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『恋に落ちたシェイクスピア』Shakespeare in Love(1998)

監督は『Mrs. Brown(邦題:Queen Victoria至上の恋)』のJohn Madden
脚本はアメリカ脚本家のMarc Normanと、『ローゼンクランツとギルデスターンは死んだ』で知られるイギリス演劇界の大御所Sir Tom Stoppard

16世紀末のロンドンを舞台に、悩める新進劇作家シェイクスピアの恋物語を描く。

シェイクスピアに詳しい方なら思わずニヤリとしてしまう遊びが散りばめられていながら、元ネタを全く知らない観客でも十二分に楽しめるエンターテインメントに仕上がっている。

 

Story

1593年のロンドンでは、テムズ河南岸のローズ座と対岸のカーテン座が互いに競いあうようにして人気を呼んでいた。新進気鋭の劇作家ウィル(シェイクスピア)は、財政難に陥ったローズ座を救う戯曲となるはずの新作喜劇にとりかかっていたが、スランプに陥り筆が全く進まない。そんな彼の目の前に現れた貴婦人ヴァイオラはミューズ(詩の女神)のように彼のインスピレーションを呼び覚まし、夜ごとの逢瀬でささやく恋人同士の甘いささやきは、そのまま新作戯曲「ロミオとジュリエット」の台詞として紡ぎ出されていく。しかしヴァイオラには女王陛下も認めた婚約者がいて・・・

 

Check!

劇場に対するさまざまな制限事項

女優の禁止:風紀を乱すからという理由で、女性が舞台に立つことは禁じられていた。かわりに変声期前の少年俳優が女装して舞台に立っていた。
また、当時の大衆劇場は疫病の蔓延を恐れて冬場は閉鎖されていた。他にもスリや売春の温床となっていたため(*映画でも観客席に娼婦と見られる女性の姿が。)、反社会的存在として役人ににらまれていた。

マーロウの『フォースタス博士』

オーディションの場面で応募者はみな、人気劇作家マーロウの『フォースタス博士』の台詞を口にする。シェイクスピアは自分の戯曲の台詞を使ってくれないのに嘆息するが・・・

ロミオとジュリエット(原題:Romeo and Juliet

1593-1594頃に書かれた。戯曲。五幕。ルネサンス期のイタリアのベローナで、双方の親が敵同士のの名門モンタギュー家のロミオとキャピュレット家のジュリエットとの悲恋物語。

ヴァイオラに渡した恋文

「君を夏の日に喩えようか・・・」とシェイクスピアのソネット18番のことばが使われている。原文は以下の通り:

Shall I compare thee to a summer's day?
Thou art more lovely and more temperate:
Rough winds do shake the darling buds of May,
And summer's lease hath all too short a date:
Sometime too hot the eye of heaven shines,
And often is his gold complexion dimm'd;
And every fair from fair sometime declines,
By chance or nature's changing course untrimm'd;
But thy eternal summer shall not fade
Nor lose possession of that fair thou owest;
Nor shall Death brag thou wander'st in his shade,
When in eternal lines to time thou growest:
So long as men can breathe or eyes can see,
So long lives this and this gives life to thee.

シェイクスピアのセクシュアリティ

彼の作品には青年に対してと思われる愛を歌っているソネットもある。この映画にもそれとなく暗示するような場面も?

その他さまざまなシェイクスピア関係の引用と遊び

・ウィルの部屋にあった骸骨:『ハムレット』に出てくる王の道化ヨリックの変わり果てた姿か?
・女王の御前で上演していたのは『Two Gentlemen of Verona(ベローナの二紳士)』
・ウィルが使っているマグカップは「Stratford-upon-Avon」の文字が入った、シェイクスピア土産として売られていそうな現代的なもの。

戯曲『十二夜』

十二夜(1月5日の夜)の観劇には喜劇を見たいと所望する女王のために、ウィルは次回作を書く。船の難破に遭ったヴァイオラという名の主人公が男装をして運命を切り開いていくという物語で、この映画のウィルとヴァイオラの恋の結末はこの作品へとつながっていったことを示す心憎い演出。
『十二夜』も1996年に映画化されている。『恋に落ちた・・・』でViolaの乳母を演じたImelda Stauntonが、『十二夜』では男装したViolaに想いを寄せるOliviaの侍女に。(→『十二夜』解説を参照)

「男の仕事をする女もいる」

ヴァイオラが男装していたことについて、女王がふとこんな述懐をもらす。女でありながら一国の政治を司り、諸外国との駆け引きに明け暮れてきた女王自身の半生を振り返っての言葉か。

I know something of a woman in a man's profession. Yes, I know something about that.

