフォード大学のガーゴイルが有名。)

人文主義

人文学者たちは「学問は徳の高い人間を生み、哲学者の王を頂いた国には友愛と平和が訪れる」という考えのもとに、中世まで特権階級(貴族や聖職者)に独占されていた学問を、すべての人に解放しようとした。
モアの長女マーガレット・ローパー、養女のマーガレト・ギグス(長女マーガレットの乳母の子)は当時のイギリスで最高級の教育を受けた女性たちだった。養女のマーガレト・ギグスは大陸に亡命し、ブルージュやルーアンに女子修道院を創設し、英国から亡命してきたカトリック教徒の教育に携わった。

Thomas More(1478‐1535)

1478年ロンドンに生まれる。祖父のウィリアムはパン屋を営んでいたが精進を重ねロンドン一の豊かな商人となる。その息子ジョン(トマス・モアの父)はウィリアムの遺産で法律を学び、エドワード4世から家紋を許され紳士階級入りし、高等法院王座部(King's Bench)の裁判官として活躍。
トマス・モアはカンタベリー大司教兼大法官ジョン・モートンの屋敷で教育を受けた後、オックスフォードに進学し、さらにロンドンのリンカンズ・イン法学院で法律を学んだ。エセックスの紳士階級ジョン・コルトの娘ジェーンとの間に長女マーガレットを含む4人の子供をもうけたが、ジェーンが早逝したため、富裕な商人の未亡人アリス・ミドルトンと再婚した。『ユートピア』は外交官としてベルギーに駐在していた時にラテン語で書かれ、当時のイギリス政界と教会の腐敗が批判されている。
モアは深い学識を買われて大法官の地位にまで昇りつめるが、ヘンリー8世の離婚に抵抗したため、1535年7月7日ロンドン塔のタワーヒルにて斬首された。
ロンドン・ブリッジにさらされたモアの首は、長女マーガレットがひきとり、養女マーガレット・ギグスとともに遺骸をパーキング教会に埋葬した。

マーガレット・ローパー(1505-1544)

トマス・モアの長女。
リンカンズ・イン法学院で学んでいた法律家の卵、ウィリアム・ローパーと16歳で結婚。 父の薫陶で優れた人文学者に。映画でもヘンリー8世にラテン語、ギリシャ語の能力を試される場面が。
ロンドン橋にさらされていた父トマスモアの首をもらいうけたエピソードは有名。

著作:
『使徒信教に関する論考』を出版(1525)・・・ラテン語からの英訳
エラスムスの主の祈りについてのラテン語の解説を翻訳出版

ウィリアム・ローパー

トマス・モアの長女マーガレット・ローパーの夫。マーガレットに求婚した時はルーテル派に傾倒していたため、モアをやきもきさせた。
高等法院王座部(king's Bench)主席書記として活躍し、1626年に義父トマス・モアの伝記を出版。

カンタベリー大司教Thomas Cranmer

前任者のカンタベリ大司教ウォーラムが亡くなったため、ドイツで外交官をしていたところを呼び戻された。滞独中にルター派に心酔するようになり、神学者オシアンダーの姪と秘密裏に結婚していたが、大司教就任にあたっては独身を装っていた。(カトリックでは聖職者は結婚できない)

ウルジー枢機卿

枢機卿であると同時に大法官(Lord Chanseler)としてハンプトンコートで政務を執っていた。
映画では"肉屋のせがれ"と揶揄されている。

トマス・クラマー(1489-1556)

カンタベリー大司教。ノッティンガム州Aslocktonに生まれ、ケンブリッジで学ぶ。ヘンリー八世に離婚を勧め、彼のお気に入りとなる。1533年カンタベリー大司教に就任。ヘンリーのキャサリン・オブ・アラゴン、アン・ブーリンとの結婚を無効とし、1540年アン・オブ・クレーブスと離婚させる。ヘンリーの死後は急進的なプロテスタント化を進める。ヘンリーの後を継いだエドワードが亡くなった時に、次の王位継承者をジェーン・グレイとすることに賛成したため、不敬罪で逮捕。1556年に生きたまま焼かれるという残酷な方法で処刑される。

ヘンリー8世、アン・ブーリンについては『1000日のアン』の解説をご覧ください。

 

ロケ地

ハンプトン・コートのセットはパインウッドスタジオ内に組まれた。

Studley Priory, Horton-cum-Studley, Oxfordshire

現在ホテルとして営業している
www.studley-priory.co.uk

Beaulieu River, Hampshire

Lord Montaguの地所で、敷地内にNational Motor Museum, Beaulieu Abbeyなどがある

www.beaulieu.co.uk

 

Awards

米アカデミー賞(作品賞、監督賞、主演男優賞=P.スコフィールド、脚色賞、撮影賞、衣装デザイン賞)

(その他)1999年度英国映画協会によるベスト100作品:43位にランクイン

 

キャスト

Paul Scofield .... Sir Thomas More
(Dame) Wendy Hiller .... Alice More (トマス・モアの妻)
Leo McKern .... Thomas Cromwell(ウルジー枢機卿の秘書)
Robert Shaw .... ヘンリー8世
Orson Welles .... Wolsey枢機卿
Susannah York .... Margaret More (トマス・モアの長女)
Nigel Davenport .... ノーフォーク公
John Hurt .... Richard Rich(モアに就職の斡旋を依頼してきた若者)
Corin Redgrave .... William Roper(Margaret Moreの恋人)
Colin Blakely .... Matthew(トマス・モア家の使用人)
Eira Heath .... (Matthewの妻)
Cyril Luckham .... Thomas Cranmer(カンタベリー大司教)
Vanessa Redgrave .... Anne Boleyn(ヘンリー8世の2番目の妻)

参考資料とソフト

imdb.com/Title?0060665

『イギリス・ルネサンスの女たち―華麗なる女の時代』
石井 美樹子 (著) 中公新書 (1997/10/01) 中央公論社
モアの娘、マーガレット・ローパーについて詳しく書かれています。おすすめ。

DVD

原作戯曲:A Man for All Seasons : A Play in Two Acts by Robert Bolt (Paperback)

(1966年 英=米 119分)


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