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タイトル*ら


『ライアンの娘』Ryan's Daughter

監督:デイビッド・リーン
脚本:ロバート・ボルト

Story

舞台は第一次大戦後のアイルランド西部の寒村。パブの主人トム・ライアンに"プリンセス"と呼ばれ溺愛されて育った娘ロージーは、尊敬していた年の離れたやもめの教師チャールズ・ショーネシーに愛を告白し結婚する。しかし理想の夫を得たはずなのになにか足りない。そんなある日ロージーが父の経営するパブで店番をしていたところに、新任の足の不自由なイギリス人将校がやってきて・・・
イギリス軍将校と瑞々しい人妻の恋の行方を、アイルランド特有の移ろいやすい光と大自然の中に描きだした名作。

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アイルランド独立運動

イースター蜂起(1916年)の失敗後、再起を狙って独立派のメンバーがドイツから密輸した武器を回収するためにアイルランド西部の漁村に集まってきた。
村人はみな独立派に協力的だったが、密かにイギリス軍とつながっていた人物がいて・・・
(→この作品とほぼ同時期のダブリンを描いたのが『マイケル・コリンズ』Michael Collins (1996)

シェルショック

第一次大戦の前線勤務だったドリアン少佐はシェルショック(戦争神経症)にかかっていて、ことあるごとに前線の恐怖が甦る。 第一次世界大戦は多くの神経症に苦しむ人々を生み出した。

イギリスに対する根強い反感

パブに集まるアイルランド人たちはこう言いながら乾杯する:
"Good luck to all Irishmen, Bad luck to the all British, Success to the German!" (ドイツは第一次大戦でイギリスと敵対していたため。敵の敵は味方ということか)
ユニオンジャックのはためく駐屯地や、イギリス軍とつながっている警官に反感を露にするものも多い。

Rosyの結婚パーティ

パーティに参加した人々は、フィドル(弦楽器)を弾いてアコーディオンを奏でて歌い踊る。初夜の晩だというのにいつまでも窓の下で騒ぎたてている。
ロージーに親身に相談に乗ってくれる神父は、結婚の際(カトリックなので)伴侶が死ぬまで離婚できないと説く。

墓地

ショーネシーの先妻の墓参りをする場面:墓石にはケルト十字をあしらったものが多い。

自然の美しさ

森の中のブルーベルの群生地、馬のたてがみ、たんぽぽの綿毛、きらめく蜘蛛の糸、ゼンマイのうぶ毛・・・繊細な映像が非常に印象的。

Awards

アカデミー賞:助演男優賞=ジョン・ミルズ、撮影賞=フレディ・A・ヤング

ロケ地

Dingle Peninsula, Ireland

Noordhoek Beach, Cape Town, South Africa

キャスト

Sarah Miles .... Rosy Ryan(パブの主人Tom Ryanの娘、Charlesの妻)
Robert Mitchum .... Charles Shaughnessy(村の教師・Rosyの夫)
Trevor Howard .... Father Collins(
神父)
Christopher Jones .... Randolph Doryan
(イギリス人将校・少佐)
John Mills .... Michael
(ちえ遅れで言葉の不自由な男・Rosyが好き)
Leo McKern .... Tom Ryan(パブの主人・Rosyの父)
Barry Foster .... Tim O'Leary(アイルランド独立派のリーダー)
Marie Kean .... Mrs. McCardle
Archie O'Sullivan .... McCardle
Douglas Sheldon .... Driver
Gerald Sim .... Captain(
イギリス軍)
Barry Jackson .... Corporal (
イギリス軍)
Des Keogh .... Lanky Private(
イギリス軍)
Niall Toibin .... O'Keffe
Tim O'Learyの仲間)
Philip O'Flynn .... PaddyTim O'Learyの仲間)
Niall O'Brien .... Joseph Tim O'Learyの仲間)
Ed O'Callaghan .... BernardTim O'Learyの仲間)
Owen O'Sullivan .... Peter
Evin Crowley .... Moureen(
村の女)
Donal Neligan .... Moureen's Boyfriend
Brian O'Higgins .... Constable O'Connor (
警官)
May Cluskey ....
雑貨屋の主人

(1970年 イギリス 203分)

video
video(widescreen)


『ライフ・イズ・スウィート』Life Is Sweet (1990)

