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ハリー・パーマー・シリーズ


このページの構成

"ハリー・パーマー"シリーズとは

原作者レイ・デイトンについて

リンク&情報ソース

作品紹介

『国際諜報局』 The Ipcress File (1965)
『パーマーの危機脱出』Funeral in Berlin (1966)
『10億ドルの頭脳』 Billion Dollar Brain (1967)
『国際諜報員ハリー・パーマー/Wスパイ』 Bullet to Beijing (1995)
『国際諜報員ハリー・パーマー/三重取引』 Midnight in St. Petersburg (1995)


"ハリー・パーマー"シリーズとは

原作では主人公の名前は明確にされていないが、映画シリーズでは「ハリー・パーマー」と名づけられている。この眼鏡をかけたシークレット・エージェントは、007シリーズと同様『オースティン・パワーズ』のモデルのひとりとか。

パーマーは陸軍の軍曹だが、西ドイツ勤務中に物資の横流しをして服役していたところ、英国情報部のロス大佐にスカウトされ、釈放と引き換えにスパイ活動を強いられているため勤務態度はけっこういいかげんだったりする。

原作では主人公が吸っているタバコはゴロワース(フランス製)、背広は吊るしの大量生産品。

英国情報部とはいっても、オックスブリッジ出身者が中心となっているエリート集団とは違い、ハリー・パーマーの職場はロンドン中心部の裏通り"Charlotte Street"(地図)にある、"職業紹介所"の看板を掲げた秘密の事務所。

 


原作者レン・デイトンについて

Len Deighton/Leonard Cyril Deighton (1929- )
1929年ロンドン生まれ。33歳の時に処女作The Ipcress File (1962)を発表しベストセラーに。

主な著作:『ベルリンの葬送』Funeral in Berlin (1964), 『』Only When I Larf (1968)
三部作『ベルリン・マッチ』Berlin Game (1984), 『メキシコ・セット』Mexico Set (1985), 『ロンドン・マッチ』London Match (1986)
『昨日のスパイ』(Yesterday's Spy)『トゥインクル・トゥインクル・リトル・スパイ』(Twinkle, Twinkle, Little Spy)
『黄金の都(まち)』City of Gold (1992) 『希望』Hope (1995).

一人称で語られる主人公たち

ハリー・パーマーが原作では「わたし」という一人称で語られ、名前を明らかにされていないのと同様、デイトンの他の著作「海底の麻薬」「優雅な死に場所」「スパイ・ストーリー」「昨日のスパイ」「ティンクル・ティンクル・リトル・スパイ」なども主人公は一人称。

「スパイ・ストーリー」にはStok大佐が再登場する。

"バーナード・サムソン"シリーズ

ハリー・パーマーの人物造形に興味をもたれた方にお勧めなのが、デイトンの"バーナード・サムソン"シリーズ(邦訳:光文社文庫)。 これもまた一人称で語られるシリーズで、主人公バーナード・サムソンはSIS(イギリス秘密情報局)局員。ベルリンで生まれ育った英国人、高卒、妻に裏切られた失意のスパイで、アングロファイルの米国人上司あり。 美人妻のフィオナは資産家でオックスフォード卒、ソルボンヌ留学経験あり、料理の腕はコルドン・ブルー仕込み。

バーナード・サムソンの外見は、長身、角縁眼鏡をかけ、波打つ髪のベビーフェイス、中年太りの兆候と、レン・デイトン自身のプロフィールに近い。

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Related Links

Harry Palmer Movie Site・・・ハリー・パーマーシリーズのファンサイト
Citizen Caine・・・主演のマイケル・ケインのファンサイト
Senses Working Overtime・・・ぱとさんによる『パーマーの危機脱出』のレビューが。私がハリー・パーマーのことを知ったのも、ぱとさんが書いていらしたレビューがきっかけです。
The Unofficial Len Deighton Site・・・原作者レン・デイトンについて
Secret Intelligence・・・情報部について
Spies of the silver screen・・・スパイ映画リンク集
MI5・・・ハリー・パーマーの勤務先、英国情報部のサイト

 

Special Thanks: このページを作るにあたって

Sirマイケル・ケインに寄せる愛情は日本一のぱとさん、語学・絵画とさまざまな分野に造詣の深いたけうちさんのご協力を仰ぎ、いただいた貴重な情報をまとめました。

Harry Palmer Movie SiteKeesさんのご厚意によりロケ地情報などをいただきました。 私がお送りした『国際諜報員ハリーパーマー/Wスパイ』『三重取引』の日本版ビデオカバー画像を掲載していただいています。

