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タイトル*


『ラルフ一世はアメリカン』 King Ralph (1991)

監督:David S. Ward
原作・脚本:Emlyn Williams 小説"Headlong"
撮影:ケネス・マクミラン

 

Story

英国王室の面々が一堂に会して記念撮影をしていた時に、不幸にも突然の感電事故で全員があの世行き。 王位継承者として選ばれたのは、王室の遠縁にあたるこてこてのヤンキー男ラルフ。アメリカとイギリスのカルチャー・ギャップに戸惑う慣れない生活の中、お忍びで入ったストリップ劇場で出会った庶民の娘ミランダと恋に落ちてしまう。 ところが、王位を狙う貴族グレイヴズ卿がそれを利用して何やら良からぬ企みを・・・

 

Check!

ヤンキー「ラルフ」

野球帽にスタジャン姿の、こてこてのヤンキー男ラルフ。その上「エドワード」や「チャールズ」ならともかく、「ラルフ」なんてあまりにも威厳を欠く名前。他の「Ralph」の例として挙がるのもラルフ・マッチオ、ラルフ・ローレンなど、アメリカ人の名前ばかりだ。 英国俳優Ralph Fiennesも「Ralph」と書いて「レイフ」と発音するし。

ジョージ三世

ラルフに歴代国王の肖像画を見せる場面で、ジョージ三世を指して「アメリカの生意気な植民地時代の国王で・・・」と説明する。ジョージ三世は映画『英国万歳!』The Madness of King George(1994) にも描かれているように晩年は精神の安定を欠いたことで知られており、在位中に起こった独立戦争でアメリカはイギリスから独立してしまった。

スポティッド・ディック(Spotted Dick)

伝統的な英国料理を説明される場面で、ローストビーフのヨークシャー・プディング添え、バンガー、スポティッド・ディックが出て来る。

スポティッド・ディックとは、レーズンが入った蒸しケーキのことで、イギリスの伝統的なお菓子。しかしラルフはこの名を聞いて「まだらの××だと?!」と驚く。
Spotted Dickの材料は小麦粉、ケンネ脂、砂糖、干し葡萄などで、干し葡萄が「spot」に見えることから名づけられたもの。「Dick」はスラングで××の意味 (辞書ひいてください・汗)なので、このお菓子のことを知らなかったラルフは誤解してびっくり仰天。一緒に出されたバンガー(正確にはBanger and mash,ソーセージと付合せのマッシュポテトの組合せ)を見て、そちらをSpotted Dickと思い込んでしまった。

レイモンド・レヴューバー(Raymond Revuebar Theatre)

ロンドンSOHO地区にあるストリップ劇場。リヴァプール出身のポルノ・キングPaul Raymondが作ったストリップ劇場で、「地球の歩き方」にも紹介されているほど有名な存在。看板も映っており、ラルフが遊びに行ったのはここらしい。「Brewer streetにあるストリップクラブ」と言及されているが、実際にこの劇場はBrewer streetから折れてすぐのところにある。(地図参照)

Raymond Revuebar Theatre
7-12 Walkers Court, London W1F 0ED

「世界で二番目に大きいダイヤだ」

ラルフの部屋に運び込まれたのは、戴冠式用の王冠で、普段はロンドン塔に展示されているクラウン・ジュエル。「世界で二番目に大きいダイヤだ」という台詞は、この王冠に付けられた世界で二番目に大きいダイヤモンド、312.40ctの「カリナンII」のこと。ちなみに世界最大のダイヤ530.20カラットの「カリナンT」、別名「アフリカの星(Great star of Africa)」で、王笏につけられて同じくロンドン塔に展示されている。

スチュワート王家

上院議員のグレイヴズ卿は、スチュワート王家の血を引く貴族。 現在のウィンダム王家(仮名)の血統が絶えたのなら、スチュワート王家から王位継承者を選べばよい」と提案し、ひそかに王位簒奪を企む。 イングランドにおけるスチュワート朝は、エリザベス一世の後継者ジェームズ1世(在位1603-1625。スコットランド王ジェームズ六世、スコットランドのメアリー女王の息子)にはじまり、アン女王(在位1702-1714)に終わった王朝。

クリケット

クリケットのルールを習っているラルフは、ついアメリカ風に野球の流儀でプレイする。ボールを打ったら二点を往復しなければいけないのに、野球のようにくるっと回ってしまう。

ミランダの実家

ミランダの実家はいかにも労働者階級が住んでいるといった風情の地域で、通りから通りに洗濯物がはためいている。 彼女の父と兄は勤めていた製鉄所の閉鎖に寄って失業中。ストリップ劇場への出演も、家計を助けるためだった。

 

ロケ地

[バッキンガム宮殿として使われたロケ地]

[ウィンザー城として使われたロケ地]

 

タワー・ブリッジ(王室専用車が通る場面)

The Mall, London(バッキンガム宮殿に至る道)

St. Pancras Station(フィンランド国王一家を迎えた駅)

