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『アーネスト式プロポーズ』The Importance of Being Earnest (2002)

監督・脚本:Oliver Parker
原作:Oscar Wilde 戯曲_The Importance of Being Earnest_

Story

舞台は19世紀末、ヴィクトリア朝のイギリス。 ジャックは自分にアーネスト(Ernest)という不肖の弟がいることにして、その不始末の面倒を見るというのを口実に、たびたびロンドンに上京して羽を伸ばしていた。 ジャックの親友アルジーも、バンベリーという病弱な友人を見舞うためだといって、嫌な約束をすっぽかすための言い訳に利用していた。

ロンドンにいる時は「アーネスト」と名乗っているジャックは、アルジーの従妹グウェンドレンに求婚する。 一方アルジーはジャックが後見しているというセシリーの噂を聞いて、「自分はジャックの不肖の弟アーネストだ」と偽ってアプローチする。 グウェンドレンもセシリーもふたりとも「アーネスト」という名の男に恋をして、「違う名前の男性なんてとても好きになれないわ」などと言い出す。 困り果てたジャックとアルジーは、神父に頼んで洗礼と命名をしてもらおうとする。 グウェンドレンとセシリーの混乱、そしてグウェンドレンの恐るべき母親レディ・ブラックネルが現れて・・・

オスカー・ワイルドの風俗喜劇の傑作を、『理想の結婚』のオリバー・パーカーが映画化。 豪華キャストが話題に。

 

Check!

オスカー・ワイルドによる原作戯曲

1894年 8〜9月イングランド南東部West Sussex州Worthing滞在中に執筆。主人公の名前が「ワージング」になったのもこのため。
1895年 2月14日 ロンドンのSt James's Theatreで初演

三幕版と四幕版の、ふたつのバージョンがあるが、この映画は四幕版を基にして製作された。 サヴォイから依頼されてやってきた弁護士Gribsby氏とのやりとり、ミス・プリズムがガヴァネスの職を辞したいという場面は三幕版には登場しない。 邦訳があるのはほとんど三幕版のほう。

関連作品

『オスカー・ワイルド』Wilde (1997) ・・・オスカー・ワイルドの生涯を描いた映画

『理想の結婚』An Ideal Husband (1999)・・・オスカー・ワイルド原作
『サロメ』Salome's Last Dance(1987)・・・オスカー・ワイルド原作

 

タウン・ハウスとカントリー・ハウス

この時代、上流階級は本邸である田舎のカントリー・ハウスの他に、ロンドンにも別にタウンハウスを構えることが多かった。

ジャックの「Woolton, Hertfordshire」にあるというカントリーハウスの敷地面積は1,500エーカー。 さらっと話しているが、つまり約184万坪、東京ドーム130個分の広大なもの。

ジャックのタウンハウスの住所は「Belgrave Sq. 149番地」で、このBelgravia界隈はヴィクトリア時代に高級住宅地として知られた場所で、Belgrave Squareという広場に面した通り。(地図>>multimap.com)。 レディ・ブラックネルにunfashionable sideと批判されていたが。

アルジャーノンの住まい

独身貴族アルジーの住まいは、ロンドンのハーフムーン・ストリートにあるフラット。 「ピカデリーとCurzon Streetの間にある高級住宅地で、劇中のワージングが常宿としているThe Albany館に近い」とのこと(青土社全集の解説より)。

『理想の結婚』An Ideal Husband (1999)でルパート・エヴェレット演じるゴーリング卿の住まいもCurzon Streetにある。

 

社交シーズン

上流階級の人々は普段は領地のあるカントリーハウスに住んでいたが、アスコット競馬やウィンブルドンなどのイベントがある初夏の社交シーズンには、ロンドンのタウンハウスで過ごしていた。 レディ・ブラックネルはジャックの出自がはっきりしない問題について「(社交)シーズンが終わるまでになんとかしなさい」と言っていたが、これは婚約などを発表するにしても、両親の行方を調査するにしても上流階級の人々がロンドンに集まっている時期の方が好都合だからかも。

 

キューカンバー・サンドウィッチは高級品

アルジーは、おばであるブラックネル卿夫人のためにきゅうりのサンドウィッチを用意していたが、ついつい自分で先につまんでしまう。 結局夫人が到着する頃にはサンドウィッチはなくなってしまい、レーンは「市場にきゅうりがなかった」と言い訳することになる。

