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シェイクスピア 『リチャード三世』


『リチャード三世』 Richard III(1995)・・・イアン・マッケラン
『リチャード三世』 Richard III(1955)・・・ローレンス・オリヴィエ

『リチャードを探して』Looking for Richard(1996)・・・アル・パチーノ


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原作のテキスト全文>Complete Works of Shakespeare

Richard III and Yorkist History Server
The Richard III Society

『英国王室史話』 (上巻下巻) 森護・著/中央公論社/2000年


『リチャード三世』 Richard III(1995)

監督:Richard Loncraine

Story

シェイクスピアの傑作「リチャード3世」を、舞台を1930年代のイギリスに移し大胆に翻案。 長い内乱の末、王位に即いた兄・エドワード4世から、その位を奪い取ろうとする末弟リチャード。しかし兄である国王には世継ぎとなる王子がふたりもおり、次兄のクラレンスもいたため、彼が王位を手にするのはほとんど不可能かと思えたが・・・

肉親殺し、結婚、政治的陰謀など、さまざまな策略を巡らした男の成功と挫折をスペクタクルな映像(戦車、ジープ、機関銃など)で描いた異色作。ボズワースの戦いでの有名なキメ台詞「A horse!, A horse for my kingdom!」も設定を近代にしたにもかかわらず、ビシッと無理ない状況が用意されている。

 

歴史背景

この作品はランカスター家とヨーク家が王位をめぐって争った薔薇戦争(1455-1485)を背景に、ヨーク家の内紛、プランタジネット朝からチューダー朝へ王位が移った時期を描いた歴史ものである。

悲惨な死をとげたエドワード二世と違って(→『エドワード II』)息子のエドワード三世は賢王との評判が高かったが、彼の正当な後継者・孫のリチャード二世はいとこのヘンリー・ボリングルック(エドワード三世の四男ジョン・オブ・ゴーントの息子)に王位を奪われた。ランカスター家のヘンリー・ボリングルックは即位してヘンリー四世となった。

彼の息子のヘンリー五世は、アジンコート(アジャンクール)の戦いに勝利し、その講和条件として娶ったフランス王女キャサリン(カトリーヌ)との間にもうけた息子ヘンリー六世は、母方の祖父・フランスの狂王シャルル六世のの血をひいて精神に異状を来していた。(→『ヘンリー五世』

エドワード三世の孫であるヨーク公リチャードはこの状態につけこみ、自分の方がより王位に近いという大義名分をかざして反乱を起こした。(父がエドワード三世の五男の息子、母がエドワード三世の三男の曾孫)

1455年ロンドン近郊のセント・オーバンズの戦いでヨーク軍がランカスター軍を破り、ヨーク公リチャードの長男が王位につき、エドワード四世となる。(『リチャード三世』はこの場面から始まる)

ヨーク家の五男グロスター公リチャードはまず三男のクラレンス公ジョージを死に追いやり、健康のすぐれなかった長男エドワード四世が病没すると、エドワードの跡継ぎだったふたりの王子をロンドン塔に幽閉し、みずからリチャード三世として王位についた。(*1483年、13歳で即位したエドワード5世とその弟リチャード(11歳)は、ロンドン塔のBloodyTowerで幽閉され暗殺された。首謀者はリチャード3世だという説が有力だが、真実はわからない。)

このヨーク家の内紛の間にランカスター家のヘンリー・チューダーは1485年、ボズワースの戦いでリチャード三世を殺し、即位してヘンリー七世となる。(チューダー朝の始まり)

このヘンリー・チューダーはヘンリー五世の王妃キャサリンが、ウェールズ出身の衣装係のオーエン・チューダーと情を通じて生まれた子供である。
フランス遠征中にわずか9年の在位期間で病没したヘンリー五世の後を継いで生後9ヶ月の乳児がヘンリー六世として即位したので、母親であるキャサリンは皇太后として幼い王の補佐にあたっていたが、いつしか衣装係のオーエン・チューダーと身分違いの恋に落ち、ひそかに三男一女をもうけた。事が露見してキャサリンは修道院に監禁されまもなく亡くなった。この2人の長男エドモンド・チューダーは異父兄ヘンリー六世のはからいで、莫大な資産を持つボウフォート家の跡取り娘マーガレット・ボウフォートと結婚する。このエドモンドとマーガレットの間に生まれた子供がリッチモンド公ヘンリー・チューダー(後のヘンリー7世)である。(つまりキャサリン王女の孫)