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『国際諜報局』 The Ipcress File (1965)

監督:Sidney J. Furie
制作:Harry Saltzman
脚本:Bill Canaway / Len Deighton / James Doran
原作:Len Deighton

音楽:ジョン・バリー
撮影:オットー・ヘラー
美術:ケン・アダム

Story

高名な物理学者ラドクリフ博士が何者かの手によって誘拐された。イギリスで歯この事件以前にも何人もの科学者が姿を消していたこともあって、国防省のロス大佐は、その調査にハリー・パーマーをあたらせることにした。

ドルビー少佐の元に派遣されたパーマーは、事件の背後にいると思われる人物グラントビー(暗号名アオカケス)に接触する。交渉により大金と引き換えに博士の身柄は戻ってきたが、洗脳によって神経症となった博士は、科学者として使い物にならなくなっていた。
パーマーが廃工場を捜索中に見つけた「Ipcress」と書かれたテープが事件の鍵を握っているようなのだが・・・

レン・デイトン原作の、クールな瞳をした諜報部員ハリー・パーマー・シリーズ第一弾。

 

Check!

料理好き

パーマーは独身男性だが、部屋には四つ口のコンロがある本格的なキッチンがあり、自炊生活を楽しんでいる様子。ロス大佐とのやり取りでも、昇給したら新しいグリルが欲しいと言っている。

自宅のフラットを探りに来たコートニーの前で、手つきも鮮やかに野菜を刻みオムレツを作りはじめる場面も。イギリス人に限らず欧米ではまな板のない家庭も珍しくないそうなので、ちゃんとしたまな板で料理をするパーマーは相当の料理好きと見た。片手で器用に卵を割る場面では、マイケル・ケインの代わりに原作者のレン・デイトンの手を使っていたとか。デイトンは自ら料理本も書くほどの本格派。ハリーのフラットのキッチンの壁にかかっているのはすべてレン・デイトン自身の台所ツール。 

スーパーで買い物中にばったりロス大佐に会った時のエピソードからもわかるように、パーマーは素材の選択(シャンピニオンの缶詰)にも一家言持っているようである。

料理好きでもゲイじゃない

主人公が料理好きという設定に関して、「女のために料理を作るなんて、この主人公はゲイに違いないと思われてしまう」と反対意見もあった。このシリーズが制作された60年代のイギリスでは、まだ同性愛=犯罪だったので、この問題には神経を使わざるを得なかった。(1967年に同性愛を禁じる法律が廃止になる)
その懸念を払拭するために、プロデューサーのハリー・ザルツマンと監督シドニー・J・フューリーはケインの役からの"de-gay"作業にとりかかったとのこと。それには"ベッドに入る時以外は外さない眼鏡"という小道具が一役買って、ハリーがゲイでないことを証明している。また、しばしば彼のベッドの隙間から女性用下着が出て来る。

実在のダブル・スパイ事件がモデルに

原作の『イプクレス・ファイル』は、1950年代前半に発覚したキム・フィルビーらを中心としたケンブリッジのダブル・スパイ事件に材をとったものだとか。

(参考:マイケル・ケイン主演のサスペンス『第四の核』には、年老いたキム・フィルビーが登場。『アナザー・カントリー』は同時期に暗躍したダブル・スパイ、ガイ・バージェスのパブリック・スクール時代をモデルに描いたもの)

アイルランド軍楽隊

ドルビー少佐がグラントビーと、ラドクリフ博士の身柄を買い受ける交渉をしていたのは、アイルランド軍楽隊の野外コンサートでのことだった。演目は行進曲「The Thin Red Line」。同行したパーマーはモーツアルト好きだが、軍楽隊による演奏はお気に召さなかったと見えて、交渉がまとまると帰ってしまう。

カメラワークの妙技

『国際諜報局』と2作目の『パーマーの危機脱出』のカメラマン、オットー・ヘラーは、自身が国外に逃れたドイツ系ユダヤ人で、彼のカメラワークは一切機械に頼らずすべて長年の勘による職人芸。

 

