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『人生は、時々晴れ』 All or Nothing (2002)

監督:マイク・リー

Story

ロンドン南部の公営住宅に住む三家族。
タクシー運転手のフィルの家は、スーパー勤めの妻ペニー、老人ホームで清掃の仕事をする無口な娘レイチェル、引きこもり気味で無職の息子ローリーの4人家族。結婚生活も長く子供たちも大きくなったが、相変わらずフィルの稼ぎは悪く、家族の間にもどこかしっくり行かない空気が流れていた。
ロニーはフィルと同じくタクシー運転手だが、妻のキャロルはアル中で家事もできない状態、ひとり娘の生意気なサマンサは無職で最近クレイグという青年に付きまとわれている。
シングルマザーのモーリーンはペニーと同じスーパーに勤めており、娘のドナは恋人のジェイソンとけんかが絶えない。
ある日、フィルの家庭に降りかかった災難をきっかけに、家族は再び自分たちのあり方を見直すことになり・・・

『秘密と嘘』のマイク・リー監督作品。

 

Check!

ロンドン南部の公営住宅

舞台となる公営住宅はロンドン南部のグリニッジ周辺にあるとのことだが、壁やエレベーター(英語で"Lift")は落書きだらけですさんだ雰囲気。公営住宅ということで、住民もフィルやロニーたちのような低所得者や、モーリーンのような母子家庭が多い。

また、フィルやロニーたちが働くミニキャブ会社もロンドン南部を中心に営業しているらしい。 無線で指示された「ベロットストリート SE10」というのもSEという郵便番号からして南部だし、ロニーが迎えに行った客の行き先は「エレファント&カッスル(Elephant & Castle)」だった。エレファント&カッスル周辺は移民や労働者階級が多く、観光客はあまり足を伸ばさない地域。テムズ南岸も一部は再開発され綺麗になってきてはいるが、北岸の洒落たショッピングエリアに比べると、治安が良くないとされる場所が少なくない。

スーパーSafeway

ペニーとモーリーンが働いていた大型スーパーは「Safeway」。この映像からもわかるように、イギリスのスーパーでは客は商品をカゴから出してレジ前のベルトコンベアーに並べ、レジ係は椅子に座って会計する。ペニーは仕事帰りに買い物して、大きなSafeの袋を提げて帰ってくる。

自宅でランドリーの副業もしているモーリーンは、仕上がった衣類にSafewayの袋をかけてお客さんのところに持っていく。お客さんといっても、ほとんど同じ公営住宅の住民のようだが。

www.safeway.co.uk

ミニキャブ

フィルやロニーたちはタクシーの運転手といっても、有名な黒塗りオースティンの正式な「ロンドンタクシー(ブラック・キャブ)」の運転手ではなく、いわゆる「ミニキャブ」と呼ばれる普通のセダン型の車に無線を積んだ車の運転手。 「タクシー」の運転手になるには非常に厳しい国家試験に合格しなければならず、その分信頼性も料金も高い。

フィルは経営者の黒人男性ネヴィルから無線の機械を借りて営業しているらしい。レンタル代が払えず、子供の小遣いから借りてまで支払っている。

食生活

家に帰ってきたペニーは子供に「あと20分でteaにするわ」と告げる。この場合の「tea」は「お茶」ではなく「食事(この場合は夕食)」のこと。 イギリスでは「tea」に食事の意味が含まれる場合が多い。この時もチキンパイはどうかと尋ねている。20分で用意できる食事が手の込んだものであるはずはなく、皿に乗っているのはベイクドビーンズなど簡単なメニュー。

フィルが客にもらったというロングライフのハンバーガー用のパンは、賞味期限が4ヶ月先の10月24日というもの(ということは、この作品の設定は6月末ということか)。4ヶ月も持つパンなんて、いったいどんな保存料を使っているのやら。

ロニーの妻キャロルはある注で家事をしないため、食事にも困っている。ロニーは娘に「Takeawayでもするか?」と提案。Takeawayは米語の"テイクアウト"のことで、ファーストフードやホカホカ弁当のような出来合いのものを買ってくること。
*字幕では「出前でもするか」となっていたが、Takewayは自分から買いに行くものなので、持ってきてもらう"出前"とは違う。

