UK雑記帖

Chips, Please? 〜チップスはポテトチップスにあらず〜


 

人気番組「世界ウルルン滞在記」で、野村佑香嬢がウェールズで牧羊犬の訓練をするという企画があった。 そこに入れ歯のよぼよぼのおじいさんが出てきて、「自分は年だからもう固いものは食べられないけど、"Chips"なら大丈夫だよ。」と語る場面があった。 これを字幕では「ポテトチップス」と訳していた。 横で同じ番組を見ていた夫も「はは〜ん、この通訳“英語”を知らんな?」とすぐ気がついた。

そうなのだ。“米語”はともかくとして“英語”では"Chips"はジャガイモを細長く切って揚げたもの(=日本でいうフライドポテト)を指すのだ。 そう、あの「フィッシュ&チップス」の「チップス」!(だいたい、歯の悪い入れ歯のおじいさんがポテトチップスをばりばり食べられるだろうか。)

チップスを抜きにして英国食文化を語ることは難しい。とにかくどんな料理にも必ずついてくる。 しかも"Say when…(どのくらいよそってよいのか言ってください)" などと言いつつ、もういいです!というまでいくらでも皿に盛ろうとする。 しかも厨房に戻る前ににっこり振り向いて「お代わりが欲しかったら言ってくださいね」とのありがたい御言葉つき。 庶民的なパブだけではない。 あの正統的英国料理の最高峰の一つ「シンプソンズ・イン・ザ・ストランド」でも同じことだった。

チップスの食べ方は…おもむろにばしゃばしゃとモルト・ヴィネガー(酢)と塩をふってむしゃむしゃとやる。 ポテトに酢?と思われるかもしれないが、一度やると病み付きになること請け合いだ。

ちなみにフランスでも「チップス」=「ジャガイモを細く切って揚げたもの」で通じた。 (フランス語では"ポム・フリッツ") ヨーロッパは距離的にアメリカよりイギリスのほうがずっと近いのだから。 まあ、フランスで「フレンチ(=フランスの)・フライください」っていうのもおかしなものだが。

ではポテトチップスのことは何と言ったらいいのか? 答えは「クリスプス」。 一番よく見かけるメーカーは「ウォーカーズ」で、売場面積から判断すると「ソルト&ヴィネガー」味が一番人気のようだ。 やっぱりジャガイモには塩と酢なのだ。

 


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