ロケ地

St. Pancras station
・・・ラドクリフ博士が誘拐されたのがここ。博士が乗るはずだったノッティンガム行きの列車は、この駅が始発。

Science Museum Library

・・・グラントビーに接触した図書館。
The Science Museumの付属施設で、自然史博物館(Natural History Museum)や、Imperial Collegeのすぐ近く。グラントビーが三回も駐車違反をやったThurloe Gardensもこの近く。

Science Museum Library
Imperial College Road, South Kensington, London SW7 5NH
WebSite

ロイヤル・アルバート・ホール

グラントビーの部下を追って科学博物館に行く途中にちらりと映っている。
住所:Kensington Gore SW1

Ministry of Defence(国防省)

ロス大佐の部屋の窓からトラファルガー・スクエアやナショナル・ギャラリーが見える。
住所:Old Admiralty Building, Whitehall, London SW1A 2HB
WebSite: Ministry of Defence

Scotland yard

ご存知スコットランドヤード。昔は国防省にも程近いWhite Hall近くにあったが、現在のスコットランドヤードは移転しており、この場所にはない。
WebSite: Metropolitan Police Service

St. James's Park

The Mallから公園内の橋に向かって歩いていく場面

28 and 30 Grosvenor Gardens

ダルビーのオフィスとして

Marble Arch carpark

ハイドパーク地下の駐車場。ラドクリフ博士を身代金と引き換えに釈放した駐車場

info by the courtesy of Kees@Harry Palmer Movie Site

Awards

1966年英アカデミー賞(BAFTA)3部門受賞
Best British Art Direction (Colour)・・・Ken Adam
Best British Cinematography (Colour)・・・Otto Heller
Best British Film・・・Sidney J. Furie
2部門ノミネート(主演男優賞、脚本賞)

1999年度英国映画協会によるベスト100作品:59位にランクイン

キャスト

Michael Caine .... ハリー・パーマー
Guy Doleman .... ロス大佐(パーマーの上司・国防省)

Nigel Green .... Dalby (Palmerの転属先の上司・内務省)
Sue Lloyd .... ジーン・コートニー(Dalbyの部下・女性)
Gordon Jackson .... Jock Carswell (Dalbyの部下)
Freda Bamford .... Alice (Dalbyの部下)
Anthony Blackshaw .... Edwards (Dalbyの部下)
Barry Raymond .... Gray (Dalbyの部下)
David Glover .... Chilcott-Oakes (Dalbyの部下)
Charles Rea .... Taylor (殺されたPalmerの前任者)

Frank Gatliff .... エリック・グラントビー/暗号名"Bluejay(アオカケス)"
Oliver MacGreevy .... 暗号名"Housemartin(イワツバメ)" (グラントビーの部下)

Aubrey Richards .... Radcliffe博士(誘拐された物理学者)

Thomas Baptiste .... Barney
Stanley Meadows .... Inspector Keightley(通称パット)
Peter Ashmore .... Sir Robert
Ric Hutton .... Records Officer
Douglas Blackwell .... Murray

 

参考資料とソフト

>>Related Links参照

imdb.com/Title?0059319

2001年12月に発売されたあるスパイ映画特集のムック本に、当サイトの文章に酷似した記述(というより、その記事全体)がありますが、当方ではこのページを2000年12月からWeb上にアップロードしプロトタイプ公開して準備を進め、2001年5月に正式公開しておりましたことをここに宣言します。 なお、googleで「国際諜報局」とgoogle検索するとこのページは第1位にヒットするので、インターネットを利用してこの作品を調べようとする方なら誰にでも容易にこちらにたどりつくことができます。

輸入ビデオ(字幕なし)Video(1)_Video(2)

サウンドトラック(ジョン・バリー):国内盤/輸入盤

『イプクレス・ファイル』
レン・デイトン/井上一夫・訳 (ハヤカワ文庫NV ISBN:4150404895)

(1965年イギリス108分)

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『パーマーの危機脱出』 Funeral in Berlin (1966)

監督:ガイ・ハミルトン
脚本:エヴァン・ジョーンズ
原作:レン・デイトン

音楽:コンラッド・エルファース
撮影:オットー・ヘラー
美術:ケン・アダム

Story

英国諜報部員パーマーは、東側の情報部将校シュトック大佐を亡命させるために、冷戦下のベルリンに派遣された。鉄条網が張り巡らされ物々しい雰囲気のベルリン。現地で昔馴染みの情報部員ジョニー・バルカンと連絡を取り、着々と準備を進める。

そんな時ホテルのロビーで出会ったミステリアスな美女サマンサ。シオニスト運動に関わっている彼女は、元ナチ党員のブルームが残した隠し財産を探していたのだが・・・

レン・デイトン原作の、クールな英国諜報部員ハリー・パーマー・シリーズ第二弾。

 

Check!