ドナが働く軽食屋に来たサマンサとレイチェル。いつも挑発的なファッションをしているサマンサは体型を維持するためにダイエットコークを飲んでいるが、はちきれんばかりにふくよかなレイチェルは気にせず普通のコーラ。

パブのある風景

フィルは、不注意で自損事故をして落ち込んでいるロニー(追突され逃げられたと周囲には説明しているが)と一緒に、行きつけのパブでビールを飲む。 稼ぎが悪く生活に余裕がなくても、心のオアシスたるパブに行く金は惜しまない。

カラオケ

ペニー、キャロル、モーリーンの三人は、カラオケのある店に行く。イギリスでもカラオケは人気があり、日本のようなボックス式ではなく人前で歌うのが好きらしい。

トンネル嫌い

フィルのタクシーの客、フランス人のセシルはいかにも裕福なマダムという雰囲気。 車がトンネルを通る時、トンネルは苦手だからあらかじめ知らせてくれなきゃと文句を言う。ユーロスターなら何とか我慢するらしいが。 おそらく日頃から地下鉄に乗ったり地下道を歩いたりする必要のない恵まれた生活をしているのだということが伺える。 セシルの「奥様を愛している?」という無邪気な問いが、フィルは改めて自分たちの夫婦生活を見直すきっかけになり・・・

その他

レイチェルが勤める老人ホームは、看板を見ると「Brook House Resource Centre」とある。個室になっているらしく、入所者によっては自分の部屋を美しい壁紙で装飾しているようだ。ここの清掃係であるレイチェルは大きな体でゆっくりゆっくりモップをかける。

突然倒れたローリーが搬送されたのは、「South London General Hospital」という病院。大規模な病院だが、施設もそれほど近代的ではない。

ロケ地

グリニッジ(ロンドン)

舞台となった公営住宅はグリニッジにあるもの

ミレニアム・ドーム

レイチェルが歩いていたのはミレニアムドームの対岸

Ambassadors Bloomsbury, London WC1

セシルを送っていったホテル。ブルームズベリー地区、ユーストン駅のすぐ近くにあるホテル。
Upper Woburn Place, London, WC1H CH

ケント

フィルがひとり訪れた海岸。A2道路でロンドンに戻る。

キャスト

Timothy Spall .... Phil (タクシー運転手)
Lesley Manville .... Penny(Philの妻・スーパー勤め)
Alison Garland .... Rachel(Philの娘・老人ホームの清掃員)
James Corden .... Rory(Philの息子・無職)

Ruth Sheen .... Maureen(シングルマザー、ペニーの同僚)
Helen Coker .... Donna(Maureenの娘)

Paul Jesson .... Ron (タクシー運転手・フィルの同僚)
Marion Bailey .... Carol(Ronの妻・アル中)
Sally Hawkins .... Samantha(Ronの娘・無職)

Daniel Mays .... Jason (ドナの恋人)
Ben Crompton .... Craig (サマンサに夢中の青年)
Kathryn Hunter .... Cecile (フランス人の客)
Robert Wilfort .... Dr Simon Griffith (ローリーを診察した医師)
Gary McDonald .... Neville(ミニキャブの経営者)
Diveen Henry .... Dinah (ミニキャブの配車係)

参考資料とソフト

imdb.com/title/tt0286261/

オフィシャル・サイト
www.mgm.com/ua/allornothing/
www.tokidokihare.com/

国内盤DVD
輸入盤DVD(リージョン1)

書籍_All or Nothing_ by Mike Leigh

(2002年 イギリス 128分)


『しのび逢い』Monsieur Ripois (1954)

監督・脚本: ルネ・クレマン Rene Clement
共同脚本:Hugh Mills
原作:Louis Hemon 小説"M. Ripois and His Nemesis"
撮影:Oswald Morris
音楽:Roman Vlad

Story

舞台は第二次大戦後、1950年代のロンドン。 フランス人アンドレ・リポワは妻のCatherineとは離婚寸前であり、目下の関心は妻の親友であるPatriciaに向いている。 アンドレは妻のいぬ間にPatriciaを自宅に呼び、彼女を口説くためにこれまでの女性遍歴を語り始める。

会社の上司で同棲していたアンのこと、バスで知り合った身持ちの堅いノラに結婚を迫られ逃げ出したこと、無一文の彼に同情してしばし養ってくれた同じフランス人の娼婦マルセル、そしてハムステッドの住宅街でフランス語教師をしていた頃知り合った現在の妻のこと。しかし結局パトリシアは陥落せず、やけになったアンドレは狂言自殺を図るが誤って本当に転落してしまい・・・

惚れっぽいけど真実の愛を知らないプレイボーイの皮肉で喜劇的な末路を描いたちょっとブラックなラブ・コメディ。永遠の美男俳優ジェラール・フィリップ主演。

Check!

