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SWEET SIXTEEN Sweet Sixteen (2002)

監督:Ken Loach
脚本:Paul Laverty
音楽:George Fenton

Story

スコットランドはグラスゴー近郊の港町。15歳の少年リアムは学校に行く気にもなれず、いつも親友のピンボールと連れ立って小遣い稼ぎをしたり悪さをして日々過ごしていた。 母のジーンは恋人である麻薬の売人スタンのために服役中。出所予定日は二ヵ月後、リアムの誕生日の前日だ。 シングルマザーとなっていた姉のシャンテルはそんな救いようのない母に愛想を尽かしていたが、リアムの方はまだまだ母親が恋しい。 湖畔に佇む眺めの良いコテージで家族揃って暮らすことを夢見たリアムは、ピンボールと一緒にスタンから盗んだ麻薬を売りさばいて手付金を払う。 やがてヤクの元締めビッグ・ジェイに見込まれたリアムは持ち前の才気を生かして、ドラッグディーラーとしての頭角を現してゆく。やがて待ちに待った母の出所日を迎えるのだが・・・。

名匠ケン・ローチが『ケス』Kes(1969) 以来久しぶりに十代の少年を主人公に据えて描いたビター・スウィートな物語。

Check!

パブのある風景

リアムとピンボールは小遣い稼ぎにパブの中で煙草を売り歩いている。週に何度も売りに来るので、さすがにパブの主人に咎められていたが。

養護施設育ち

リアムたちは母親がいるのに養護施設で育っている。イギリスは子供の人権に対する考え方が厳しく、母親が親権者として的確でないと判断されると、子供は養護施設で育てられることになる。同じくケン・ローチ監督作品『レディーバード・レディーバード』Ladybird Ladybird (1994) でも、母親から子供が引き離され、養護施設に送られる状況が描かれている。

ドラッグ

スタンが隠し持っていたドラッグを盗み出したリアムとピンボール。 ピンボールの父親もドラッグを扱っていたので、それを見て育ったピンボールの薬包紙を畳む手つきも慣れたもの。

フットボール(サッカー)

リアムの部屋の壁に「Morton FC」と名前が入ったマフラー(タオル?)が貼ってある。これはグリーノック地元のフットボール・チームで、リアムを演じたマーティン・コムストンはこの映画のオーディションを受けるまでこのモートンFCにプロの選手として在籍していた。どうりで甥のカルム相手にボールを蹴っていたときの脚さばきがサマになっていた。

Official Greenock Morton FC
www.gmfc.net

仮免

リアムの友人たちはピザ屋の配達員。配達用のバイクのひとつに赤字の「L」マークが貼られていたが、これは仮免練習中を示す札。

スコットランド訛り

登場人物たちは皆地元スコットランドのかなりきつい方言で話しているので、非常に聞き取りづらい。カンヌで上映された際には字幕が付けられたそうだが、これは英語作品としては異例の扱い。

ロケ地

Greenock, Renfrewshire, Scotland
ロケ地となったグリーノックはグラスゴー近郊、クライド川の河口にある港町。かつては造船業で栄えていたが、それが斜陽産業となってからは失業率も上がり町の活気もなくなっていった。

Awards

カンヌ国際映画祭:脚本賞受賞

キャスト

Martin Compston .... Liam
William Ruane .... Pinball (リアムの親友)
Annmarie Fulton .... Chantelle(リアムの姉・シングルマザー)
Calum McAlees .... Calum(シャンテルの息子)
Michelle Abercromby .... Suzanne (リアムの姉の友人)
Michelle Coulter .... Jean(リアムの母)
Gary McCormack .... Stan Irvin(ジーンの恋人)
Tommy McKee .... Rab(ジーンの父)

Junior Walker .... Night-time (リアムの友人・ピザ屋)
Gary Maitland .... Side-kick (リアムの友人・ピザ屋)

参考資料とソフト

imdb.com/Title?0313670

Official Site
www.cqn.co.jp/sweetsixteen/
www.sweetsixteenmovie.com

国内盤DVD

_Sweet Sixteen: A Screenplay_(脚本)
Paul Laverty (著)

(2002年 英=独=西 106分)


『スパイダー/少年は蜘蛛にキスをする』 Spider (2002)

監督:デイビッド・クローネンバーグ
原作・脚本:パトリック・マグラア(Patrick McGrath) 『スパイダー』(ハヤカワepi文庫)
撮影:ピーター・サシツキー『戦慄の絆』『裸のランチ』
美術:アンドリュー・サンダース ・・・『炎のランナー』『金色の嘘』『抱擁』
音楽:ハワード・ショア・・・『ロード・オブ・ザ・リング』『ギャング・オブ・ニューヨーク』

Story

1980年代のロンドン、ウォータールー駅に降り立った不安げな目をした一人の男・・・カナダの精神病院に入院していた統合失調症のデニスは、20年ぶりに故郷のロンドンに戻って来た。彼は、精神病院を出た人々が社会復帰するまで預かってくれるウィルキンソン夫人の施設に入り、古ぼけたカバンからノートを大事そうに取り出し、自分の過去を回想しながら書き付けてゆく。
配管工の父と、慎ましやかで愛情にあふれた母のもと、クモが好きで"スパイダー"と呼ばれていた少年時代。 その優しい母を裏切って、父はいつしかパブで知り合った娼婦イヴォンヌにのめりこみ、愛人とともに母を殺したのだ!
しかしこの心を病んだ男が、現在と過去の記憶をたどっていくうちにたどりついた恐るべき真実とは・・・?!

