生っ粋のコーンウォール一家のファーム・ハウス

夕日に染まるファームハウスPadstowから、アーサー王伝説で有名な村 Tintagel(ティンタジェル)に入る。何年も前に書かれた本には「小さな土産物屋が一軒だけのひなびた寒村」なんて書かれていたのに、行ってみると結構賑わっている。もう午後8時をとっくに回っていると言うのに、人通りが絶えない。B&Bもたくさんあるし、パブの前庭では夏の長い日差しを楽しむ人たちがビールのグラスを傾けている。ティンタジェルの城址を見るのは明日にまわすことにして、そこから少し離れて Boscastleに程近いところに「ファーム・ハウス」の看板を見つけて脇道に入っていく。

牧場を過ぎるとまもなくそれらしい建物を発見。 庭のほうからは子供たちの賑やかな笑い声が聞こえてくる。 見せてもらった部屋は、片側が屋根裏部屋風に斜めになっていて広さとしてはそれほど大きくないのだが、壁に張ってあるボーダーテープとインテリアの調和がとても愛らしかった。 ここのファームハウスの中でトイレが付いていないのはこの部屋だけらしかったが(トイレだけは家族と共同)、シャワーは付いていたし、何より奥さんの人懐こい笑顔に魅了されてしまった。 「私も主人も代々コーンウォールの出でね。」とにこにこしていた。 家族はみなコーンウォールに生まれたことを誇りにしているそうだ。 この地方には独特の方言のようなものがあり、よくこのあたりでB&Bやファームハウスの名に冠せられている「tre」とは標準語で「farm(農場)」「homestead(農家)」を指す言葉だ。

後から知ったのだが、ここはAA(日本のJAFのようなもの)やBTA(英国政府観光庁)の推薦マークも付いている優良ファームハウスだった。 私たちの泊まった部屋はひとり£17とリーズナブル。 なにより部屋に生花が飾ってあって、シャンプー、ミネラルウォーターの小瓶、お茶菓子が用意されていたのは今回の旅行ではここだけだった。私たちの泊まったのが最後の一部屋だったので運が良かった。さっき庭にいたのはこの奥さんの家族で、ちょうどバーベキューをしていたそうだ。 やっぱり自分たちが育てた牛や羊を食べていたのだろうか。

部屋の内部部屋のティーセットにかかっていたティータオル(麻製のふきん)は、子供の卒業記念にもらったもののようで、クラスの子供ひとりひとりの似顔絵と名前がプリントされていて、微笑ましかった。 紅茶はTyphoo(=台風)、インスタントコーヒーはKenco(=健康?)というメーカーのものでその取り合わせにくすっと笑ってしまった。 冗談のようだがどちらもイギリスでは非常に人気のある庶民的ブランドである。

お湯を沸かして紅茶を入れ窓から外を見やるとそろそろ日が暮れ始めていた。 本当に驚くほど日が長いので(9:30頃日没)、車のライトを点けて運転したことがないくらいだ。 窓からはここの農場に飼われている牛がまだもぐもぐと口を動かしている。 この日は面白いテレビをやっていたので少し夜更かししてしまった。

翌朝の朝食は「さすがファーム・ハウス!」とうならせる内容の素晴らしいものだった。 何種類ものシリアル、ミューズリに、絞りたてのオレンジジュースとグレープフルーツジュース。フルーツはグレープフルーツにアプリコット、そしてドライフルーツ(プルーン、いちじく、アプリコットなど)、ヨーグルト。 卵は夫がスクランブルドで私がポーチドエッグ。(卵をどうするか聞いてくれたのもここだけだった) ベーコンとソーセージも自家製で、昨日庭で見た豚たちの顔を思い浮かべながら美味しくいただいた。 新鮮な焼マッシュルームに焼トマト。 全粒粉のトーストも生地の中に粉のダマが少し残っていたところを見るとこの家で焼いたのだろう。 ジャムとマーマレードもお手製だったのは言うまでもない。 料理を運ぶのを子供二人が手伝っていた。

ゲストブックに感想やお礼などをいろいろ書いて朝10時に出る。 早く起きたつもりでもゆっくり朝ご飯を食べていると1時間はかかる。ましてやこの日の朝食は特に豪華だったのだから。


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