裕福な妻Catherine

離婚寸前の妻はかなり裕福な家の出らしい。 フランス語堪能でマラルメの詩をすらすらと暗誦して見せるという教養、そして彼女の実家で父親と過ごすティータイムに使われている銀器の見事さ。 この父娘がアフタヌーン・ティーをしている間に、アンドレは川でパンティング(棒で川底を突きながら進むボート乗り)しながら彼女の親友を口説いている。 この後Catherineはひとりエディンバラに旅立つ。

彼女の親友Patriciaも裕福な家のお嬢さんらしい。Catherineがもうすぐ帰ってくると嘘をついてPatriciaを自宅に招いたとき、彼女はブラウンズ・ホテルに泊まっていた。 ブラウンズ・ホテルは、ロンドンでも屈指の高級ホテル。 http://www.brownshotel.com/

ロンドンの交通機関

地下鉄・・・会社の上司アンを口説くにあたって、アンドレは地下鉄の車内でも視線を交わす。旧型車両でまさに「tube」と呼ぶにふさわしいタイプ。

バス・・・ダブルデッカーの中で目をつけた女性ノラ。 旧型なので車掌が乗客の間を回って切符を売りに来る(ワンマンバスではない)。 バス車体後部が開いているので、アンドレのように止まっているときに飛び乗ることも出来る。

タクシー・・・去っていくパトリシアが乗ろうとしていたのは、おなじみの黒いロンドン・タクシー。

Manchester Pudding

アンドレがアンに辟易となる原因は、彼女が作るマンチェスター・プディングが不味かったこと。マンチェスター・プディングは、ミセス・ビートンの料理書にも載っているような伝統的なイギリスのお菓子。パン粉、牛乳、卵、レモンピール、バター、砂糖などを混ぜたフィリングを、パイ生地に入れて焼いたもの。

パブのある風景

フランス人の年増娼婦マルセルのヒモになったアンドレ。 マルセルと一緒にパブに行ったとき、彼女の友人たちに紹介される。「これでみんなの飲み物を買ってきて」とお札を渡され、面子丸つぶれなのだが、イギリスでみながパブで飲んでいるときには、ひとりが代表して皆のものを買いに行って、以後順々に全員がおごりおごられる形になるのが普通。割り勘は「Dutch Account」と呼ばれ、セコイと嫌われるのだ。

50年代の風俗

まだ街灯がガス灯だった時代。 子供を連れた男が、街の灯をひとつひとつともしていく。アンドレはラジオを大切にしていて、アンの部屋を追い出されるときも、家賃未払いでフラットを立ち退かされる時も、いつもしっかりラジオを持っていく。 まだTVがそれほど一般的でない時代だ。 しかしそのラジオも悲惨な結末を迎えることに・・・

ロケ地

Elstree, Hertfordshire

Tower Bridge, London
St. Martin-in-the-Fields, Church
Trafalger square, London
Green Park Station(ノラと待ち合わせした公園)
Speakers Corner, Hyde Park, London
テムズ河岸(ビッグベンが見える)

Awards

カンヌ国際映画祭
1954年審査員特別賞受賞(ルネ・クレマン)

キャスト

Gerard Philipe .... Andre Ripois
Natasha Parry .... Patricia (Andreの妻の親友)
Valerie Hobson .... Catherine Ripois (Andreの妻)

Margaret Johnston .... Anne(Andreの上司・同棲相手)
Joan Greenwood .... Norah(Andreの恋人・結婚を迫る)
Germaine Montero .... Marcelle (フランス人娼婦)
Diana Decker .... Diana(Andreと同じフラットに住む女性)
Percy Marmont .... Catherineの父

参考資料とソフト

http://us.imdb.com/Title?0047243

(1954年 フランス 99分)


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