別題:『ライフ・イズ・スイート』『ライフ・イズ・スィート』

監督・脚本:マイク・リー
音楽:レイチェル・ポートマン

Story

ベビー洋品店で働くウェンディは、チャキチャキとした元気のいい主婦。 料理人をしている夫のアンディは、飲み仲間のパッツィからポンコツ移動販売車を買って新しい商売を夢見ている。 双子の娘のナットはボーイッシュな配管工で、もうひとりのニコラは拒食症で引きこもり気味。一家と家族ぐるみの付き合いがあるオーブリーは、レストランを開業するのにウェンディを応援に頼む・・・

ロンドン郊外に住むとある家族の日常を描いたビタースウィートな人間ドラマ。

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なんでもDIY

妻のウェンディに頼まれてアンディは浴室のタイルの補修やパティオに手を加えたりしているが、イギリス人は家を改造したり補修したりするのにめったに業者を頼まず、自分で済ませる人が多い。(頼んでも業者がなかなか来てくれないからだとする説もあるが・・・)

ニコラの悪態

ボーイッシュなナットが買ってきた男物のシャツを見て、「布巾(teatowel)みたい」と悪態をつくニコラ。ティータオルとひとくちに言ってもコレクターが集めるような美しいものから、ワーキングクラスが日常的に使い古すものまで千差万別。

また、ニコラが着ている「Bollocks to the Poll Tax (=人頭税なんてくそくらえ)」と大書されたTシャツも、サッチャー政権時代の諸相を感じさせる。

パブのある風景

アンディが悪友のパッツィと一緒にパブに出かける場面が。 フットボール談義をしながらグラスを傾けるところがいかにも英国男の日常。

フィッシュ&チップス

レストランの開店初日、オーブリーに「終わったらフィッシュ&チップスを食べに行こう」と言われたその言葉をずっと大事にしている副シェフのポーラ。

あまりにも客が来ないので腹を立てたオーブリーはこう叫ぶ:「みんなフィッシュ&チップスでガンになっちまえ!」

「Aレベルを三つも取ったのに」

引きこもりのニコラに対し、ウェンディは「学校の成績は良かったのに(Aレベルを三つも取ったのに)」と嘆息。 イギリスの学校制度の試験には、Oレベル(Ordinary level)、Aレベル(Advanced level)というのがある。難易度によって普通課程(Oレベル)と上級課程(Aレベル)に分かれ、その獲得科目の数は大学進学の際に大きく影響する。ニコラは上級課程の試験に三科目合格したということ。

字幕で訳しきれない英国的表現

かなり??と感じる訳が多々あったが、イギリスに関するところだけ一部挙げてみる:
アンディに「ティーを」と言われたウェンディは、「チキン・カセロールがオーブンにあるわ」と答える。 この場合の「tea」はお茶でなく「食事」の意味。

アンディが物置にパッツィを案内し、陶器の人形を「物売りから買った」と説明する場面。原語はCar Boots Saleなのだが、これは家々を回る物売りではなく「ガレージセール」というくらいの意味。家にある不用品をガレージや庭先などで売るのがこの「Car Boots Sale」。

オーブリーがウェンディにメニューの説明をしている場面。字幕にある「黒プリン」と聞くと、なにやら黒ゴマプリンのようなデザートを想像してしまうが、実は原語では「Black Puddingのスープ添え」と言っている。Black Puddingとは、オートミールに豚の血を混ぜて固めた太いソーセージのようなもの。

ロケ地

Enfield, Middlesex (ロンドン北部)

Awards

LA批評家協会賞:主演女優賞(アリソン・ステッドマン)、助演女優賞(ジェーン・ホロックス)

1999年度英国映画協会によるベスト100作品:95位にランクイン

キャスト

Alison Steadman .... Wendy(母)
Jim Broadbent .... Andy (父・料理人)
Claire Skinner .... Natalie (双子の娘・男の子っぽい)
Jane Horrocks .... Nicola (双子の娘・拒食症)

Stephen Rea .... Patsy (Andyの友達・山師っぽい)
Timothy Spall .... Aubrey(Andy一家の友達・"Regnet Rich"のオーナー)
David Thewlis .... ニコラのボーイフレンド
Moya Brady .... Paula (Auburyの助手)

参考文献・ソフトなど

国内盤ビデオは廃盤(レンタル店でどうぞ)
字幕なしでよければ日本のアマゾンからも取り寄せできる

(1991年 イギリス 90分)


『ラスト・オブ・イングランド』Last of England (1987)

監督:デレク・ジャーマン
音楽:サイモン・フィッシャー=ターナー
衣装:サンディ・パウエル

テロ、戦争、貧困、ファシズム、エロス(愛)とタナトス(死)・・・Derek JarmanのメッセージがSimon Fisher-Turnerによるサウンドと相乗効果をあげて、圧倒的なまでに美しい映像を織り成している。

