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『ウィッカーマン』 The Wicker Man (1973)

監督:Robin Hardy
脚本:Anthony Shaffer・・・『探偵スルース』『フレンジー』戯曲家ピーター・シェーファーの双子の弟。

Story

1973年四月末。スコットランドの警官ハウイーは、サマーアイル島で行方不明になった少女ローワン・モリソンを捜索して欲しいという匿名の手紙を受け取る。はるばるこの孤島に乗り込んで調査を続けるうちに、ハウイーはこの島全体が奇妙な原始宗教を崇拝していること、島民たちが失踪した少女の存在を隠そうとしていることを知る。

敬虔なクリスチャンで潔癖なモラリストである彼は、島民たちがキリスト教を尊重せずに、あけっぴろげで性的な儀式に熱中していることにショックを受ける。そして行方不明になった少女はまだ生きていて、間近に迫った五月祭で豊穣を祈願するための生け贄にされるのではないか?決死の覚悟で駆けつけたハウイーに突き付けられた事実とは・・・!

今なおカルト的人気を誇る、フォークロア的要素を盛り込んだ異色のホラー・ミュージカル。"Wicker Man"とは、柳などの小枝を編んで作った人形という意味なのだが・・・?

スクラップ・ブック

 

Check!

パブ"Green Man Inn"

地方のパブには、ここのように宿屋としても営業しているところが少なくない。特に"Inn"という名前がついたものは。

このパブに置いてあった食材はなぜか缶詰ばかり。じゃがいもやそらまめまで缶詰。イギリスの普通のスーパーでもジャガイモの水煮缶詰はよく売っているが、それはあまり手のかかる料理をしたくない家庭や単身者向けで、パブのように大量に調理する場所でジャガイモまで缶詰を使うのは、いかにも怪しい(その理由は後で明かされる)。

パブの屋号に使われている「グリーン・マン」という言葉も、どこかキリスト教以前の匂いを感じさせる。

郵便局

ローワンの母とおぼしきモリソン夫人が経営する郵便局兼雑貨屋(イギリスの田舎で良くあるタイプ)。店には怪しげなお菓子や、変な置物も売っている。

サマーアイル卿の城

この島は1868年に現領主の祖父が島ごと買い取ったもの。
領主のサマーアイル卿も執事もキルトを着ている

五月祭とメイポール

日本では「労働者の祭典」というイメージの強い5月1日のMay Dayだが、ヨーロッパ、特にイギリスでは春の到来を祝う祭日。May Poleと呼ばれる紐のついた飾り柱を立てて、その紐を持ってくるくると回って踊ったり、五月の女王(May Queen)を選んだりする。起源は、古代ローマの花の女神フローラを祝ったものであるとか、古代ケルトの太陽神を祭ったものだとか諸説あるが、キリスト教伝来以前の古い風習に基づいていることは確か。シェイクスピアの「夏の夜の夢」も五月祭前夜の祝祭気分が、森に暮らす異教的妖精たちとあいまって独特の雰囲気を醸し出している。

サマーアイル島の小学校では、メイポールは男性のシンボルだと教えていたが、メイポールの起源を男根崇拝とみる説は少なくない。たとえばケン・ラッセル監督作品『リストマニア』では、ロック・ミュージシャンのような格好をした作曲家フランツ・リスト(The Whoのロジャー・ダルトリー)が、そのものズバリの形状をしたメイ・ポールにまたがる場面がある。

五月祭のパレードでは、島民たちはみな、馬、ヤギ、魚、ウサギなどを象った仮面を頭からすっぽりかぶって、祝祭的気分に満ち溢れて賑やかに行進する。スコットランドの民族衣装であるキルトを身につけた剣士たち、バグパイプ奏者を含む楽隊もパレードを構成する。"King for a Day(一日だけの王様)"を決めたりするのも、古代ケルト的。

土俗の宗教観、ドルイドの習俗

「ウィッカーマン」は、カエサル(『ガリア戦記』)らが驚きをもって記録しているように、古代ケルトの宗教ドルイドのもの。柳などを編んで作った巨大な人形の中に、生贄となる人間や動物を入れて焼くというもの。

参考:『図説ドルイド』
ミランダ・J・グリーン(著)、井村君江/大出健(訳)東京書籍 ; ISBN: 4487794129 ; (2000/08/01)

樹木にへその緒を付けたり(=樹木信仰)、かえるを飲み込んだり、ストーンヘンジのような古代遺跡のもとで女性たちが裸になって焚火を飛び越えたり・・・この島の人々には、反キリスト教的な、土俗の信仰が根付いている。

ハウイーは非常に厳格なクリスチャンで、もう中年なのに将来の結婚のために純潔を守っているような人物。だから余計に、ここの島民たちのような大らかに性愛を楽しんでいる人々が我慢できない。

『シャロウ・グレイブ』

ダニー・ボイル初監督作品『シャロウ・グレイブ』Shallow Grave (1995) で、ユアン・マクレガーらがTVで観ていたのが、本作『ウィッカーマン』。この作品がカルト的人気を得ているひとつの象徴だろうか。

キャストについて

 

Awards

ロケ地:スコットランド

情報提供:Scotland the Movie

キャスト

Edward Woodward .... Neil Howie警部補・敬虔なクリスチャン
Christopher Lee .... Lord Summerisle(島の領主)

Lindsay Kemp .... Alder MacGregor(パブ 兼 宿屋の主人)
Britt Ekland .... Willow MacGregor(宿屋の娘)

Diane Cilento .... Miss Rose(小学校の先生)
Walter Carr .... 校長

Ingrid Pitt .... 図書室司書
Donald Eccles .... T.H. Lennox (薬屋・写真屋)
Russell Waters .... 港湾所長
Aubrey Morris .... 庭師/墓掘り

Irene Sunters .... May Morrison (Rowanの母?郵便局勤め)
Geraldine Cowper .... Rowan Morrison(行方不明の少女)
Jennifer Martin .... Myrtle Morrison(Rowanの妹?9歳)

Ian Campbell .... Oak
Leslie Blackater .... 美容師
Roy Boyd .... Broome
John Hallam .... P.C. McTaggert (Howie巡査の相棒)

参考資料とリンク

Video(1)_(2)

ファンサイト
http://www.nuada98.fsnet.co.uk/nuada%203/
http://www.sandrew.demon.co.uk/wickerman/

Scotland the Movie

参考:『図説ドルイド』
ミランダ・J・グリーン(著)、井村君江/大出健(訳)東京書籍 ; ISBN: 4487794129 ; (2000/08/01)

(1973年 イギリス 88分/完全版102分)


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