ヘンリー・チューダーの母マーガレットは、エドワード三世の四男ジョン・オブ・ゴーントの血を引いているので彼もランカスター家の一員である。リチャード三世の死後、彼の長兄エドワード4世(ヨーク家)の娘エリザベスを妻に迎えたことで、ランカスター・ヨーク両家の血をひとつに結び付けることとなった。

リチャード三世(1452-1485)

在位1483-1485。NorthamptonshireのFotheringay城にて生まれる。ヨーク公リチャードの末子。1461年に兄のエドワード4世によってグロスター公爵の位を授けられる。1483年兄エドワード4世の死後、その幼い息子エドワード5世の摂政を務める。3ヶ月後エドワード4世妃エリザベス・ウッドヴィルを追い落とし、ヘイスティングス卿(1430-1483)の承認を得て、正式に王位に即く。幼いふたりの王子はロンドン塔で殺害されたという説があるが、詳細は不明。リチャードのライバル、ヘンリー・チューダー(のちのヘンリー7世)とボズワースの戦いで衝突し戦死。シェイクスピアの時代はチューダー朝だったため、前政権のリチャードが悪人に描かれているが、ふたりの王子をリチャードが殺害したという正式な記録もなく、また彼がhunchbackで醜かったという証拠も残っていない。

 

Christopher Marloweのソネット

冒頭に流れる歌"Come With Me and Be My Love"は、シェイクスピアの同時代人Christopher Marlowe(1564-1593)のソネットによる。 (マーロウについて詳しくは『恋に落ちたシェイクスピア』の項を参照)

The Passionate Shepherd to his love(抜粋)

Come live with me and be my love,
And we will all the pleasures prove
That hills and valleys, dale and field,
And all the craggy mountains yield.

 

ロケ地

St. Pancras Station, London

・・・宮殿として
ヴィクトリア朝のゴシック建築。屋根が印象的な建物で、R. M. OrdishとW. H. Barlowによってデザインされた。ノッティンガムやシェフィールドなどイングランド中部方面方面に向かう列車(Midland Railway)の始発駅。

St. Pancras Chambers, London

・・・エドワード四世の宮殿の外観。1935年までthe Midland Grand Hotelだったヴィクトリアン・ゴシック様式の建物。

St. Cuthbert's Church, London

・・・エドワード四世と妃エリザベスが"Come live with me and be my love"を踊った宮殿のボールルームとして

Holbein room (Strawberry Hill House内)

・・・リチャードの"不満の冬・・・"の独白場面

Lincoln's Inn Fields, London

・・・エリザベス王妃とその家族が朝食を食べる場面

Senate House, London University, London(Malet Street WC1E 7HU)

・・・リチャードの司令部。Senate Houseは第二次大戦中に実際に情報省が置かれた場所

The Royal Pavilion, Brighton
英国で最もエキゾチックな建物の一つといわれる変わった外観を持つ宮殿。ジョージ4世の海辺の宮殿として建てられ、1787年に新古典主義様式の大邸宅に。1815-1822にかけてジョン・ナッシュにより現在のようなインド風に改築される。
Brighton, East Sussex BN1 1EE TEL:01273 290900

County Hall, London(SE1)

・・・ロンドン塔内部として

Earls Court Exhibition Centre, London

Battersea Power Station, London

・・・ボズワースの戦いの場面。1920年代に廃虚となった発電所

ロイヤル・パヴィリオン、ブライトン

Shellmax Building, Shoreham Airport, West Sussex BN15

(ターミナルがアールデコ調)

Train museum, Carnforth, Lancashire

・・・リチャードの軍司令部として

The Debenham House(Peacock House), London W14

1906年にアーツ&クラフツの建築家Halsey Ricardoによって建てられた建築物
Addison Road, Holland Park(W14)

Royal Geographical Society, London SW7

1 Kensington Gore, London SW7 2AR

 

Awards

ベルリン映画祭銀熊賞

2002年オンライン映画批評家協会(OFCS)による「映画史上最も偉大な悪役Top 100」:
(The Greatest Screen Villain Of All Time Top 100, by The Online Film Critics Society)
イアン・マッケラン演じるリチャード三世役が第46位にランクイン

キャスト

Ian McKellen .... グロスター公リチャード、リチャード三世 (ヨーク家の三男)

Maggie Smith .... ヨーク公爵夫人 (リチャードの母)
Nigel Hawthorne .... クラレンス公George(リチャードの次兄)

John Wood .... エドワード四世(リチャードの長兄)
Kate Steavenson-Payne .... Princess Elizabeth (エドワード四世の娘、のちにヘンリー七世妃に)
Annette Bening .... Queen Elizabeth (エドワード四世妃)
Robert Downey Jr. .... リヴァーズ伯 (Queen Elizabethの弟)