撮影は1987年の夏から秋にわたって行われ、監督の自室での夜間撮影、1928〜1953年に監督の父や祖父によって撮影されたホームビデオ、ロンドンやリバプールの廃虚での撮影、近未来的世界の映像・・・とが所々にコラージュされて効果を高めている。ユニオンジャックを冒涜したと、当時かなり問題になった。

 

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タイトル「ラスト・オブ・イングランド」

この作品のタイトルは、Ford Madox Brown(1821-93)の作品「Last of England(イングランドへの最後の一瞥)」からとられている。ホワイトクリフを背に新世界へと旅立つ移民の姿を描いたもの。

当初は「Victorian Value(ヴィクトリア時代の価値観)」というタイトルにする予定だったが、後に改題した。

カラヴァッジオ「世俗の愛」

冒頭で刺青の男によって踏み付けにされた上自慰の道具とされた絵画は、イタリアの画家Caravaggio(1565-1609?)の作品「Profane Love(世俗の愛)」。裸のキューピットを描いたもので、主題は現世の地上的な愛を賛美しているものといわれている。この刺青の男はジャーマン監督の当時の恋人だとか。

フォークランド紛争と王室・サッチャー政権への批判

エルガーの「威風堂々」の音が絶えた後、三人の黒衣の女性(=王室や当時の首相サッチャーを象徴)が登場する。

女性のひとりが、覆面のテロリストに「フォークランドでは楽しみましたか?(Did you enjoy the Folkland?)」と尋ねると、テロリストは「Yes, ma'am.」と恭しく答える。(註:字幕ではなぜか"チリで戦ったの?"という訳になっているが、フォークランド紛争の相手国はアルゼンチン。)
この女性はいくつか質問をした後、「頑張って(Keep up the good work.)」とねぎらいの言葉をかける。

結婚式の準備をしているところに連れてこられた乳母車の赤子は"The Sun"などの新聞紙に包まれているが、どれも一面で大きくフォークランド紛争の記事を取り上げているものばかり。

この結婚式のバックに流れているのは、アンドリュー王子の結婚式の実況録音。

ロケ地

ロンドンやリバプール郊外の廃虚

ホームビデオの中で、雪の基地を戦闘機が飛び立つ場面はスコットランドのロッシマス基地で撮影されたもの。

アビンドン空軍基地・・・ホームムービーの部分

Rotherhithe, ロンドン(SE16)

Millennium Wharf

 

Awards

ベルリン映画祭フォーラム・国際芸術映画委員賞。

キャスト

ナレーター:ナイジェル・テリー

恋人たち:
ティルダ・スウィントン/Spencer Leigh

冒頭でカラヴァッジオの絵を踏みつけにする男:
'Spring' Rupert Audley

参考文献・ソフトなど

国内盤DVDあり

Video
Soundtrack

(1987年 イギリス 87分)


『ラブ&デス』 Love and Death on Long Island (1997)

監督・脚本:Richard Kwietniowski
原作:Gilbert Adair

Story

初老の純文学作家ジャイルズ・デアス(De'Ath)は、時代遅れの頑固者としてつとに有名。ある日お手伝いさんが戻ってくるまでの時間潰しにと、E.M.フォースター原作の文芸映画を見ようと映画館に入ったが、間違えて「ホット・パンツ・カレッジ2」などというアメリカのおバカ映画のチケットを買ってしまう。ところがジャイルズは席を立とうとした瞬間、スクリーンに映っていたティーン・エイジ・アイドルの美少年ロニーに一目ぼれ。彼の姿は先日テート・ギャラリーで見た絵とそっくりだったのだ。

以来、ジャイルズは毎日熱に浮かされたようにロニーの姿を追いかけはじめる。人目を忍んでアイドル雑誌を買い求めてスクラップブックを作り、夜な夜なビデオでロニーの作品を観てため息をつく。そしてついにジャイルズはロニーの住むアメリカのロング・アイランドへ向かうのだが・・・。

現代版「ベニスに死す」ともいわれたギルバート・アデア作品の映画化。

 

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テート・ギャラリー

亡き妻の妹とふたりでテムズ川のほとりにあるテート・ギャラリーに出かけたジャイルズ。義妹は「ラファエロ前派の絵は良く分からない」と言っているが、ここはラファエロ前派やターナーをはじめとする英国近代絵画のコレクションが有名な美術館。