ロス大佐の休日

ロンドン郊外のロス大佐の家は、広い庭がある一戸建てで、休日にはガーデニングを楽しんでいる模様。 クリケットの試合に着るようなVネックの品の良いセーターをさらっと着ている。英国情報部の将校はオックスフォードやケンブリッジ卒のエリートがほとんど。

コイン式ガスメーター

偽造パスポート製作を受け取りにハラムのフラットを訪ねたパーマー。Have you シリング?と、着くなりハラムはガス用の小銭を要求する。イギリスの暖房器具や照明はコイン式になっているものも少なくない。
参考:『トゥルー・ブルー』ではオックスフォード大学の寮はコイン式になっていたので、アメリカ人留学生が文句を言っていた。
『遠い声、静かな暮し』 Distant Voices, Still Lives (1988) でもガスメーター用のコインをもらう場面が。

ハラム

フラットの外に「猫を探しています。"孔子"と呼べば返事をします」という看板を掲げているハラム。彼の中国趣味の服装や部屋の調度品は原作でもあのように描写されている。
ハラムは卵とバターを厳選して料理を作るようなこだわりを持っていて、一部パーマーと通じるところもあるが、パーマーの安物の背広やフランス製のタバコには好感を持てないという設定。また映画では明確にされていないが、原作でハラムは自分のセクシュアリティを(内務省は見て見ぬふりをしていたらしい)パーマーに態度でほのめかされ、ますます彼に敵意を抱くことになる。

「ロック・ハンター」という偽名

ハラムに作ってもらったパスポートに表記されている「エドマンド・ドーフ」という偽名に不満の意を漏らし、どんな名前ならいいのかと逆に聞かれ、「Rock Hunter」という名前を出す。この会話は原作にないものだが、おそらく"Will Success Spoil Rock Hunter?" という欧米では有名なコメディの主人公がモデルと思われる。(天才グラマー女優ジェーン・マンスフィールド出演、ゲストにグルーチョ・マルクス。>IMDb)

ベルリンの昔馴染み

パーマーとバルカンは顔見知り。陸軍時代のパーマーはベルリンに駐屯していたので、その頃知り合ったのだろう。彼はベルリンで物資の横流しをして服役していたところをロス大佐によって情報部にスカウトされたらしい。

「ポール・ルイ・ブルーム」という偽名

ストック大佐亡命の手引きをするコーディネーター、クロイツマンに要求された偽身分証明書 (死亡している人物のものを復元)の名義「ポール・ルイ・ブルーム」。 パーマーがこれをハラムから手渡された時に「New Broom?」と言うが、これは「蘇った死者ブルーム」と「新任者」をかけているしゃれ。

何故「New Broom (直訳すると"新しいホウキ"」が「新任者」をさすかというと、英語のことわざに"a new broom sweeps clean(新しいホウキは綺麗に掃ける→新任者は改革に熱心なものだ"という表現があるため。

 

サムとエドナ

サマンサに「友達は私のことサムって呼ぶわ」と自己紹介されたハリー。 ベルリンでは"エドマンド"という偽名を使っていたため、「僕はエドマンド。エドナって呼ばれてる」と答え、笑いを誘う。

「エドナ」とはこの映画が公開された当時一世を風靡したエドナ・オブライエン(フリーセックスを説いた女性活動家)のこと。こんな洒落た台詞のやり取りにも当時の世相を反映しているところが面白い。

Edna O'Brien (1932- )
アイルランド(Tuamgraney, Co Clare)生まれの作家。著作の多くは社会における女性の地位に関わるもので、女性活動家としても知られる。
主な著作:The Country Girls (1960), Girls in Their Married Bliss (1963), August Is a Wicked Month (1965), Time and Tide (1992), House of Splendid Isolation (1994), Down by the River (1996), The Fanatic Heart (1985)

 

ロケ地

Berlin, Germany(ベルリンの壁、ヒルトンホテルなど)
London(トラファルガー広場など)