Kristin Scott Thomas .... Lady Anne(故ヘンリー六世の王子エドワードの未亡人、のちにリチャードの妃に)
Dominic West .... リッチモンド公ヘンリー・チューダー(後のヘンリー七世)

Jim Broadbent .... バッキンガム公
Jim Carter .... ヘイスティングス卿 (首相)
Edward Hardwicke .... ダービー伯スタンリー卿 (宮内長官)
Ryan Gilmore .... George Stanley (スタンリー卿の幼い息子)

Bill Paterson .... 騎士Ratcliffe (Richardの部下)
Adrian Dunbar .... 騎士Tyrell (Richardの部下)
Tim McInnerny .... 騎士William Catesby

Marco Williamson .... 皇太子 (エドワード四世の長男、のちのエドワード五世)
Matthew Groom .... エドワード四世の次男、ヨーク公リチャード
Christopher Bowen .... ヘンリー六世の息子エドワードの亡霊
Edward Jewesbury .... ヘンリー六世の亡霊
Denis Lill .... ロンドン市長
Roger Hammond .... 大司教
Donald Sumpter .... Brackenbury (ロンドン塔長官)

(1995年 イギリス 103分)

Official Web site 


『リチャード三世』 Richard III(1955)

監督・脚本:ローレンス・オリヴィエ

ベルリン映画祭銀熊賞受賞

キャスト

Laurence Olivier .... リチャード三世
Cedric Hardwicke .... エドワード四世(リチャードの長兄)
John Gielgud .... クラレンス公George (リチャードの次兄)
Helen Haye .... ヨーク公爵夫人(リチャード三世らの母)
Mary Kerridge .... Elizabeth Woodville (エドワード四世妃)
Clive Morton .... リヴァーズ伯Antony Woodville (エドワード四世妃エリザベスの兄)
Claire Bloom .... Lady Anne Neville(リチャードの妃・亡き国王ヘンリー六世の妃)
Ralph Richardson .... バッキンガム公Henry Stafford

Alec Clunes .... ヘイスティングズ卿Thomas
Dan Cunningham .... Grey卿(エドワード四世妃エリザベスと先夫の次男)
Douglas Wilmer .... ドーセット侯Dorset(エドワード四世妃エリザベスと先夫の長男)
Laurence Naismith .... ダービー伯スタンリー卿(宮内長官)
Richard Bennett.... George Stanley (スタンリー卿の幼い息子)
Patrick Troughton .... Tyrrell (リチャードの部下、王子たちを暗殺)
John Phillips .... ノーフォーク公John Howard
Stanley Baker .... リッチモンド公Henry Tuder(後のヘンリー七世)
Michael Gough .... Dighton(暗殺者)
Michael Ripper .... Forrest(暗殺者)
Norman Wooland .... Sir William Catesby(騎士)
Andrew Cruickshank .... Brackenbury (ロンドン塔長官)
George Woodbridge .... ロンドン市長
Nicholas Hannen .... カンタベリー大司教
Esmond Knight .... Sir Richard Ratcliffe (騎士)
John Laurie .... ラヴェル卿
Paul Huson .... (エドワード四世の長男、のちのエドワード五世)
Andy Shine .... ヨーク公リチャード(エドワード四世の次男)

 

(1955年 イギリス 139分)


『リチャードを探して』Looking for Richard(1996)

制作・監督・脚本:アル・パチーノ。

アル・パチーノがシェイクスピアの「リチャード三世」を映画化するにあたって、ストーリィを研究しつつ役者たちの様子を追うというドキュメンタリー・タッチの作品。アメリカ人のシェイクスピアへのアプローチの苦心が興味深い。

アメリカ人はシェイクスピアに対してどうしても「気負って」「構えて」しまう傾向にあるという。街頭のアメリカ市民への意識調査も面白いし、役をつかむためにロンドンのGlobe Theatreや、ストラッドフォード・アポン・エイヴォンにあるシェイクスピアの生家にまで足を伸ばしたりしている。

名だたる英国シェイクスピア役者や演出家、学者へのインタビューが見もの。:Kenneth Branagh、演出家のPeter BrookDerek JacobiJohn GielgudVanessa RedgraveRosemary Harrisなど。

ロケ地

Shakespeare's Globe Theatre(ロンドン)

ストラットフォード・アポン・エイヴォン

キャスト

アル・パチーノ、アレック・ボールドウィン、ウィノナ・ライダー、エイダン・クインなど。

(1996年 アメリカ 112分)


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