セント・パトリック大聖堂(St Patrick's Cathedral)

入口で寄付金を集めていた神父にどこから来たのかと尋ねられ、日本からだと告げるととても嬉しそうにフットボールの話を始めるので、ちょっと楽しかった。でもいいのか、聖職者がそんなことで? いいのだ。そんなことがすべて許されるほど、アイルランドは国を挙げてのお祭り気分、そしてワールドカップがらみで日本に対する親近感がうなぎのぼりだったのだから。

クライスト・チャーチ大聖堂がどちらかと言えば支配階級とつながりが深い教会なら、セント・パトリックは民衆の教会。 教会の前には市民が憩う公園があるが、ここに聖パトリックが洗礼を施していた聖なる泉があったとか。 『ガリバー旅行記』で知られるジョナサン・スウィフトはこの教会の司祭長も勤めており、スウィフトとその恋人エスター・ジョンソンの墓、遺愛の品々も展示されている。 教会内に入ってしばらくすると、ちょうどパイプオルガンの演奏が始まった。 1742年にヘンデルのメサイアが初演された場所でもある。 この高い天井の下、音色はどのように響き渡ったのだろうか。


St Patrick's Cathedral
Patrick Street, Dublin 2
www.stpatrickscathedral.ie

 

クリスタルの輝きに魅せられて

アイルランド市中で買い物が出来るのも今日が最後。 B&Bでもらっていたクーポン券があったので、トリニティ・カレッジ横のNassau streetにある「House of Ireland」にクリスタル製品を見に行くことにした。 このあたりからグラフトンストリートにかけてはちょっとしたショッピング街になっていて、ウィンドウを覗きながらのそぞろ歩きも楽しい。そういえば文豪ジェイムズ・ジョイスがその妻ノーラをナンパしたのもこのNassau streetであった。

各地のB&Bで何気ない生活の中で美しいものに触れる喜びを味わったこの二週間、ずっと最後にダブリンで何か買って帰ろうと思っていた。 アイルランドの名産品が取り揃えられたこの店House of Irelandの品揃えはさすがで、クリスタルも選ぶのに困ってしまうほど置いてあった。 なかでもウォーターフォードはカッティング技術の鋭さが際立っているようで、光に当てるとひときわ輝く。 グラスをペアで、そしてずっと欲しかった見事な燭台を一組手に入れた。 クーポン券はお買い上げ金額の10%分の品物をプレゼントしてくれるというもので、これまた目をつけていたゴールウェイ・クリスタルのボンボニエールを選んだ。 免税手続きも手馴れた様子で、ささっと書類を作ってくれた。 チェックイン後に空港のポストに書類を投函するだけだという。 空港で長い列に並んで書類にスタンプをもらわねばならない(時には買った品物を提示しなければならない)イギリスの免税手続きに比べて何と簡単なことか。

他にも手編みのアラン・セーターやリネン、ベリーク焼、スタンプウェア(陶器)、セルティック・ジュエリーなど質の高い名産品が揃っている。 B&B協会のクーポン券をもらった方はぜひ訪れるべし。
www.houseofireland.com


トリニティ・カレッジ向かいのアイルランド銀行
www.bankofireland.ie

 

フェニックス・パーク(Phoenix Park)

歩いて宿に戻って荷物を置いてから、ダブリン郊外にある巨大な公園フェニックス公園へ。 案内にあった10番のバスに飛び乗り、運転手に「このバスDublin Zooに行きます?」と尋ねると、気のない素振りで「Yeah」と答えるので乗っていた。 しかし通りの名前を見ていると、どうも違う方向に連れて行かれているようだ。 気になってもう一度「このバス本当にDublin Zooに行くの?」と聞くと、「いいやー?」と。 ムッカー。 そういえば、途中でこの運転手が降車ブザーを無視してバス停で降ろしてくれなかったといって、数人の女性がものすごい剣幕で怒っていたっけ。 客の言葉を聞かない不良運転手だったのだ。 反対側の道路から逆向きのバスに乗れというので、「じゃあ、さっき払ったバス代どうなるの?」と怒りに震えつつ訴えると、乗換用のチケットを切ってくれた。 反対側の道路から正しいバスに乗り、運転手に「さっきの運転手に間違ったことを教えられた」と説明して乗換用のチケットを見せたら、それでいいことになった。

バスは今度こそ正しいルートでフェニックス・パークに向かった。 市中心部からかなり離れたところで、低所得者向け住宅が林立する地域やや移民街のような雰囲気の町も通った。 エスニック・フード専門店があるのは、地域住民のニーズがあるから。

都市型公園としては世界最大規模の1730エーカーという広さを誇るこの公園には、アイルランド大統領官邸や警察本部、ダブリン動物園がある。 ロンドンのハイドパークの五倍というと、いかに巨大な公園であるかわかるだろう。 「Phoenix」はゲール語で"clear water"を意味する"Fionn Uisce"が訛ったものだとか。 公園内にそびえるWellington Monumentは、ダブリン生まれのウェリントン公がウォータールーの戦いでナポレオンを打ち破ったことを記念したもので、ヨーロッパにあるオベリスクとしては最も高いものだそうだ。

公園の入り口にあるバラ園では、子供がおもむろにバラの花びらをむしって遊んでいた。 池の水面に柳が映えて美しい。 どこまで続くともわからない広い敷地の公園は人影もまばらで、午後の太陽が眩しい。 動物園はちょうど閉園したところで、親子連れが何組も出てきた。 ここは世界で三番目に古い動物園だとか。


Phoenix Park

 

オコンネル・ストリート再び

帰りはオコンネル・ストリートでバスを降り、どこか食べるところ or 食べるものを探しにかかった。 このあたりは脇道に入るとほんっとに中国人ばかり。 中国人専用ネットカフェまであるくらいだ。 中国語仕様のパソコンを揃えているようだ。

道路中央にあるちょっとした広場で泥酔している少年の懐を探り、財布をつかんで脱兎のごとく逃げていった男を見た。 比較的治安が良いといってもここは日本ではない。 サラリーマンやOLが泥酔して道路にへたり込んでいられるのも、平和な日本ならではの光景だろう。

結局B&Bに帰る途中にあるスーパーDunnes Storesに寄る。 惣菜コーナーでBBQリブ(甘口のタレがからまった、柔らかい豚のアバラ肉。スモーキーな薫りがして良い)とフライドチキン、カレー味チップス(フライドポテト)を。

パンはIrish Soda Farls(バターミルク入りのアイルランド伝統のパン。"Paul Rankin sellection by Irwins"と袋に書いてある。Paul Rankinってアイルランドの有名なシェフらしい。) 他に牛乳1リットル、ヨーグルト、チーズ。

翌朝早く出るので先に支払いを済ませておいて、頼んでおいたライトミール(朝食をダイニングで食べられないので)を受け取る。空港行きのバスはエデン・キーまで行かなくてもこの宿の目の前のバス停から出ると、 ご主人が教えてくれた。 ラッキー。

次の朝慌てないように、荷物は夜のうちにまとめておく。

 


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