今宵の宿は…木賃宿 in London

旅の終わりはロンドンに戻る。 Cirencesterでレンタカーは返したのでバスとインターシティ(急行列車)を乗り継ぎパディントン駅へ。勝手知ったるラッセル・スクエア付近で宿探しを始めるが、観光シーズンのロンドンは安くて清潔そうなB&Bは結構満室になっている。あるB&Bで部屋を見せてもらったが(案内してくれた宿の主人は訛りから判断してイタリア系だった)、階段も狭くて傾斜がきつく、部屋はベッドを置くのがやっとというくらい狭いうえに壁は真っ白、ベッドカバーも古ぼけていて、まるで囚人部屋のようだった。

少しでもましな宿を求めていくつかのB&Bを回った。 この地区には小さなB&Bがたくさん集まっているので探すには効率が良い。気が付くと、行く先々でさっきの"イタリア系おやじ"の宿を見に来ていたアフリカ系の家族を見かけた。彼らもあの悲惨な部屋に泊まる気になれずにあちこち訪ね歩いているのかもしれない。大人は男性ばかりなのに、ベビーカーに乗せた赤ちゃんを連れている。人数が多いので宿を捜すのも一苦労だろう。

私たちもやっと、我慢できる程度の宿を見つけて落ち着いた。 一泊朝食付き二人で43ポンドもする。田舎なら30ポンド台も出せばローラ・アシュレイだらけの素敵な部屋があるのに…と悲しくなるが、ロンドンならこれでもましな方だろう。バス・トイレは共同だったが、翌朝の朝食は食べ放題で種類も充実していた。キングス・クロス駅にも程近く、夜には近くを救急車が走りまわる音が聞こえて、喧騒の中で「ああ、ロンドンに来たんだなあ」という実感を新たにした。あの赤ちゃんを連れた家族は無事宿を確保できただろうか。

toilet
バス・トイレ共同
bath
お風呂は早い時間帯に入らないと床がビチョビチョ・・・

夜は近くにある"いつもの"中華料理レストランで、家鴨焼そばなどをテイクアウェイ。 ここは特に家鴨モノが安くて美味しい。スーパーで果物もたくさん買っておいたのでデザートも充実。

イギリスの果物は日本のものほど整った形をしていないし、虫食いもあったりするが、なにより安くて気軽に買える。 (形が綺麗で味も極上という意味で、日本の果物はおそらく世界のトップレベルにあるのではないかと思われるが、やはりお値段が。)

もう一晩はインド料理のテイク・アウェイをした。 この店のタンドリーチキンは絶品だ。日本でもここまで薫り高くジューシィな、スパイスの効いたチキンにお目にかかったことがない。「イギリスにうまいものなし」と良く言われるのだが、旧植民地系のエスニック料理は別だ。ブルームズベリー地区はロンドン大学の学生も多いことから、美味しいパブや料理屋がそろっている。 take-away

 

地下鉄と郵便局のストライキ

朝地下鉄に乗ろうと駅に向かうと、駅は大混乱になっていた。 職員がストライキをしていたのだ。バスは動いているのだが、地下鉄に乗れなかった人たちでバス停には長蛇の列。どのダブルデッカーにも人があふれるように乗っている。

私たちは歩くのが結構好きなので、散歩も兼ねて中心地まで歩いていくことにした。 私はチャリング・クロスからストランドを通ってセント・ポ−ル・カセドラルまで歩いたこともある。 日本では酔狂にも東京タワーから渋谷駅まで散歩したこともある。 通りの看板や道行く人を見ているのは楽しいものだ。

この日はなぜか郵便局も一緒にストライキをしていたようだ。 ポストの投函口がすべてふさがれている。どちらも一日で終わったのでほっとした。帰国の日にストライキをされては空港までの足が確保できない。