クローネンバーグが、『グロテスク』のパトリック・マグラアの原作を映画化。 レイフ・ファインズ、ミランダ・リチャードソン、ガブリエル・バーンと豪華キャストも見もの。

 

Check!

鉄道のある風景

映画の冒頭は、スパイダーがロンドンのウォータールー駅に降り立つところから始まる。(注:設定はウォータールー駅だが、撮影はセント・パンクラス駅)

長旅の人が多いのか、大きな荷物を持っている人々の姿が目に付く。ウォータールー駅はロンドンの主要なターミナル駅のひとつで、ユーロスターも発着する大きな駅。

ウィルキンソン夫人の施設

ロンドンに戻ってきたデニスが向かったのは、精神病院から退院した人々が社会復帰するまで暮らす施設。(ペギー・ストリートにあるという設定)ナショナル・ジオグラフィック誌を読みふけるテレンスをはじめとして、入所者たちはとても社会復帰できる状態とは言いがたい。

ガスタンクの向かいにあるため、窓を開けるとガスタンクが眼前に迫ってくるという息苦しい風景。室内のストーブもガス式でデニスはその匂いに過敏に反応する。それは過去の真実に結びつく鍵だったのだが・・・

ウィルキンソン夫人がスパイダーのためにお風呂を用意してくれる場面があるが、お風呂の水は配管が錆びているのか赤錆色になっている。 (ロンドンの古い建物ではそう珍しいことではなく、私もこのような赤錆色の水が出るホテルに泊まったことがある。)

父を虜にした娼婦イヴォンヌ(原作ではヒルダ)の姓も「ウィルキンソン」。

パブのある風景

父はよくパブ「The Dog & Begger」に入り浸っており、そこで派手な身なりをした娼婦イヴォンヌと出会う。
パブのオヤジがハンドポンプを傾けてビールをサービスしているさま、内装などが興味深い。

デニスの少年時代、夜になると両親は子供をひとり残して、少しお洒落をしてパブに飲みに行く。現在(1980年代以降)は小さい子供をひとり家に残して両親が外出することは児童虐待とみなされる法律に反する行為だが。(回想シーンの設定は1960年代。デニスの母がシーム入りのストッキングをはいているところからもかなり昔であることがわかる)

また、Salisbury Hotelのパブ(母が夫を探しに来る場面等)も、木製のバーカウンターなど内装がいい雰囲気。

イーストエンド、労働者階級の暮らし

スパイダー一家の家は、運河にも程近いキッチナー通りにあった。「Kitchener Street, E1」という通りの名を示す表示板も見え、郵便番号からして労働者階級が多く住む地域イーストエンドなのだが、Kitchener Streetという通りは架空の名前。線路のすぐ近くに野菜畑と物置小屋も所有している。

父が配管工(プラマー)というのも典型的なワーキングクラス。一家は昔エセックス(イングランド東部)に住んでいたらしい。

イヴォンヌの住むフラットも、女性ものの下着が堂々と表に干してあるようなすさんだ地域のようだ。

ウナギ

スパイダーの家に居ついたイヴォンヌが「夕食にいい物を買ってきた」と、テーブルに載せたのはアンティークな陶器製のボウルに入った生のウナギ。 イギリスの労働者階級は「ジェリード・イール(ウナギの煮こごり)」などウナギ料理を好んで食べる。

 

ロケ地

Kennington, London

ウィルキンソン夫人の施設の外観

The Oval Gasworks, London

スパイダーの子供時代の家の周辺、ガスタンクがある風景。"ガスワークス"とあるが、実はアートギャラリーになっているらしい。
The Oval, 155 Vauxhall Street, London SE11 5RH
www.gasworks.org.uk

Acton, London(W3)

スパイダーの子供時代の家の周辺。ヴィクトリア時代に作られた鉄道用コテージ

St. Pancras Station, London

冒頭のウォータールー駅の場面

The Dog and Beggar(pub), Deptford, London

デニスの父がよく来ていたパブ

The Salisbury Hotel, Haringey, London

母が父を探しに来たパブ
1 Grand Parade, Green Lanes London N4 1JX

Eton, Buckinghamshire, England

Toronto, Ontario, Canada

キャスト

Ralph Fiennes .... Dennis 'Spider' Cleg
Miranda Richardson .... 娼婦Yvonne / デニスの母
Gabriel Byrne .... Bill Cleg(デニスの父)
Bradley Hall .... 子供時代のデニス"spider"

Lynn Redgrave .... Mrs. Wilkinson (社会復帰施設の大家)
John Neville .... Terrence(施設の入所者)
Philip Craig .... John(精神病院の院長)
Cliff Saunders .... Bob (デニスと屋外作業をしていた仲間)
Gary Reineke .... Freddy(精神病院で暴れた患者)
Tara Ellis .... Nora(イヴォンヌの同居人)

 

参考資料とソフト

imdb.com/Title?0278731

オフィシャルサイト
www.spiderthemovie.com
www.movies.co.jp/spider

原作:
『スパイダー』 パトリック・マグラア (著), ハヤカワepi文庫
_Spider_ by Patrick McGrath

 


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