アーサー王伝説のティンタジェル 〜マン・ウォッチングは楽しい〜

ティンタジェルにつくと、マーケットをやっていたのでまずのぞく。 市が立ってると何か面白いことやってないかと首を突っ込みたくなる性分なのだ。新品の衣料品も多い。バブアー(Barbourというアウトドア・ブランド)っぽい、濃緑のワックスジャケットがたくさんあった。これを着ていれば小雨くらいなら傘無しでも大丈夫だ。エリザベス女王から庶民まで愛されている国民服と言っても良いくらいだ。

ティンタジェル城址までは細い石ころの多い道を歩いていく。 距離がかなりあるので、歩けない人のためにランドローバー(四駆自動車)での送迎サービスもある。途中で腰に剣を差して笛を吹いている長髪の男がいた。そうこうしているうちに到着。城址までは狭くて急な階段で上から降りてきた人とすれ違うのがやっと。

耳を澄ますと観光客はイギリス人とドイツ人が大半のようだ。 地方に行けば行くほどドイツ人が多い。(ドイツ人ではないかもしれないが、とにかくドイツ語をしゃべっていた)B&Bにも「ようこそ(=Willkommen)」「部屋(=Zimmer)開いてます」と、ドイツ語の表記を掲げているところも目に付く。旅行中のマン・ウォッチングも楽しみの一つだ。アメリカ人はこの季節なら短パンにスニーカー、大声で何かに感心してはしゃいでいる。 地方に行くとよくいるドイツ人は、ザックなど背負って足には革サンダル、名所旧跡に立っている細かい字の看板も最初から最後まできっちり読む。 この、細かい字の看板や説明板をつぶさに読むという点では、イギリス人とドイツ人は共通。どこの美術館に行っても真剣に読んでいる。 そして、一昔前の「日本人はみなカメラを首から下げて地球の歩き方をもって歩いている」という常識はもう通じない。カメラはスペイン人だろうとアメリカ人だろうと、観光客は堂々とぶら下げてるし、韓国には「地球の歩き方」とほとんど同じ体裁の、ハングルで書かれたガイドブックがあるそうだ。

ティンタジェル城址狭い階段を上りきると、風雨にさらされた13世紀の城跡が。これを建てたのはヘンリー13世の兄弟、リチャード伯なのだが、この地を有名にしているのはやはり「アーサー王」伝説だ。円卓の騎士と聖杯探求の旅、王妃グィネヴィアと騎士ランスロットの恋、名剣エクスキャリバー、トリスタンとイゾルデ…など、コーンウォールやウェールズにはたくさんのアーサー王にまつわる伝説が残っているが、ここティンタジェルは、王の生誕の地と考えられている。

廃虚を抜けると細い道があちこちにのびていて、登っていくとさっき通って来た岸壁や洞窟が良く見える。 切り立った崖は岩がオーバーハングしていて、上に乗ったらボロッといきそうだ。 見下ろすと海の透明度は高いがいかにも冷たそう。

城跡のほうへ戻ると、プラスティック製の中世の騎士の鎧を身に着けた子供が、やはりおもちゃの剣を持って嬉しそうにしていた。 きっと土産物屋で売っているのだろう。 ティンタジェルには本当にたくさんのB&Bがある。 おまけに「King Arthur Hotel」なんていう名の大きなホテルまであり、観光バスも停まっていた。

村のパブで焼き立てのコーニッシュ・パスティをテイクアウェイし、日本にもあるコンビニ「SPAR」で飲み物を買っていく。 コンビニといっても24時間開いているかは定かでないし、おまけに看板はともかくとして店内は普通の雑貨店と何ら変わりはないようだ。 コーンウォールはもっぱらこの「SPAR」の勢力範囲のようで、セブンイレブンは一軒もなかった。 (ロンドン郊外はほとんどセブンイレブンなのだが。)

 

エクスムーアからカーディフまでの激走

昨日満室だといわれたロンドンの宿候補に、もう一度電話したら空きが出来たというので、今晩の予約を入れひとまず安心。 たいていキャンセルが出るものだ。

ティンタジェルを出てからエクスムーア方面へ。 海岸に近いエクスムーアを通り抜ける道は、ダートムーアに比べるといささか野生味を欠くきらいはあるが、海岸の風景とヒースの花と、潅木のあいだに見え隠れする羊を同時に楽しめる。ところどころで道が太くなっている部分に車を停めてフットパスを歩く人が多い。

車にはラジオが付いていたのでBBCを聞いていた。 ペットショップ・ボーイズからモリッシーの新譜、オアシス、ビューティフル・サウス、とUKポップの目白押し。

風力発電
広い平原に大きな白い羽根がくるくるとまわっている場所がいくつもあった。このあたりは風が強いので、それを利用した風力発電が行われているようだ。このような風力発電所を「Wind Farm」と呼ぶ。

しかしそろそろこのレンタカーの返却時間が迫っていたので、すべてのview pointに停まって散歩しているわけにはいかなかった。 エクスムーアの後半は急いで通り抜ける。 見通しが悪くカーブの多い片側一車線ずつの山道なので、遅い車が前にいても追いぬくことが出来ない。 ショベルカーやトラックのノロノロ運転にいらいらさせられ、高速に入るまでに思ったより時間がかかってしまった。

高速に入ると映画「スピード」もかくやとばかりに飛ばしていったのでだいぶ遅れを取り戻せたが、カーディフの降り口でまた渋滞。 気が付くとレンタカーの営業終了時間を30分以上過ぎていた。祈るような気持ちで裏道に車を停め営業所へ急ぐと、果たせるかな、中で所長が一人残って書類の整理をしていた。 よかった…閉まっていたら翌朝までここに足止めだった。 無事に車を返却してめでたしめでたし。総走行距離は645マイル(=約1,038km)だった。ただ、遅れてしまったために予定していたコーチに乗れなかったのが痛かった。次の便は夜11時発だというが、そんなに待っていられない。諦めて鉄道で帰ることにした。

カーディフ駅
さよならWales・・・(Cardiff Central駅にて)

有名なLove Spoonと呼ばれる民芸品。

<<<Back   Next>>>

Copyright (c)1997 Cheeky All Rights Reserved
当サイトに掲載されている情報・記事・画像など、全ての内容の無断転載を禁止します。
引用される際は、必ず出典として当サイト名とURLを明示してください。