ジャイルズが目を留めたチャタートンを描いた作品のある場所は、"Word & Image"の部屋で、中央に大きく有名なウォーターハウス作「The Lady of Shalott」も見える。この部屋には他にバーンジョーンズ、ロセッティの「ベアータ・ベアトリクス」、ミレーの「オフィーリア」などラファエロ前派の名作が綺羅星のごとく揃っている。>>Tate Britain: Word and Image Room

チャタートンの絵

テート・ギャラリーでジャイルズが惹かれたのは、ヘンリー・ウォレス(Henry Wallis, 1830-1916)の1856年の作品「チャタートン」。

題材となった美貌の夭折詩人として有名なトーマス・チャタートン(Thomas Chatterton, 1752-1770)は、ブリストル寺院の書記の子として生まれ、他人の名を借りた偽作を次々と発表して話題となる。その後ロンドンに出て活躍するもパトロンのLord Mayor Beckfordが亡くなると出版社も援助を拒否するようになり、貧しさの中で自ら服毒し17歳の生涯を閉じる。>>Tate Britain: "Chatterton"

E.M.フォースターの文芸映画

頑固者のジャイルズは、E.M.フォースター(1879-1970)のように自作を映画化する気はないときっぱり拒否。しかしやはりフォースターのことは気になるらしく、雨宿りにフォースターの作品"The Eternal Moment"を見に行く。

フォースターの作品は『眺めのいい部屋』をはじめとして『インドへの道』『モーリス』『ハワーズエンド』『天使も許さぬ恋ゆえに』と、映画の原作としては大変人気がある。"The Eternal Moment"はフォースターの1928年の短編だが、映画化はされていない(はず)。

文字放送:テレテキスト

イギリスのTVにはたいてい文字放送の字幕を表示できるデコーダーが内蔵されていて、リモコンひとつで字幕を表示させることができる。リード夫人のように聴覚に障害のある人の他、英語があまり堪能でない外国人にも嬉しいシステム。

英語と米語

ジャイルズ曰く「アメリカではCheck(伝票)をもらってBill(紙幣)で払うが、イギリスではBill(伝票)をもらってCheck(小切手)で払う。」
このようにイギリスとアメリカでは「Check」と「Bill」の意味が全く違う。

"He's very British."

ジャイルズの"いかにも英国人"な服装や立ち居振舞いに、ロニーやその恋人オードリーをはじめとしてロング・アイランドの人々はみな注目する。リゾート地であるロング・アイランドでも、常に仕立ての良い三つ揃いのツイード・スーツを身に付け、フォーマルな革靴で歩きすぎて足に豆を作る姿がキュート。

アイドルから脱皮したいロニー

ティーンエイジ・アイドルとして人気を集めながらも、ロニー自身はもう少し内容のある映画に出演したいようだ。英国人のジャイルズに対し、同じ英国人であるアラン・パーカーに会ったことがあるという話を持ち出す。アラン・パーカーは、ロニーが例に出した『バーディ』(1984年, マシュー・モディーン主演)の他、『ザ・コミットメンツ』『ミッドナイト・エクスプレス』『ミシシッピー・バーニング』など、数々の社会派作品を手がける。つまり、アイドルであるロニーがとても出演できなそうな映画を。

ロニーを演じているジェイソン・プリーストリー自身も、当時アメリカの人気TVドラマ「ビバリーヒルズ青春白書」(通称"ビバヒル")のレギュラー・アイドルで、ロニーと同じような境遇だった。ジョン・ハートに"そろそろビバヒルをやめてはどうか"とアドバイスされたのが原因か、のちにプリーストリーはレギュラーを降板して映画俳優としての道を進みはじめる。

原作者ギルバート・アデア

イギリスの作家で、小説、批評、エッセイ(The Guardian等)に幅広く活躍。
邦訳: 『作者の死』(早川書房)、『ポストモダニストは二度ベルを鳴らす』(白水社)

 

ロケ地

ロンドン・・・テート・ギャラリーなど
カナダ(Nova Scotia)・・・Dalhousie Universityなど
ニューヨーク

Awards

英アカデミー賞新人賞(Most Promising Newcomer in British Film)受賞・・・Richard Kwietniowski
英インディペンデント映画賞 Best Performanceノミネート・・・ジョン・ハート
シカゴ国際映画祭FIPRESCI Award受賞・・・ジョン・ハート、Richard Kwietniowski
NY批評家協会賞 第一回作品賞受賞
1997年カンヌ映画祭正式出品作品

