タイトル＊
監督：Richard Thorpe
原作：Sir ウォルター・スコット「アイヴァンホー」
脚本：Marguerite Roberts/Noel Langley
脚色：Aeneas MacKenzie
撮影：Ｆ・Ａ・ヤング
音楽：ミクロス・ローザ
原作はSirウォルター･スコットの歴史小説「アイヴァンホー」。
舞台は12世紀末、サクソン人とノルマン人との抗争で混乱しているイングランド。 第三次十字軍を率いて聖地エルサレムに遠征していたリチャード獅子心王は、帰国途中に捕らえられオーストリアに監禁されている。十字軍遠征に参加していたサクソンの騎士アイヴァンホーことウィルフレッドは、リチャードを救うために15万マルクという莫大な身代金を調達する必要に迫られていた。
アイヴァンホーは領主である父セドリックが後見人となっているサクソンの姫ロウィーナと恋に落ちたため勘当されている身。旅装束に身をやつして実家に帰り、そこで知り合ったユダヤの族長アイザックの協力を仰いで身代金を集めることにする。 そしてアイザックの娘、美しいレベッカも次第にアイヴァンホーに想いを寄せるように。
アイヴァンホーは正体不明の黒騎士としてアシュビーの野でノルマンの騎士相手に馬上槍試合を挑むが、瀕死の重傷を負いレベッカの医術で救われる。 アイザック父娘がセドリックやロウィーナたちといた時、ノルマンの騎士たちに襲われさらわれてしまう。 傷を負ったアイヴァンホーは、勇敢なロビン･フッドとシャーウッドの森の仲間の助力を得て、大切な人たちを救い出しに行くのだが･･･。
ロバート･テイラー、エリザベス・テイラー アイバンホー
1066年の「ノルマン・コンクェスト」でウィリアム征服王(ノルマンディー公)が即位して以来、イギリスでは征服者ノルマン人が先住民のサクソン人(ユトランド半島から移住してきたゲルマン系民族)やデーン人、ケルト人らを押さえて優位に立っていた。
ノルマン人とは、もともとスカンディナビア半島からやってきたヴァイキング民族。10世紀にフランスのノルマンディー地方に領地を与えられ、ノルマンディー公となっていた。 リチャード一世も父王ヘンリー二世もフランスに広大な領地を持っており、フランスとイギリスを行き来する生活。 というより、リチャードは十字軍で遠征していたため、イギリスにいた期間のほうが短いくらい。ノルマン人に征服されたことによって、イギリス宮廷での公用語はフランス語になっていた。
アイヴァンホーがサクソン人でありながらノルマン人であるリチャードに仕えている。
リチャード一世（1157-1199、在位1189-99）
父はプランタジネット朝の始祖ヘンリー二世（在位1154-89）、母はエレナー・オブ・アキテーヌ（エレノアール、アリエノールとも）。勇猛果敢で寛大、中世騎士の理想の姿と称えられ、「獅子心王」の異名をとる。第３次十字軍を率いて遠征中に、弟のジョンが反乱を起こしているという知らせを受け、帰国途中にオーストリア公レオポルトに捕らえられ、1193年神聖ローマ皇帝ハインリヒ6世に引き渡されてそのままオーストリアに一年間監禁される（その間ロビンフッドの事件が起こった）。フランスでフィリップ二世の軍と交戦して戦死。
映画『冬のライオン』The Lion in Winter (1968)にも若き日のリチャードが登場する。
ジョン王（在位1199-1216）。
兄リチャード一世が十字軍遠征中に、王位をうかがうが失敗する。即位したのは兄王の死後。1204年に大陸にあったイギリスの領土の大部分を失ってしまったため、「失地王」とも呼ばれる。 教皇の怒りを買い、1209年にイギリスごと破門されてしまう(1213年和解）。 1215年にマグナカルタ(大憲章)に署名させられる。映画『冬のライオン』にも若き日のジョンが登場する。
セドリックの館を訪ねてきたユダヤの族長アイザックを見て、ノルマン人の騎士たちはあからさまな不快感を隠さない。
ユダヤ人たちは迫害を受けながらも、各地で金融業を営んでいた。これは、キリスト教徒は利子をとって金を貸すことを教会に禁じられていたため、非キリスト教徒であるユダヤ人がその職業につくことになった。シェイクスピアの「ベニスの商人」に見られるように、ユダヤ人＝金貸しのイメージもこの辺りから来ている。アイヴァンホーはそんな彼らを頼みに、リチャード獅子心王の身代金を調達するのに協力を仰ぐ。 ユダヤ人たちはオーストラリアの商人たち相手にも、多額の貸付をしていたらしい。 アイザックたちの住まいは、シャーウッドの森があるノッティンガムからもさほど遠くないシェフィールド。
レベッカの母はスペインで殺されたらしい。当時のスペインはイスラムの文化が色濃かった時代。イベリア半島は、711年から1492年のグラナダ開城までの約800年間イスラムの影響下にあり、キリスト教徒に迫害されていたユダヤ人たちが多く移り住み、活躍していた。
鎧兜を着け馬に乗った騎士が一対一で向かい合い、すれ違いざまの一瞬の攻防で勝負をつける試合。 このジュースティングを描いた映画に『ロック・ユー！』A Knight's Tale (2001) などがある。
この時代の城は要塞のような趣の実用的なもの。 入り口は跳ね橋にあっているので、敵の襲来があると門を閉ざして防御することが出来る。また、城内には大きな石が常備されており、もしもの時には岩を城壁から落として、侵入者を防ぐ。
映画の中で「ロクスリー」と呼ばれている、シャーウッドの森の義賊ロビン・フッド。 金持ちや貴族から金品を奪い、貧しい民衆に分け与えたという伝説があり、彼をモデルにした映画も数多く作られている。
医術が未発達で、迷信がはびこっていた中世ヨーロッパでは、しばしば魔女と疑われた女性が迫害を受けることがあった。 魔女狩りが盛んになったのは、1300年以降。特に教皇が魔女の存在を断定した1484年頃から勢いが加速する。
Doune Castle, Stirling, Scotland
米アカデミー賞3部門ノミネート(作品賞、カラー撮影賞、劇・喜劇映画音楽賞)
Robert Taylor .... Ivanhoe (サクソンの騎士)
Elizabeth Taylor .... Rebecca(ユダヤ族長アイザックの娘)
Felix Aylmer .... Isaac(ユダヤ族長・レベッカの父)Joan Fontaine .... Lady Rowena(サクソンの王女)
Finlay Currie .... Cedric(Ivanhoeの父・Rowenaの後見人)
Emlyn Williams .... Wamba (Ivanhoeの従者・元道化)
Harold Warrender .... Locksley (またの名をロビン・フッド)ノルマン人騎士
George Sanders .... Sir Brian de Bois-Guilbert(レベッカに思いを寄せる)
Robert Douglas .... Sir Hugh De Bracy
Francis De Wolff .... Front De Boeuf
Roderick Lovell .... Ralph De Vipont
Patrick Holt .... Philip De MalvoisinNorman Wooland .... リチャード獅子心王(リチャード一世)
Guy Rolfe .... ジョン王(リチャード一世の弟)
(1953年 アメリカ 106分)
Copyright (c)2003
Cheeky All Rights Reserved
当サイトに掲載されている情報・記事・画像など、全ての内容の無断転載を禁止します。
引用される際は、必ず出典として当サイト名とURLを明示してください。