リムリックといえば昨今は「アイルランド第三の都市」というよりは、あのピュリッツァー賞も受賞した世界的ベストセラー、フランク・マッコート著『アンジェラの灰(Angela's Ashes)』の舞台として記憶されることも多いかと思う。 のちに映画化もされたが、シャノン川の湿気と始終降り続く陰鬱な長雨が見る人の心に強く焼きついたことだろう。
私がLimerickを訪れた日も、ちょうど『アンジェラの灰』の世界そのままに、雨が降り続く日だった。 霧に煙ったシャノン川には白鳥が。 Adareのツーリスト・インフォメーションで、「Angela's Ashes Trail」の地図付きリーフレットをもらっておいたので、フランク・マッコート氏縁の地を訪ねるのは、そう難しいことではなかった。 まずPeople's Parkに車を止め、付近を散策。 おお、この中央の塔には見覚えがある。
『アンジェラの灰(Angela's Ashes)』フランク・マッコート著 リムリックでの悲惨な子供時代を独特のユーモアをもって描き出した、原作者フランク・マコートの自伝的作品。 ピュリッツアー賞を受賞した大ベストセラー。
『アンジェラの灰』 新潮社クレストブックス
映画:『アンジェラの灰』 Angela's Ashes (1999)
People's Park |
South's Pub |
People's Park横にささやかな看板が出ていて、アンジェラの灰のエキシビションがあること、ここからウォーキング・ツアーが出発することを示している。 ここから目と鼻の先にある、フランクのお母さんが物乞いに行ったSt. Vincent de Paulとフランクの通ったリーミ国民学校(Leame School)が小さな通りを挟んで隣り合わせに建っていたことを知る。 フランクの父がよく飲みに行っていた、そしてフランクが最初にアルコールを口にした「South's Pub」。このパブの前にある郵便ポストに「 Franked Mail Only」と書かれていたのが楽しい。 このパブからオコンネル・ストリートを挟んで向かいにSt. Joseph's Churchが。
十数軒の長屋がたったひとつのトイレを共有していたという悲惨なRoden Laneがあった場所も、現在はごく普通の住宅地。
リーミ国民学校
St. Vincent de Paul
バラック・ヒル
River Shannon
St. Mary's CathedralはLimerickで最も古い建物だとか。 古めかしい石造りの建物が、そぼ降る雨に溶け込んで綺麗。
St. Mary's Cathedral映画版『アンジェラの灰』でもシャノン川沿いの風景にいつも映っていたジョン王の城。 しかしこれは外観を眺めるだけにとどめておいた方がいいだろう。 なぜなら・・・とんだぼったくりだったからだ・・・。 ちょうど小学校の遠足だったのか、子供たちの集団が先生に引率されて城に入っていくのが見えた。 私たちも大人ひとり6.65euroという決して安くはない入場料を払う。 しかしこの内容の薄さはどうだ。 映画とは名ばかりの紙芝居のような案内フィルム、マネキンや模型など、大人の鑑賞に耐えるレベルとはとても言い難い。 せめて城の遺跡そのものはと期待したが、見るべきものとしては城の上からのシャノン川の眺めくらいだ。 思えばヨーロッパの通貨統一とはある意味で残酷なもの。 国や物価が違っても全く同じ土俵で勝負しなければいけないからだ。 一週間かかっても見切れないようなルーブル美術館がたったの5euro(日曜割引)、このジョン王の城が6.65euro・・・。
King John's Castle
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