ピカデリー・サーカス(ラルフとミランダのデート)

Burger King, Slough(ラルフとミランダのデート)
www.burgerking.co.uk

SOHO周辺(ラルフがストリップ劇場を見に行った場面)

Cafe de Paris, 3-4-Coventry street, London W1D 6BW(ストリップ劇場内部として)

ビッグ・ベン&国会議事堂周辺

Highclere Castle, nr Newbury, Berkshire RG20 9RN(グレイヴス卿の家として)
www.highclerecastle.co.uk

Prince Alfred & Formosa Dining Room
5a, Formosa St Maidavale,London W9 1EE--MaidaVale
www.pubs.com/prinw9.htm
(ザンビージ国王と一緒にダーツをしたパブ)

Rotherham, South Yorkshire(ミランダの実家があるところ)

ブレナム宮殿(ラストシーン、ラルフの屋敷として)

 

キャスト

John Goodman .... Ralph Jones(英国王ラルフ一世になったアメリカ人)
Peter O'Toole .... Lord Willingham(ラルフの教育係)
John Hurt .... Lord Graves(王位を狙う上院議員)
Camille Coduri .... Miranda(ラルフと恋仲になる庶民の娘)
Richard Griffiths .... Phipps(副秘書)
Leslie Phillips .... Gordon(侍従)
James Villiers .... Hale(首相)
Joely Richardson .... Princess Anna(フィンランド王女)
Julian Glover .... King Gustav(フィンランド国王)
Judy Parfitt .... Queen Katherine(フィンランド王妃)
Rudolph Walker .... King Mulamboa(アフリカのザンビージ国王)
Niall O'Brien .... McGuire

 

参考資料とソフト

imdb.com/Title?0102216

_On Location_ by Brian Pendreigh
Mainstream Publishing (16 October, 1995)

(1991年 アメリカ 97分)


『ラッキー・ブレイク』 Lucky Break (2001)

監督:Peter Cattaneo
脚本:Ronan Bennett
音楽:Anne Dudley『フル・モンティ』『クライング・ゲーム』

Story

冴えないチンピラのジミーは相棒のルディとともに軽犯罪を繰り返していたが、大きく当ててやろうと銀行強盗をもくろむが、ドジなふたりはあっさり逮捕。収監されたLong Rudford刑務所での暮らしは快適とは言いがたく、嫌味な看守に抵抗して入所早々懲罰房に入れられる始末。 なんとか脱走を図ろうとジミーたちが目をつけたのは、警備が手薄な刑務所内の古いチャペル。 ミュージカル好きな所長が囚人たちによるミュージカルの上演会場としてそのチャペルを選んだことを知り、出演希望者として名乗りを上げる。 主役に抜擢されたジミーと相手役である更正カウンセラーのアナベルの間には、いつしかロマンスが生まれる。

一癖も二癖もある囚人たちが織り成す男の友情、シャバに残してきた家族への想い、恋、嫌味な看守によるイジメ、手に汗握る脱走劇。囚人たちはラッキー・ブレイク=千載一遇のチャンスをつかめるのか・・・?

『フル・モンティ』The Full Monty (1997)のピーター・カッタネオによる監督第二作。

Check!

ミュージカル「ネルソン提督」

ミュージカル好きな所長のモーティマー氏が作ったのは「ネルソン提督」という、イギリス海軍の英雄ホレイショ・ネルソンをモデルにした物語。 ネルソン提督とレディ・ハミルトンとのロマンスから壮絶な最期までが、歌に乗せて語られる。 歌っている囚人たちの素人っぽさもご愛嬌。
ネルソン提督とレディ・ハミルトンについては『美女ありき』 That Hamilton Woman(1941)の項をご覧ください。

息を引き取る時に「キス・ミー・ハーディ」と言ったエピソードも有名。

ちなみにこの劇中激ミュージカルに登場する歌は、スティーブン・フライの手によるもの。 フライは大ヒットしたウェストエンドミュージカル『ミー&マイ・ガール』の脚本を担当したことでも知られている多才な人。

ミュージカル好きな所長を演じるのは、ミュージカル映画『サウンド・オブ・ミュージック』でトラップ大佐を演じていたクリストファー・プラマーだというのも、ニヤリとさせられる絶妙な配役。 プラマーは劇中で見事なピアノの腕も披露している。

abandoned me!

ルディは銀行強盗をした時に自分を置いて逃げたジミーのことを恨んでいた。囚人仲間に話すときに、「俺を見捨てて(abandoned)逃げたんだ!」と語気を荒くするが、すぐに「ホモの話じゃない」と注釈をつける。「abandon」は恋愛関係にある男女(男同士でも)の、捨てた・捨てないという話によく使われる言葉なので、仲間の誤解を防ぐためにつけくわえたのだ。

紅茶のある風景、アッパー・ミドル・クラスのロジャー?