陶器屋めぐりと、Teddy Bear "Cheeky"との出会い

ロンドン内の観光名所はもう行き倒しているので、最近はもっぱら買い物に走ることになる。 ただし、シャネルやらグッチやらのボンド・ストリートあたりの高級ブランドショップに用はなく、もっぱら「毎日の生活を楽しくする」「イギリスでしか買えない」という観点で選んだものばかりである。今回の3大テーマは「ファブリック」「陶器」「テディ・ベア」だった。

7月初旬のロンドンはバーゲン・シーズン真っ盛り。 リバティでウイリアム・モリスデザインの布を買ったり、ジェーン・チャーチルでは日本で5,000円/m以上はするという布を£5/mで手に入れたり。

陶器はイギリスの植物がボタニカルアート風にいっぱいに描かれたポートメイリオンというメーカーのものを集めているので、気に入ったものを一点一点選ぶ。 こういったイギリス独特のデザインが好きだ。

テディベアは今回是非とも、と心に決めていた熊があった。 メリーソート社のCheekyという名の付いたものだ。 この、普通と違って耳が大きくて下のほうに付いている、ちょっと生意気な顔をした熊がずっとずっと欲しかったのだ。当時は日本では扱ってる店もあまりなく、かなり高価だったので、次にイギリスに行ったときは絶対買おうと思っていた。

ロンドン一の玩具店「ハムレーズ」はチャールズ皇太子も子供に玩具を買うのに利用するほど品揃えが良い。店員にチーキーの置いてある棚を案内してもらうと、そこには茶色や白や青などのさまざまな色をしたたくさんのチーキーがこちらを向いてニカッと笑っている。迷った挙げ句、白いふさふさの毛並みをした一匹を選ぶ。

マーケットも大好きで、大きいものから小さいものまでのぞく。 教会の敷地内でやっているような小さいところにも意外と掘り出し物が眠っている。店の人との掛け合いもまた楽しみの一つ。カムデン・ロック・マーケットはかなり大規模で、大きな敷地内にカオスのように雑多な店が並んでいるが、何度も足を運ぶうちにどこに何が売っているかまでだいたい頭に入ってしまう。6年前に来たときと同じ人がやはり同じところでTシャツを売っている。

愛しのスーパーマーケット〜旅の終わりに〜

スーパーを見つけるとついふらふらっと足を踏み入れてしまうのだが、それは夫も同じである。 イギリスでは食料品が非課税なこともあってか、日本に比べてもかなり安い。 一般的な商品にはV.A.T(付加価値税)と呼ばれる17.5%の間接税がかかっている。 旅行者は請求により税金分の割り戻しを受けられるが、例えば「ひとつの店で£75以上買った場合のみ手続きできる」など、制限も多い。

牛乳や100%果汁のジュース、ミネラル・ウォーター、いろいろな果物、スモークト・サーモン、スコーン、クロテッド・クリーム、チョコレート、ヨーグルト、ナチュラルチーズ…もちろんナマ物は、みんな旅行中に食べるのに買うのだ。 帰国してから食べるために、美味しそうな缶詰やお菓子、紅茶類もいくつかカゴに入れる。例えばハロッズやフォートナム・メイソンの紅茶はお金さえ出せば三越でも輸入食品店でも手に入るが、普通の家庭で朝食や11時のお茶に飲んでいるような、P.G.TipsやTyphooなどの丸や四角い形をしたひも無しティーバッグはなかなか手に入らないだろう。

これだけ飲み食いしても、旅行中の私たちの行動半径、運動量のせいか、体重は旅行前よりかえって減ってしまうほどだ。 きれいな空気を吸い、陽の光をいっぱいに浴びてのんびりし、またよく歩き…イギリスには心の洗濯に行っているような気がする。

個人旅行というのはトラブルや不具合がつきものだが、実はそういった体験のほうが後になって楽しく思い出されることが多い。 ツアコン役もお客さん(=夫)がひとりしかいないので気楽なものだ。今度はどんな体験が出来るだろう… 現在、次の旅行を3週間後に控えてどこに行こうかと胸を膨らませているところである。

19 June, 1997
(画像・データ追加:October, 1998)


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