「きゅうりのサンドウィッチだって?なんで君みたいな若造がそんな贅沢をするんだ」
Why cucumber sandwiches? Why such reckless extravagance in one so young?
・・・現在のイギリスではアフタヌーンティーの定番ともなっているきゅうりのサンドイッチだが、この時代のキュウリは高級品で、薄くスライスしていたのは価格が高かったからだとも言われる。

「きゅうりが買えなかった」というレインは、「現金で買うといっても売ってくれなくて(not even for ready money)」と言っているが、これは日頃からアルジーが借金がかさんでいることがわかる。

 

サヴォイで食事 (The Savoy)

ジャックとアルジーは、サヴォイ・ホテル内のレストランで食事している。The Savoyはロンドンの中心部ストランドにある高級ホテル。

The Savoy:Strand, London WC2R OEU
最寄り駅はCovent Garden, Embankment, Charing Cross
www.savoy-group.co.uk/savoy/

原作(四幕版)では、サヴォイでのつけがたまっているからかわりに「Willis's」(St James界隈の高級レストラン)に行こうという話が出てくる。

ホロウェイ監獄 (HMP Holloway)

"アーネスト・ワージング"名義でサヴォイでたまりにたまったツケを払うように要求されたアルジーは、弁護士Gribsbyに「払わないとホロウェイ行きになりますぞ」と脅される。ホロウェイ監獄の設立は1852年。1902年から女性専用の監獄となったが、この作品が書かれた当時は男性も収容されていた。

当時は借金の払えない者を収容したところで、オスカー・ワイルド自身も1895年4月6日から26日まで拘置されたとのこと(青土社全集の解説より)。

HMP and YOI Holloway
住所:Parkhurst Road, London N7 0NU
www.hmprisonservice.gov.uk

ブルーベルの群生

ブルーベルという青紫色の花は、春のほんの一時期だけ(4-5月頃)咲くイギリスの風物詩のひとつ。 ジャックとアルジーがブルー・ベルの花を摘みながら林の中を歩く場面は、ハットフィールド・ハウスの敷地内で撮影されたそうだ。

学名:Endymion non-scriptus または Hyacinthoides non-scripta

写真はこちらのサイトでご覧ください:
www.bioimages.org.uk/HTML/P146932.HTM
www.floracam.co.uk/wildflowers/flowers/12.html

菓子:バタつきパン、クランペット、マフィン、ティーケーキ

クランペット・・・キューカンバー・サンドイッチがないと言われて、ブラックネル卿夫人は「Lady Harburyのところでcrumpetsを食べてきたからいい」と言う。クランペットは小ぶりのパンケーキのようなもので、表面に穴がぽつぽつあいているのが特徴。レシピはこちら>>Ready, Steady, Cook !

バタつきパン(Bread and Butter)・・・原作の物語前半でも「グウェンドレンは、Bread and Butterに目がないんだ」とアルジーにいわれていたが、彼女は本当にこれが好きらしい。 セシリーとお茶をしている時もBread and Butterを所望したが、意地悪でケーキを分厚く切って出されてしまう。

セシリーとグウェンドレンのお茶の場面の後、アルジーはマフィンをぱくつき、ジャックにはティーケーキを食べるようすすめる。

 

Worthing、ヴィクトリア駅

ジャックが発見されたのはヴィクトリア駅の手荷物預かり所にあった大きなハンドバッグの中。 ちょうどその時にジャックを拾ったトマス・カーデュー氏が、ブライトン線(ヴィクトリア駅から保養地として人気のあるブライトン行きの鉄道)のワージングという駅行きの一等切符を持っていたことから、「ワージング」という姓にした。一等切符、そして保養地行きの鉄道ということで、カーデュー氏が身分ある者であるという状況が想像できる。

ワージングに鉄道が通ったのは1845年のことで、それ以来多くの人がこのリゾート地を訪れるようになった。オスカー・ワイルドもこの作品執筆中にワージングに滞在していた(1884年)。

Worthing, West Sussex

Worthing Council:www.worthing.gov.uk
This is Worthing:www.thisisworthing.co.uk

 

ガヴァネス(家庭教師)