水溜まりにマント

女王の足元にあった水溜まりに、そばにた男たちは慌ててマントを差し出そうとしたが、彼女は「遅すぎる!(too late,too late!)」と一喝してジャブジャブ歩いて渡ってしまう。後にロンドン塔送りになった女王の愛人、ウォルター・ローリー卿が、女王の行幸の際にぬかるみに差し掛かった時に着ていたマントをさっと女王の足元に敷いたエピソードをふまえている。

ウェセックス卿

(架空の人物)新大陸ヴァージニアに農園(タバコのプランテーション)を経営していたが、経済的に苦しかったため、持参金目当てで裕福な商人の娘ヴァイオラと婚約することになる。貴族が裕福な商家と縁組みすることはそれほど珍しくなかったとか。

ロザライン

(架空の人物)ヴァイオラに会う前にシェイクスピアが想いを寄せていた女性だが、彼女は他にも複数の愛人がいて後にトラブルを招くことになる。『ロミオとジュリエット』で、ロミオがジュリエットに会う前に熱を上げていた女性の名もロザライン。

こぼれ話:ローズ座のセット

撮影終了後、女王を演じたDame ジュディ・デンチはこの作品に使用されたローズ座のセットを持ち帰り、劇場として使うことを計画中とか。

 

実在の登場人物

William Shakespeare(1564-1616)

1564年イングランド中部Stratford-upon-Avonに生まれる。18歳で8歳年上のAnne Hathawayと"できちゃった結婚"をし、3人の子供をもうける。1592年にロンドンへ俳優として上京するが、のちに劇作家に。(*渡し舟の船頭に"どこかで見た顔だ。俳優だろう?"と聞かれたのは、この事実を踏まえている)

1611年に著作活動を引退し、故郷に帰る。1616年4月23日、52歳の誕生日に友人たちと酒を飲み過ぎて死亡。

人間世界のさまざまな悲劇・喜劇を描き多くの名作を残した。作品としては「リチャード三世」「ジュリアス・シーザー」などの史劇、「ベニスの商人」「真夏の夜の夢」などの喜劇、「ハムレット」「マクベス」「オセロ」「リア王」の四大悲劇のほか、詩集、ソネット集なども多数ある。

Christopher Marlowe(1564-1593)

エリザベス朝の文学を代表する劇作家・詩人のひとりで、無韻詩形による演劇の先駆者。1593年、29歳の若さでデットフォードの酒場での喧嘩がもとで殺された。実生活ではゲイだったらしいこの劇作家を、やはりゲイである俳優ルパート・エヴァレットが演じている。スパイだったという説も。

代表作は1588年初演の『The Tragical History of Doctor Faustus (フォースタス博士の悲劇)』。彼の作品『エドワードII』は映画化されている。

詩としては、詞華集『The Passionate Pilgrim』の「The Passionate Shepherd to his Love(若き羊飼いの恋歌)」が有名。(この詩については『リチャード三世』Richard III(1995)を参照)

ヘンズロー

ローズ座の劇場プロデューサー。サセックス州で仕えていた主人の未亡人と結婚し、その時得た財産でロンドンに劇場を持つ。彼が残した詳細な日記は、当時のロンドンを知る貴重な資料となっている。

John Webster(1580?1625?)

16世紀初頭に活躍したイギリスの劇作家で、血なまぐさい戯曲を好んで書いた。 代表作は『The Duchess of Malfi(モルフィ公爵夫人)』『白い悪魔』

(*血を見るのが好きなネズミを連れた少年は、驚くことにジョン・ウェブスターと名乗る。シェイクスピアの次世代の劇作家の少年時代という設定。)

Edward Alleyn

シェイクスピア時代の人気俳優。興業主ヘンズローの娘婿。The famous London private secondary schools Dulwich College and Alleyn's Schoolの創設者としても知られる

リチャード・バーベッジ

当時最高の名優といわれた。シェイクスピアの四大悲劇をすべて演じている。彼の劇団は宮内大臣一座が庇護、女王陛下が常任支援者であったため裕福だった。シアター座(のちのグローブ座)は、彼の父ジェームズ・バーバッジの所有。
シェイクスピアは、R.バーベッジが関心を持っていた女性に先に手をつけてしまったことがあったが、その時「リチャード(三世)よりウィリアム(征服王)の方が先だ」と言ったエピソードがあったとか。映画でもこのウィリアム征服王に言及している。

ウィル・ケンプ

エリザベス朝の名喜劇俳優

エリザベス一世(1533-1603)

在位は1558-1603。ヘンリー8世とその2番目の妃アン・ブーリンとの間に生まれたひとり娘(→『1000日のアン』の解説を参照)。 1558年25歳でイングランド女王として即位し、生涯独身で通しヴァージン・クイーンと呼ばれる。スペインの無敵艦隊を破って海上の覇権を握り、この時代に商工業は空前の発展を遂げ、英国ルネッサンスの最盛期をもたらす。首長令、統一令を発布してイギリス国教会を確立。