キャスト

Michael Caine .... Harry Palmer
Paul Hubschmid .... Johnny Vulkan (駐ベルリン情報部員)
Oskar Homolka .... Stok大佐 (KGB要人)
Eva Renzi .... Samantha Steel (ベルリンで会った美女)
Guy Doleman .... Ross大佐 (パーマーの上司)
Hugh Burden .... Hallam(便利屋・ロンドン在住)

 

参考資料とソフト

>>Related Links参照

imdb.com/Title?0060437

DVD

原作邦訳:
『ベルリンの葬送』レン・デイトン・著/稲葉 明雄・訳/ハヤカワ文庫NV 184 (1978/10/01)

ビデオ(英語):Amazon.Japan/Amazon.com

(1966年 米=英 102分)

 

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『10億ドルの頭脳』 Billion Dollar Brain (1967)

監督:ケン・ラッセル
脚本:John McGrath
原作:Len Deighton

音楽:リチャード・ロドニー・ベネット
撮影:ビリー・ウィリアムス
美術:シド・ケイン
衣装:シャーリー・ラッセル

Story

英国情報部を退き私立探偵として生計を立てているパーマーのもとに、かつての上司ロス大佐が訪ねてきた。もう一度MI5に戻るよう説得に来たのだ。しかしパーマーは謎の依頼主からの仕事で、ひとりフィンランドへ向かい中身の分からない荷物を届けることに。

フィンランドで彼を待ち受けていたのはミステリアスな美女アーニャと、旧友ニュービギン。荷物はイギリスの研究所から盗まれたウィルスで、背後にはタカ派のアメリカ人ミッドウィンター将軍が動いているらしい。テキサスの石油王ミッドウィンターは、10億ドルものコンピューターシステムを武器に、ソビエトの影響下にあるラトビアの反共革命を支援しようと企んでいたのだ。ソビエトとの戦争にもなりかねないこの危機をパーマーは無事回避することが出来るのか・・・?

レン・デイトン原作の、クールな英国諜報部員ハリー・パーマー・シリーズ第三弾。

 

Check!

MI5

ロス大佐の台詞によると、彼の仕事は英国情報部でもMI5の方らしい。ジェームズ・ボンドが所属するのはMI6で対外活動担当、MI5はイギリス国内に潜入した外国スパイや国内の破壊活動組織の監視と摘発が仕事。テロ対策など。

WebSite

WHITELEYS

ハリーパーマーが預かったものの中身を靴売り場のX線装置で確かめるために寄ったデパートがこのWHITELEYS。Wikipediaによるとロンドン初のデパート(London's first department store)で、かつては屋上に劇場やゴルフコースまであったとのこと。バーナードショウの戯曲『ピグマリオン』(映画「マイフェアレディ」の原作にもその名が登場する。ちなみに映画の中では空港から「1ポンドでWHITELEYSまで」とタクシーに乗り込んでいるが、当時(1967年)はそんな料金でここまでこれたのかというのも面白い。
   
入口(ここに靴屋があったがマイケル・ケインが訪れたのとは別の店だろう)

合い言葉はシェイクスピア

謎の依頼主からパーマーに伝えられた合い言葉「今やわれらが不満の冬」は、シェイクスピアの『リチャード三世』冒頭の有名な台詞。

Now is the winter of our discontent
Made glorious summer by this sun of York;
And all the clouds that lour'd upon our house
In the deep bosom of the ocean buried.

Stok大佐

シリーズ第二作に出てきたKGBのStok大佐が再び登場。 情報部員だけあってくえないおやじだが、パーマーを見ると"イギリス人!(English!)"と、声をかけてくる人懐こい性格。

Midwinter将軍

「Midwinter」とは冬至の頃、古くはクリスマスの頃を指して使われた言葉。比喩的に凄く冷たい人を指して「he is midwinter」などという言い回しもあるので、あの使命感に燃える将軍の人物描写を考えるとかなりの皮肉。

原書_Billion Dollar Brain_の巻頭に次のようなロシアのことわざが引用されている。:
Spring is wirgin, summer a mother, autumn a widow, winter a stepmother.

原書の最後の部分がこう締めくくられている:
Behind him I could see a tiny blue patch through the grey cloud;perhaps spring would be coming soon.

