スコットランド:ネイチャー・トレイル1,000マイル(二日目)
スコットランドの素朴な聖地:アイオナ島
ほんのくらいしかないこの小さな島を有名にしているのは、ここがスコットランドに最初にキリスト教がもたらされた場所ということ。西暦563年にアイルランド・ドニゴール王家の血を引く聖コロンバ(St.
Columba)が上陸し、ここからキリスト教を広めていったのだ。 島に渡るにはマル島の最西端Fionnphortからフェリーで10分くらい。 次の便はまもなく来るとのことで、車を駐車場に停めてしばらく待つ。 こんな何にもないところなのに有料(Pay & Display, 20分で10p)なのが少々腹立たしいが。 |
やってきた小さなフェリーをめがけていそいそと並ぶ乗客たち。スーツケースを持った人も多く、彼らは今夜ここに泊まるつもりなのだろう。船着き場の左手には土産物屋や雑貨屋、食堂があるのを横目で見つつ、まずはIona Abbeyの方向へ歩いてゆく。 途中にある尼僧院跡(Nunnery)には季節の花が咲き誇っていて綺麗。 道の左手には背の高いケルト十字Mclean's Crossが。 十字の先に漆黒のカラスがふわりと舞い下りたところをカメラに収める。 キリスト教伝来の地でありながらそこかしこに原始宗教やケルトの香りも漂うのがこの島の魅力のひとつになっているのかもしれない。 |
アイオナ・アビー(Iona Abbey)は、修復中と言うことで一部に足場が組んであったが、歴史の重みを感じさせる素朴な建物。 手前には背の高いケルト十字がふたつ並んでおり、石造りのチャペルは現在もなお現役で礼拝の場に使われているらしく、綺麗に掃除されて各席に聖書が置かれている。 この地に歴代のスコットランド王が眠っているかと思うと感慨深い。 |
歴代のスコットランド王の墓が・・・ |
アビーからの帰りがけ、雲行きが怪しくなってきたと思いきや、パラパラとにわか雨。 ザックに入れていた上着を取り出して羽織り、フェリーが来るまで土産物屋の軒先で雨宿り。 釣りやキャンプに行く時にでも・・・と買っておいたアウトドア用の防水透湿素材(雨粒ははじくのに蒸れない)の服なので、少々の雨ならこれだけでもしのげる。 フェリーの甲板に出た時の肌を刺すような冷気、気まぐれな雨雲・・・スコットランドを旅する上で、これほど力強い味方はないだろう。
目の前にある民家の庭先に干してある洗濯物は、雨が降っても取り込まれることなく放置されている。 見慣れた光景だが、乾きかけては雨に濡れ、乾いては濡れるの繰り返し。 洗濯物が乾いた時、晴れている時、持ち主が取り込む気になった時の、三つが運良く一致するまで、洗濯物は永遠にそのままなのかもしれない。 |
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フィオンフォートからトバモリーへの激走・絶景ドライブ
さて、アイオナ島から帰るフェリーが予想以上に遅れてしまって、もう夕方の16.30。 確かトバモリーから出る最終フェリーが18.00だったはず。 ぎりぎり間に合うか?
フェリーから降りてくる客の先陣を切って駐車場にダッシュ。 海沿いのA849を大急ぎで戻る。 帰り道の選択肢としてはふたつ。 ひとつは来たA849道路をそのままCraignure経由でぐるっとまわり、SalenからA848でトバモリーに至る道。 もうひとつはA849からGlen Moreの手前で分かれているB8035道路に入り、Salenからトバモリーに行く道。 前者と後者の距離は7マイル差(約11km)。 しかしイギリスの田舎道をドライブされたことがある方ならご存知かもしれないが、道路のランクによって運転のしやすさに格段の差が生ずるのだ。 道路にはM道路、A道路、B道路の三種類があり、普通はB道路よりA道路のほうが断然走りやすく、さらに数字が少ないほど整備が行き届いている。 「A849で28マイル」と「B8035で21マイル」・・・そうこうしているうちに決断の時が来た。 ええい、ままよ。 いちかばちかで「B8035で21マイル」の方に賭けた。
予想した通り、いや、予想以上にB8035はひどく舗装状態が悪い。 道も狭いうえに見通しも悪い。 一部山間部も走るが、左側はガードレールもない断崖絶壁の連続。 アップダウンも激しいのでBlind Summit(坂を超す瞬間まで対向車が来ているかどうかわからない)前にはスピードを殺し、警笛を鳴らして進む。 ただ、ひとつだけ救いだったのは、A849に比べて交通量がグンと落ちたことだ。 多少道路の質が良いとはいえ、あちらも行き違いのできない一車線の道なのだから、対向車をよけてPassing Placeに車を寄せる時間のロスはばかにできない。
恐ろしくスリリングな道程だが、同時に息を呑むような絶景ルートでもあった。 右手にはBen Moreの峰と岩場を彩るヒースの花、Highland Cooの大群。 左手は断崖に打ち寄せる波飛沫。 変化に富んでいつまで観ていても飽きることのない、夢のような風景が広がっていた。 ・・・Fabulous!・・・今回の旅行でどの道が一番ドラマティックで美しかったかと聞かれたら、迷うことなくこの細道を挙げたい。 (運転していた夫は必死でハンドルを握っていたので申し訳ないのだが)
ああ、それにしてもひどい道。 どこもかしこも落としもの(droppings)だらけだ。 あまり車も通らないものだから、道の両脇に鎮座する動物たちも態度がでかい。
「わぁぁぁぁっ、どけどけ、どいてくれぇ!」文字どおり羊や牛を蹴散らしながら、必死で走る。 道端で寝そべっていたHighland Cooは、車が来る直前で出していた前脚を鷹揚にひょいと引っ込めた。
出航10分前ギリギリセーフ: トバモリー(Tobermory)からのフェリー
そうこうしているうちにSalen着、A848道路へ。 ありがたいことにここからは片側一車線ずつあるので、もうBlind Summitに神経を尖らせなくてもいい。 走りに走って、「ペインテッド・ビレッジ」と呼ばれる、建物が赤・青・黄とカラフルに塗り分けられたトバモリーに到着。 時刻は17.50。 ふぅー、間に合った。 10分後、私たちを載せたフェリーは無事マル島を後にした。
Oban-Craignure(マル島)間と違って、 Tobermory(マル島)-Kilchoan(本土)間のフェリーは小規模で地味。 時間のせいもあるかもしれないが、みんな甲板に出てカメラを構えたりせず、おとなしく座っている人が多い。 車ごと来た人々は、そのまま車内に留まっていたりして。
でも人間ウォッチング好きの我々としてはそのまま車に乗っているわけがない。 いや、見られていたのは我々の方か。 近くに乗り合わせた子供たちは、変な東洋人ふたり組を見つけ、そわそわとして好奇心を隠せない。 とはいえ、あからさまにじろじろと見つめるわけではなく、時折そっと視線を送ってくるだけの躾のいい兄妹だった。 そのうちに妹の方(小学生くらい)は持っていたシールブックに熱中し始めた。 表紙についているアイドルのシールをはがして、所定の位置にぺたぺたと貼っていくというもの。 うーむ、イギリスの映画俳優ならたくさん知っていてもティーンエイジ・アイドルとくるとさっぱりわからない。
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