キャスト

(ロンドン)
John Hurt .... Giles De'Ath(作家)
Sheila Hancock .... Mrs. Barker(Gilesのハウスキーパー)
Gawn Grainger .... Henry (Gilesのエージェント)
Elizabeth Quinn .... Mrs. Reed (耳が不自由な女性)

(ロングアイランド)
Jason Priestley .... Ronny Bostock (ティーンエイジアイドル)
Fiona Loewi .... Audrey (Ronnyの恋人)
Maury Chaykin .... Irving Buckmuller (ダイナーの主人)
Linda Busby .... Mrs. Abbott (モーテルの主人)

参考文献・ソフトなど

オフィシャルサイト

邦訳:『ラブ&デス』
ギルバート・アデア・著/池田 栄一・訳/角川書店(1998/09/01) ISBN: 4047913006

Book
_Love and Death on Long Island_ by Gilbert Adair
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Amazon.Japan / US

_Love and Death on Long Island_ by Richard Kwietnowsky
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Amazon.Japan / US

Video

(1997年 イギリス 93分)


『ランド・アンド・フリーダム〜大地と自由〜』Land and Freedom(1995)

監督:ケン・ローチ
脚本:ジム・アレン

Story

リバプールの救急車のなかでひとりの老人が息を引き取る。祖父Davidの遺品を整理していた孫娘が、彼の恋人Kittyに宛てて書いた書簡や新聞記事の切り抜きを読み進めるうちに、スペイン内戦に若き情熱を燃やしたDavidの過去を知る…。

1936年、誕生して間もないスペイン共和国政府に対してファシストのフランコ将軍が反乱を起こした。労働組合を核とした民兵隊が民主主義を守るためファシストと対立し、戦火はスペイン全土に広がる。この状況を憂い、当時諸外国から理想に燃えた若者が志願して民兵隊に加わった。リバプールで失業中の共産党員Davidもそのひとりだった。

Davidの属するグループのリーダーVidalの恋人Blancaに寄せる想い、戦闘で村人を楯にするファシストの非情さ、そして同じくファシストを敵とする立場でありながら対立するようになったスターリン主義者と民兵隊・・・名匠ケン・ローチの野心作。

Check

スペイン内戦

スペインでは1936年2月の総選挙の結果、人民戦線派が勝利し民主改革を提唱。富裕層(地主、資本家、教会)は労働者階級の台頭を恐れた。7月18日、ファシストのフランコ将軍が新政府に対して反乱。労働組合を核とした民兵がファシストに対抗し内戦が始まった。

フランコ将軍
=Francisco Franco y Bahamonde(1892-1975)スペインの政治家。国家主席。1936年人民戦線政府成立に対抗し、反政府クーデターを組織。国民政府主席および軍司令官となる。二年半にわたる内乱に勝利をおさめ、独裁的な国家に統一した。

Davidのグループは外国からの志願者で構成されており、国籍はドイツ、アイルランド(元IRA!)、スコットランド、イタリア・・・とさまざま。
映画『アナザー・カントリー』でも共産主義の青年Juddはパブリック・スクール卒業後スペイン内戦に参加し命を落とす。

共産党員としてのDavid

Davidの孫娘が遺品を整理していた時、鉄道労働者の問題や、炭鉱閉鎖の危機、社会労働党についての新聞記事がたくさん出てくる。トランクの中にあったスペイン内戦関係の記事も、「The Daily Workers」。名前からして社会主義、共産主義者が読む新聞と思われる。

特権階級の擁護者であるフランコ将軍側を倒すために、たくさんの外国からの有志も人民戦線側の民兵となるべくスペインに向かった。Davidもそのひとり。

POUM (Partido Obrero de Unificacion Marxista):反スターリン主義の共産主義政党。ソ連の旗の下部に「POUM」と白く染め抜いた旗を掲げている。

Awards

カンヌ映画祭国際批評家連盟賞

ロケ地

リヴァプール、スペイン

キャスト

Ian Hart .... David Carr
Rosana Pastor .... Blanca (
女性兵士・クーガンの恋人)
Iciar Bollain .... Maite
(女性兵士)
Tom Gilroy .... Lawrence
Marc Martinez .... Vidal
クーガン(POUMの民兵小隊長・元IRA)
Frederic Pierrot .... Bernard
Angela Clarke .... Kitty(David
が故郷に残してきた恋人)

参考文献・ソフトなど

書籍:『ケン・ローチ』グレアム フラー(編)
フィルムアート社 単行本(2000/10/01)

Video
Soundtrack

(1995年 英=西=独 110分)


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