なお、ミッドウィンター将軍の軍隊は、MとWを組合わせたモノグラムを制服に付けているという芸の細かさ。

"Dr. Kaarna, I presume"

カーナ博士の死体に向かってパーマーがもらしたひとこと。これはスコットランドの探検家であり宣教師でもあったリビングストン博士を探してナイルの源流を溯っていったスタンリー(Henry Morton Stanley)が、3年間行方不明になっていた博士を見つけた時に言った有名な台詞「Dr. Livingstone, I presume? 」にひっかけたしゃれ。

"カーナ博士"との待ち合わせ場所(観覧車)は、『第三の男』のパロディと思われる。

自由十字軍ヘルシンキ本部の壁画

ロンドンのナショナル・ギャラリーにあるウッチェロ作「サン・ロマーノの戦い」 のひとつと思われる。(これは連作で、ルーブルやウフィッツィにもあるが、おそらくナショナル・ギャラリー所蔵のもの)

 

ロケ地

フィンランド(ヘルシンキなど)

トラファルガー広場

297 Pentonville Road, London (N1 9NP)>>map

ハリーの事務所があるところ(冒頭の場面)

Whiteleys Shopping Centre, Bayswater, London

Queensway London W2 4YN
www.whiteleys.com

フィンランドとラトビアの屋外のシーンはヘルシンキで撮りだめしておいて、室内場面はイギリスのパインウッドスタジオで撮影。

info by the courtesy of Keess@Harry Palmer Movie Site

キャスト

Michael Caine .... Harry Palmer
Karl Malden .... Leo Newbigen
Ed Begley .... Midwinter将軍(テキサスの石油王)
Oskar Homolka .... Stok大佐
Francoise Dorleac .... Anya
Guy Doleman .... Ross大佐(Palmerの上司)
Vladek Sheybal .... Dr. Eiwort
Milo Sperber .... Basil (自由十字軍/Newbigenの甥)

フランソワーズ・ドルレアックは25歳で夭折したカトリーヌ・ドヌーヴの姉。
ドナルド・サザーランドがミッドウィンターの科学者として出演

 

参考資料とソフト

>>Related Links参照

imdb.com/Title?0061405

『10億ドルの頭脳』
レン・デイトン/稲葉明雄・訳 (ハヤカワ文庫 ISBN:4150402094)

(1967年イギリス110分)

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『国際諜報員ハリー・パーマー/Wスパイ』Bullet to Beijing (1995)

監督:George Mihalka
脚本:Peter Welbeck(Harry Alan Towers)

Story

ハリー・パーマー三部作から30年ぶりに製作された続編2の1。冷戦の終わりにともない、かつて活躍した腕利きのスパイたちも大量にリストラされることに。 英国情報部の諜報員ハリー・パーマーも例外ではなく、半ば強制的に早期退職を勧められる。情報部を離れフリーランスとなったハリーは、謎の人物からの依頼を受けて急遽ロシアへ飛ぶ。 依頼主はロシアの裏社会を牛耳る富豪アレックスで、盗まれた細菌兵器「アロラックス」を取り戻して欲しいという仕事だった。 ロンドンの北朝鮮大使館前の学生デモで殺された科学者は、この事件に絡んでいたのだ。空港に着くやいなや命を狙われたハリーの前途は多難。 北京の北朝鮮大使館に持ち込まれると予想されるアロラックスを追って、協力者ニコライとともに北京行きのシベリア鉄道に乗り込むが・・・。

Check!

「The Sun」を読むハリー

上官に呼び出されたハリーが待ち時間に呼んでいたのは、イギリスで最も大衆的なタブロイド紙「The Sun」。 労働者階級が好む大衆紙で(毎日ヌード写真も掲載される)、英国情報部のようなオックスフォードやケンブリッジ卒のエリートが多い職場にはあまりにも不釣合いで、スパイとしてははみだし者のハリーを象徴するような構図。

www.thesun.co.uk

イートン校で教育を受けたニコライ

ニコライはイギリス人を父に、ロシア人を母に持つ青年。 教育はイギリスで受けたため綺麗な英語を話す。 パブリックスクールの最高峰イートン校を出たが、父の顔を知らない彼は上流階級の子弟が多い環境で疎外感を味わっていた。

www.etoncollege.com

Trivia

ニコライ役のジェイソン・コネリーは、ショーン・コネリーと女優ダイアン・シレントとの息子。 共演のミア・サラとはこの作品が縁で交際を始め、1996年に結婚する。

ミア・サラは、のちにマイケル・ケインがネモ船長を演じる『海底2万マイル(海底2万里 ディープ・シー20000)』で父娘役で共演。

 

