UK雑記帖

A fairy Tale Wedding 〜おとぎばなしの演出〜


 

「幼稚園の先生が皇太子妃に!」…チャールズとダイアナのおとぎばなしのような“世紀の結婚”は世界中を熱狂させた。

だが、この「一介の幼稚園の先生」という表現は、おとぎばなしを創出するためのちょっとした演出である。 もともとダイアナは由緒あるスペンサー伯爵家のお姫様だったのだから。 ダイアナ(Lady Diana Frances Spencer)の亡き父エドワードが8代目当主、彼女の弟チャールズが、現スペンサー伯爵(9代目)だ。

Althorpにあるスペンサー伯爵家の館は、鎌倉時代からの歴史的建築物で、216万平方メートルの敷地、広さにして東京ドーム約22個分の豪邸だ。「幼稚園の先生」っといっても、月曜日から金曜日まで一日中といったものではなく、週2回だけの短時間のものだった。 いわば子供好きな良家のお嬢様の社会勉強、もしくは貴族の家に生まれた者ならしばしば行うような社会奉仕といった意味合いが強かったのではないかと思う。

彼女は皇太子妃になるのになんら疑問を差し挟まれる余地の無い、由緒ある家柄のレディだったといえよう。 単なる「幼稚園の先生」だったらこうすんなりと事は運ばなかったのではないか。

第2次大戦でイギリスを勝利に導いた故チャーチル首相も、ウィンストン・スペンサー・チャーチルという名前からもわかるように、元をたどればダイアナとも縁続きである。 チャーチルのほうも平民出身と思われているが、彼のおじジョージは8代目モールバラ公爵で、チャーチル自身も爵位こそ無いもののれっきとした貴族の家柄だ。 (いとこにあたる9代目は当時全米一の富豪一族の娘と結婚している。) この3代目のモールバラ公爵と初代スペンサー伯爵の父親が兄弟だ。 貴族社会は系図をたどっていくと、あちこちでつながりがあって面白い。

むしろ興味を惹かれたのは、英国王室の公式サイトの記述にあった「ここ300年で初めて王位継承者と結婚した英国女性」という事実である。(原文:She was the first Englishwoman to marry an heir to the throne for 300 years.) ヨーロッパの王室はこれまで外交政策上、他国の王室と姻戚関係を結びながら関係を調整することが必須だった。 特に王位継承者は。

現在の王室「ウィンザー家」は第一次大戦の時に改名されたが、元々「ハノーヴァー朝」といった。 初代ハノーヴァー朝の王・ジョージ一世はドイツ人でありながらスチュワート朝の血を引いていたためにイギリスの王位に就いたが、その後も次々と他国の王室と結婚を繰り返した。

自国の女性と結婚できるようになったというのは、戦争も無く、国際関係が落ち着いてきたという事実のあらわれではないだろうか。 


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