Awards

第71回アカデミー賞7部門受賞(作品賞、主演女優賞=Gwyneth Paltrow、助演女優賞=Judy Dench、オリジナル脚本賞、美術賞、衣装デザイン賞、作曲賞ミュージカル/コメディ部門)

第56回ゴールデン・グローブ賞(作品賞、主演女優賞、脚本賞)

第51回英国アカデミー賞(BAFTA)作品賞、助演女優賞=Judy Dench、助演男優賞=Geoffrey Rush

第49回ベルリン国際映画祭銀熊賞、脚本賞

(その他)1999年度英国映画協会によるベスト100作品:49位にランクイン

 

ロケ地

Barnes, London, England

・・・テムズ河岸の場面に使用。

Spitalfields, London

Middle Temple Hall, London

・・・女王の御前で「ベローナの二紳士」が上映される場面(ホワイトホール宮殿)に使用。

ロンドンのVuctoria EmbarkmentとFleet Streetの間にあるチューダー様式の歴史ある法学院。1602年にシェイクスピアが『十二夜』を初演したことでも知られる。テンプルという名は12世紀にここに本拠地を置いていたテンプル騎士団に由来している。 内部にある彫刻を施した17世紀の衝立と、ドレイク提督が乗り込んだ船の横木で作ったテーブルが有名。 テンプルバー記念碑の置かれている地点がシティとウェストミンスターの境界。(Access:地下鉄Temple駅)

Middle Temple, Temple, Holborn, London
http://www.middletemple.org.uk/

St. Bartholomew the Great(聖バーソロミュー教会), London

ロンドン市内で唯一といわれるノルマン様式の建築物。

 

Hatfield Castle, Hertfordshire

・・・ヴァイオラの屋敷として使用。

Hatfield House, Hertfordshire, England

・・・グリニッジ宮殿として使用された。

エリザベス1世が幼少時代を過ごした旧宮殿に隣接。

Broughton Castle, Banbury, Oxfordshire

・・・ヴァイオラの屋敷として使用。

Eton College, Eton, Buckinghamshire

・・・ヴァイオラの結婚式の場面に使用。

1440年にヘンリー6世が創設した、イングランドで最も有名な由緒ある全寮制パブリックスクール。テムズ川を挟んで南にウィンザー城がある。

Holkham Beach & Estate, Norfolk, England

・・・ラストシーンでヴァイオラが海岸を歩いて行く場面に使用。北海に面している。

Marble Hill House

ジョージ2世の愛人であったサフォーク伯爵夫人のために建てられた屋敷。
Richmond Road, Twickenham TW1 2NL
WebSite

 

キャスト

Joseph Fiennes .... Will Shakespeare
Gwyneth Paltrow .... Viola De Lesseps(富裕な商人の娘)
Judi Dench .... Queen Elizabeth
Geoffrey Rush .... Philip Henslowe(ローズ座の劇場主)
Ben Affleck .... Ned (Edward) Alleyn (花形役者:マーキュシオに扮する)
Colin Firth .... Lord Wessex(Violaの婚約者)
Rupert Everett .... Christopher Marlowe(人気劇作家:通称キット)
Tom Wilkinson .... Hugh Fennyman (高利貸:薬屋の役)
Simon Callow .... Tilney(宮廷祝宴局長 *実在の人物)
Imelda Staunton .... Violaの乳母
Steve O'Donnell .... Lambert
Tim McMullen .... Frees
Steven Beard .... Makepeace(芝居は悪徳だと叫ぶ説教師)
Antony Sher .... Dr. Moth(悩みを聞く医者)
Patrick Barlow .... Will Kempe(俳優:『ベローナの二紳士』で道化ランスに扮する)
Martin Clunes .... Richard Burbage(当代きっての名優・カーテン座)
Sandra Reinton .... Rosaline(バーベッジの愛人)
Nicholas Boulton .... Henry Condell
Nicholas Le Prevost .... Sir Robert de Lesseps (Violaの父)
Jill Baker .... Lady de Lesseps (Violaの母)
Desmond McNamara .... Crier
Barnaby Kay .... Nol
Jim Carter .... Ralph Bashford(俳優:乳母の役)
Daniel Brocklebank .... Sam Gosse(少年俳優:ジュリエットの役)
Paul Bigley .... Peter (劇場支配人)
Rupert Farley .... Barman
Joe Roberts .... John Webster(血を見るのが好きだというチクリ屋の少年)
Mark Williams .... Wabash
David Curtiz .... John Hemmings
Gregor Truter .... James Hemmings
Robin Davies .... Master Plum
Timothy Kightley .... Edward Pope
Mark Saban .... Augustine Philips
Bob Barrett .... George Bryan
Roger Morlidge .... James Armitage
Rebecca Charles .... Chambermaid
Martin Neeley .... Paris/Lady Montague

(1998年 アメリカ 123分)

 

関連商品・書籍・外部リンク

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国内盤DVD/VHS

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