セシリーにドイツ語などを教えている教育係のガヴァネス(住み込みの家庭教師)のミス・プリズム。 当時はレディが外に出て働くなんてもっての他という風潮があったが、ガヴァネスだけは唯一胸を張って就くことができる職業だった。教養がある未婚女性が自力で生活費を稼ぐには最適の職業だったが、雇い主によっては召使同様屈辱的な待遇を受けることも珍しくなかった。

ガヴァネスが主人公の映画としては、『ジェイン・エア』Jane Eyre (1996)『視姦』The Governess (1998)『ファイアーライト』 Firelight (1997) などが挙げられる。

 

ジャックとアルジーのデュエット"Lady come down"

セシリーとグウェンドレンの気を引こうとふたりが歌っているのは、オスカー・ワイルドの書いたセレナーデに曲をつけたもの。

The western wind is blowing fair
Across the dark AEgean sea,
And at the secret marble stair
My Tyrian galley waits for thee.
Come down! the purple sail is spread,
The watchman sleeps within the town,
O leave thy lily-flowered bed,
O Lady mine come down, come down!

引用:www.bartleby.com/143/29.html

ラファエル前派な妄想

夢見がちな乙女セシリーは、自分の日記にラファエル前派の絵を挟んで眺めており、彼女の妄想にもたびたびラファエル前派風の場面が出てくる。 木に縛られたセシリーを鎧を身につけた白馬の騎士アルジーが助けに来る図など。)

ルパート・エヴェレットの騎士姿をもっとご覧になりたい方は『SFキング・オブ・アーサー 魔剣伝説』 Arthur the King (1985) をどうぞ。アーサー王伝説のランスロット卿役を演じている。

 

ネーミングの面白さ

ワージング・・・執筆当時ワイルドが"ワージング"というリゾート地に滞在していたため。

オーガスタ・ブラックネル・・・威厳ある、威風堂々としたという意味の「August」「Augustus」の女性形。「玄関のベルをワーグナーばりに鳴らす」 「ゴルゴン(神話に出てくる鬼婆)みたいだ」などと形容されているレディ・ブラックネルにはぴったりの名前。

ミス・プリズム・・・「Prunes and Prisms」で「気取った言葉遣い」という意味になり、ここから名前を取ったとか (出典はディケンズの「リトル・ドリット」)。

Chasuble師・・・Chasubleとは、教会で司祭が着るカズラ(袖なしのミサの式服)のこと。

レイン(召使)・・・ワイルドが嫌っていた編集者ジョン・レイン(1854-1925)の名から。 ザ・ボドリー・ヘッド書店の経営者で、前衛的な機関文芸誌「イエロー・ブック」を創刊したことで知られる。

参考:青土社全集より

 

映画版独自の演出1:ブラックネル卿夫人の出自

映画ではブラックネル卿夫人はダンサーだったところを見初められて結婚したという設定になっている。 原作では「故ブラックネル卿と結婚した時はお金がなかった」くらいにしか言及されていないが。

若い頃のレディ・ブラックネルを演じたFinty Williamsは、ジュディ・デンチの実の娘。

 

映画版独自の演出2:「嘘から出たまこと」から「嘘も方便」

原作のポイントが「嘘から出たまこと」であったのに対し、この映画版はラストにある工夫を加えることによって「嘘も方便」という方向に持って行く、ひとひねりした演出になっている。(ネタばれになるので詳しくは書かないが)

 

撮影裏話

ルパート・エヴェレット(ゲイであることをカミングアウトしている)が、劇中でコリン・ファースの頬にキスしたり、おしりを叩きまくっていたりする場面は、すべてルパートの大胆なアドリブ。その時のコリン・ファースの反応が面白かったので、監督のオリバー・パーカーはそのシーンをそのまま使うことにしたとか。

 

『アナザー・カントリー』リユニオン

ルパート・エヴェレットコリン・ファースが、1984年の『アナザー・カントリー』Another Country(1984) 以来初めての顔合わせとして話題になったが、ミス・プリズム役のアンナ・マッシー『アナザー・カントリー』ではルパートの母親役で共演していた。

また、ジャックの屋敷の撮影に使われたWest Wycombe Parkの湖とそこに浮かぶ小島は『アナザー・カントリー』にも登場する。

 

ウィットに富んだ有名な台詞

すべての女は母親に似る。それが女の悲劇だ。 男は違う。それが男の悲劇だ。

All women become like their mothers. That is their tragedy. No man does. That's his.(ALGERNON)

