オックスフォードにも程近いケルムスコット村には、ヴィクトリア時代にアーツ・アンド・クラフツ運動を起こした芸術家、ウイリアム・モリスが、画家のD.G.ロセッティと共同で借りたケルムスコット・マナーと呼ばれる家がある。 (モリスと、その妻ジェーン・モリス、ロセッティの奇妙な三角関係は有名な話である)彼は1871年から亡くなる1896年までここに住んでいた。
4月から9月までの週に一度しかない公開日に集まったお年を召した方々が中庭で開館時間を待っている。イギリスのお年寄りは生き生きとしていて素敵な老後を送っているようだ。商店も郵便局もない小さな…村というよりは集落といったほうが良い場所だが、この静寂をモリスは愛したのだろう。
数々のテキスタイル、モリスのテキスタイルのデザイン画、モリス商会の家具、ロセッティがモリスの妻ジェーンをモデルに描いた絵画、モリスの娘・メイが父親の原画をもとに刺繍したタペストリーがこぢんまりとした、だが居心地のよさそうなマナーにあふれている。 見学者たちは熱心に一つ一つの展示物に見入っている。
イギリス人にとって、ウイリアム・モリスによるデザインは特別の存在のようだ。 リバティ・プリントの中にもモリスのデザインした図案が数多くある。 たとえば「いちご泥棒(Strawberry Thief)」という題の、流れるように図案化された植物の中に小鳥がいちごをくわえているデザインを、ご覧になった方も少なくないだろう。
日本のデパートにもよく「V&Aコレクション」と名の付いたブラウスを見かけるし、Nikkoからはモリス・デザインの食器が出ている。(かなり高価だが)
建物の裏手に行くと、ナショナル・トラストがW.モリスの商品を扱っている売店をひっそり出していた。 私はコレクションしているティー・タオル(主に麻100%でできた平織りの長方形の布。食器を拭いたり、お茶を入れるときなど、いろいろなことに使える)や、ダヌーン社のマグカップ(普通のマグカップより長細い。)、木製のテーブルマットなど、何点か購入した。日本に帰ってからのティータイムが楽しみだ。
Kelmscott Manor
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今回の旅行には小さくたためる釣竿を持ってきたほど、夫はイギリスの魚とお手合わせをしたがっていた。 きれいな川を見つけると心が躍るそうだ。そんなわけで魚影を求めてColn川沿いに車を走らせた。
Quenington、Coln St. Aldwynという村で、フィッシング・ポイントを探す。どちらもコッツウォルズを紹介するガイドブックにもまず載っていないようなところで、村の中心から少し外れるとこわいくらいに静かだった。 心が洗われるような風景というのはこういう場所をいうのだろうか。初夏の緑が目に染み、聞こえるのは木々を渡る風と小鳥の鳴き声のみ。川を覗き込むと底まではっきり見えるほど澄んだ流れの中に、ブラウン・トラウト(ますの一種)やグレーリングが気持ちよさそうに泳いでいる。 残念ながら、「これは!」と思ったポイントは私有地であることが多く、「Private Fishing」の札がかかっていて諦めざるを得なかった。目的は果たせなかったものの、静かな時間を思う存分堪能した。
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