ロケ地

ノッティングヒル地域(パブ"Duke of Wellington"の看板が見える)

ピカデリー・サーカスからSOHOまで(Lyric シネマの看板が)

シティ地区(St. Paul Cathedralが見える)

サヴォイ・ホテル(ハリーが待ち合わせをしていたホテル)

Ministry of Defence(国防省)

住所:Old Admiralty Building, Whitehall, London SW1A 2HB
WebSite: Ministry of Defence

St. Petersburg, Russia

キャスト

Michael Caine .... Harry Palmer(元英国情報部スパイ)
Jason Connery .... Nikolai (通称Nick、父は英国人)
Mia Sara .... Natasha Gradetsky

Michael Gambon .... Alex (ロシアの富豪・裏社会の実力者)
Anatoli Davydov .... Yuri Stephanovich (大物マフィア)
John Dunn-Hill .... 情報屋Louis
Lev Prygunov .... General Gradsky(元KGB・ナターシャの父)
Michael Sarrazin .... Craig Warner(元CIA)
Ingolf Gorges .... Andrei(レストランオーナー)
Anatoly Kulbitsky .... Professor Kulbitsky(殺された遺伝学者・KGBスパイ)

参考資料とソフト

http://us.imdb.com/Title?0113633

輸入版VHS(字幕無)
輸入版VHS(字幕無)

(1995年 イギリス 105分)

Top


『国際諜報員ハリー・パーマー/三重取引』Midnight in St. Petersburg (1995)

監督:Douglas Jackson
脚本:Peter Welbeck(Harry Alan Towers)

Story

ハリー・パーマー三部作から30年ぶりに製作された続編2の2。前作『国際諜報員ハリー・パーマー/Wスパイ』Bullet to Beijing (1995)でロシアにやってきたハリーは、他の元諜報部員たちとともにモスクワに探偵事務所を開いていた。 ある日ハリー仲間のニコライの恋人、バレリーナのタチアナが誘拐される。 別件でハリーらに依頼が寄せられていた盗まれた濃縮プルトニウム、そしてタチアナの父が館長を務めるエルミタージュ美術館の絵画も絡んで、事態は思わぬ方向へ・・・。

 

キャスト

Michael Caine .... Harry Palmer
Jason Connery .... Nikolai Petrov
Michael Gambon .... Alex (ロシアの富豪・裏社会の実力者)

Tanya Jackson .... Tatiana(バレニーナ・ニコライの恋人)
Michelle Rene Thomas(Michelle Burke) .... Brandy (フリージャーナリスト)
Michael Sarrazin .... Mike Craig(元CIA)
Lev Prygunov .... Colonel Gradsky(元KGB)
Yuro Petrov .... General Kornikov (地元の警察署長)
Anatoli Davydov .... Yuri Stephanovich (大物マフィア)
Serge Houde .... Dr. Vestry (美術商・元医師)
Yevgeni Zharikov .... Feodor
Vladimir Yeryomin .... Boris (ハリーの旧友・プルトニウム運び屋)
John Dunn-Hill .... 情報屋Louis
Vlasta Vrana .... Hans Schreiber (旧東ドイツスパイ)

参考資料とソフト

http://us.imdb.com/Title?0113634

輸入版VHS(字幕無)

(1995年 イギリス 100分)

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このページはぱとさんたけうちさんのご協力をいただいて作成しました。

ロケ地情報 by the coutesy of Keess@Harry Palmer Movie Site

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2001年12月に発売されたあるスパイ映画特集のムック本に、当サイトの文章に酷似した記述(というより、その記事全体)がありますが、当方ではこのページを2000年12月からWeb上にアップロードしプロトタイプ公開して準備を進め、2001年5月に正式公開しておりましたことをここに宣言します。 なお、googleで「国際諜報局」と検索するとこのページは第1位にヒットするので、インターネットを利用してこの作品を調べようとする方なら誰にでも容易にこちらにたどりつくことができます。 当該ムック本の編集者は逆ギレしたのか性的卑語を含む誹謗中傷メールを送りつけてきました。