片親をなくすのは不運とみてもいいかもしれないけれど、両親ともなくすのは不注意ですよ。

To lose one parent, Mr. Worthing, may be regarded as a misfortune; to lose both looks like carelessness. (LADY BRACKNELL)

手塩にかけて育て上げた一人娘を手荷物預かり所にお嫁にやって、手荷物と縁組させるなんて・・・

Me, sir! What has it to do with me? You can hardly imagine that I and Lord Bracknell would dream of allowing our only daughter - a girl brought up with the utmost care - to marry into a cloak-room, and form an alliance with a parcel? Good morning, Mr. Worthing!

社交界の悪口をいうんじゃありませんよ。そんなことするのは社交界に入れない人たちだけです。

Never speak disrespectfully of Society, Algernon. Only people who can't get into it do that. (LADY BRACKNELL)

 

ロケ地

West Wycombe Park, Buckinghamshire

・・・ジャックやセシリーが住むマナーハウスとして
West Wycombe Park,Buckinghamshire HP143AJ
www.west-wycombe-estate.co.uk

Lancaster House, London

・・・ジャックがブラックネル卿夫人に呼ばれて面接を受ける場面
Stable Yard, St. James' , London SW1A 1BB

Wiltons Music Hall, London

Wilton's Music Hall
1 Grace's Alley,Wellclose Square,London E1 8JB
www.wiltonsmusichall.co.uk

Inner Temple, London

The Honourable Society Of The Inner Temple, Temple, London EC4Y7HL

Carey Street, London WC2

・・・Lincoln's Innと王立裁判所の間の道

Jolly Hotel St. Ermin's, Caxton Street, London

・・・サヴォイ・ホテルの場面。
Jolly Hotel St. Ermin's, 2 Caxton Street London SW1H0QW

http://www.jollyhotels.it/eng/ALBERGHI_scheda_master.asp?OBJ=561

The Stables MarketCamden), London

The Bluebell Railway

Pitshanger Manor , Ealing,West London

・・・アルジーの家として
Walpole Park,Mattock Lane,Ealing London W5 5EQ
www.ealing.gov.uk/pitshanger/

Somerset House

www.somerset-house.org.uk

Hatfield House, Hertfordshire

ジャックとアルジーがブルーベルが咲く林の中を歩いている場面
www.hatfield-house.co.uk

 

キャスト

Colin Firth .... Jack Worthing J.P.(治安判事) JackJohnの愛称
Rupert Everett .... Algernon Moncrieff(Lady Bracknellの甥)
Frances O'Connor .... Hon. Gwendolen Fairfax(Lady Bracknell
の娘)
Reese Witherspoon .... Cecily Cardew (Jack
の被後見人)
Judi Dench .... Lady Bracknell(Gwendolenの母・Algyのおば)
Tom Wilkinson .... Rev. Canon Chasuble, D.D.(神学博士・牧師)
Anna Massey .... Miss Prism (Cecilyの家庭教師)
Edward Fox .... Lane (Algyの召使)
Patrick Godfrey .... Merriman (Jack
の家の執事)
Charles Kay .... Gribsby(
サヴォイに依頼されてやってきた弁護士)
Finty Williams ....
若い頃のLady Bracknell

 

参考資料とソフト

imdb.com/Title?0278500

Official Site(Miramax)

原作テキスト (Project Gutenberg)*三幕版

『オスカー・ワイルド全集 2(戯曲)』
西村 孝次() 青土社 ・・・(現在入手困難?)収録されているのは三幕版。 解説が大変参考になった。

『サロメ・ウィンダミア卿夫人の扇』
西村 孝次()新潮文庫 新潮社 ; ISBN: 410208102X ; (1953/04)
「まじめが肝心」として収録されている。*三幕版

『ワイルド喜劇全集』
荒井 良雄()新樹社 ; ISBN: 4787584308 ; (1976/01)

『オスカー・ワイルドの生涯』
平井博・著/松柏社

『オスカー・ワイルドの生涯―愛と美の殉教者』
山田 勝・著/NHKブックス(1999/11/01) 日本放送出版協会

 

ソフト

DVD(リージョン1):amazon.com

Soundtrack:amazon.co.jp/amazon.com

 


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