ロジャーは自分の部屋にジミーたちを招いた時に、アール・グレイの紅茶を出す。 普通の平均的イギリス人は紅茶の銘柄などこだわらないので、この場面は彼が他の囚人たちより上の階級出身であることを示している。 ジミーは"妙な匂い"といわんばかりに、変な顔をする。 ロジャーの部屋にハードカバーの本がいっぱい並べられていること、妻に手紙を書こうとするクリスの相談に乗って文面を考えてやる場面も、彼の教養を裏付ける。 実際、ミュージカルの配役でもロジャーは英国王ジョージ三世の役を演じることになった。 ジョージ三世については『英国万歳!』The Madness of King George(1994) の項をご覧ください。

紅茶は一日平均五杯

ロジャーの刑期はあと7年。面会に来た妻と離れている時間の長さについて語る時に、「12770杯の紅茶」という。 365日×7年とすると、彼は一日に約5杯弱の紅茶を飲んでいるらしい。

アイルランド訛り

ジミーはネルソンの役をやらされることになった時、自分が適任でないことを訴えるにあたって「自分はアイリッシュ訛りがあるから」と言っている。 アイルランド系移民のジミーと黒人のルディは幼なじみであることの他に、イギリス社会ではマイノリティ同士であるという親近感が生まれていたのだろうか。

ジミーはアナベルに「ここを出たらベルファストの"スカンディア"で君と食事をしたい」と語りかける。Skandia Restaurantsはベルファスト市内に何店舗かあるレストラン。

トマト命

囚人のひとりレニーは、そのコワモテなルックスに似合わず刑務所内でのトマト栽培に情熱を燃やす男。『グリーンフィンガーズ』Greenfingers (2000) も更正プログラムの一環として囚人たちが造園にいそしむ物語だったが、レニーも丹精込めてトマトを栽培しているようだ。

刑務所への取材

この作品を撮るにあたって取材協力に応じてくれたのは、ロンドン郊外のワンズワース刑務所だったとか。
脚本を担当した北アイルランド出身のRonan Bennett は、実際にテロ容疑で服役したことがある。

 

ロケ地

HMP Dartmoor(Dartmoor Prison), Devon, England

シャーロックホームズの『バスカヴィル家の犬』の舞台となったダートムア。この作品に登場する脱獄犯はこのダートムア刑務所から逃げてきたという設定だったらしい。 その関係もあってよくホームズもののドキュメンタリーにも、この監獄の映像が使われることが多い。

Princetown, Yelverton, Devon PL20 6RR
http://www.hmprisonservice.gov.uk/

Oxford Prison, Oxfordshire, England

Napsbury Hospital, St Albans, Hertfordshire, England

現在は閉鎖中の精神病院

Park Lane(Hyde Park脇), London

冒頭でジミーたちが銀行強盗を企てた場所は、36番のダブルデッカーバス(Paddington発New Cross行き)が通る路線で、「Meridien」の旗がちらっと見える場所。このふたつの条件を付き合わせると、「Le Meridien Grosvenor House Hotel」のあるパーク・レーンであることが特定できる。
Le Meridien Grosvenor House
Park Lane, London, W1K 7TN, United
http://www.lemeridien-hotels.com/

その他

オフィシャルサイトのプロダクションノートには「キングスクロス近くにある英国初のスポーツジム"ヴィクトリアン・ジャーマン・ジム"」とあるが、具体的に特定できず。

キャスト

囚人

James Nesbitt .... Jimmy
Timothy Spall .... Cliff (囚人・気弱な元ミュージシャン)
Bill Nighy .... Roger(囚人・育ちのいい中年紳士)
Lennie James .... Rudy (囚人・ジミーの相棒)
Raymond Waring .... Darren (囚人・放火魔)
Frank Harper .... John Toombes(移送されてきた暴力的な囚人)
John Pierce Jones .... Mad Lenny (囚人・トマト栽培に情熱を燃やす)
Ram John Holder .... Old Bill
Desmond McNamara .... Arthur
Ofo Uhiara .... Wayne
Andy Linden .... Kenny(John Toombesの手下)
Peter McNamara .... Ward(John Toombesの手下)

監獄の職員

Christopher Plummer .... Graham Mortimer (所長)
Olivia Williams .... Annabel(更正準備室カウンセラー)
Julian Barratt .... Paul Dean (演技指導するカウンセラー)
Ron Cook .... Perry (意地悪な看守)
Peter Wight .... Officer George Barratt (看守)
Sean McKenzie .... Perry看守の助手

囚人の家族

Celia Imrie .... Amy (ロジャーの妻)
Annette Bentley .... Julie (クリスの妻)
William Howe .... Ritchie (クリスの息子)

ティモシー・スポールによる弾き語り「サニー」が泣ける。

参考資料とソフト

imdb.com/Title?0246134

オフィシャル・サイト
http://www.luckybreak.jp/

Soundtrack
発売元:ユニバーサル ミュージック(UICY-1114)

(2001年 イギリス 108分)


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