ヴェルレーヌゆかりのホテル、そして小便小僧 (Manneken-Pis)

グラン・プラスに戻り、最高級5つ星ホテル・アミーゴの写真を撮りに行く。 ここは昔監獄として使われていた歴史的建造物で、ブリュッセル滞在中のランボーとヴェルレーヌによる"(俗な言い方をすれば)痴情のもつれの発砲事件"の舞台となった場所である。 あのレオナルド・ディカプリオの映画『太陽と月に背いて(Total Eclipse)』ですっかり有名になった・・・。 18737月にこの建物の前でふたりは口論となり、ヴェルレーヌはランボーに発砲した咎でPrison Amigo(当時)に投獄された。 ブリュッセルに来る前にふたりはロンドンにも逗留していたのだが、ヴェルレーヌは食事のまずさに辟易としていたらしい・・・。ひょっとしてそれがベルギーに来た理由だったのか?!

Hotel Amigo, Rue de l'Etuve 9, 1000 Brussels, Belgium
www.hotelamigo.com

ホテル・アミーゴの脇の道は、小便小僧を見に行く観光客と、その観光客を目当てにした土産物屋が立ち並ぶ賑やかな通りである。 小便小僧 (Manneken-Pis)ジュリアン君は、「ブリュッセル最年長の市民」として親しまれているブロンズ像で、同時に「世界三大ガッカリ」と揶揄されることもある観光名所。 思ったより小さいが、「小僧」だったらまあこんなものかも。 衣装持ちの彼のワードローブは、グランプラスの市立博物館に納められている。

www.mannekenpis.be

 

 

ブリュッセル風ワッフル

「ベルギー・ワッフル」とひとくちに言っても二種類ある。 ひとつはリエージュ風ワッフルと呼ばれる、ちょっと前に日本でも大ブームになったかりっとしたタイプで、もうひとつはブリュッセル風ワッフルという長方形のふわふわのタイプ。 リエージュ風はブルージュで食べたが、ブリュッセル風はまだだった。 グラン・プラスを出てオープンテラス形式の洒落たカフェの店頭に、ワッフルやフリッツ(フライドポテト)などを載せたメニューがあったので、いそいそと入った。

席についてメニューをもらうと「マネケン」と書いてある。 え?じゃあ、ここがあの有名な? ベルギー・ビールKriek(サクランボ味のフルーティーなビール)、フリッツ、そしてブリュッセル風ワッフルをオーダーした。 ここでもツーリスト・パスポートの割引券が使える(10%off)。上に粉砂糖と生クリームがかかっているのを頼んだので、ふんわり甘くて幸せ〜。 フリッツもカリッと色よく揚がっていて美味。

 

 

ライアン・エア、許さん!

ホテルに戻って預けてあった荷物を受け取り、地下鉄Maal駅に向かう。 ベルギーからアイルランドへはRyan Airという格安航空会社で、Brussels South Charleroi Airportというローカル空港から飛ぶ。 ところがこの「南ブリュッセル空港」とは名ばかり、「浦安にあるけど"東京"ディズニーランド」なんてかわいいものじゃなく、「成田にあるのに新東京国際空港」っていう遠さ。 メインのブリュッセル国際空港は市内から20分だというのに、このBrussels South Charleroi Airportへは電車でたっぷり1時間もかかる。 そう、実はBrusselというよりはシャルルロワ(Charleroi)という町の空港なのだ。

その不便さをカバーするためにRyanairはブリュッセル市内から空港までのシャトルバスを運行しているのだが、その集合場所がMaalbeek駅前のアイリッシュ・パブ「The Wild Geese」だった。 アイルランドをハブ空港としているRyan Airだけあって、集合場所がアイリッシュ・パブというのがいかにも。 5月末、家を出る直前にRyanairのサイトで再度確認したので間違いはないはず・・・だったが、どうも様子がおかしい。 スーツケースを引きずってきた女の子二人連れがパブに入っていったかと思うと、すぐ出てきて血相を変えてタクシーに向かってダッシュしていった。 慌ててパブに入って従業員に確認してみると、つい最近集合場所が変わったばかりだという。 バスが来るのはBruxells-Midi駅近くだとォ?! 今からではとても間に合わない。 バカバカ、ライアン許さん! 先刻の二人組が交渉していたタクシーがいたので聞いてみると、彼女たちもやはりRyanairに乗る予定だったらしい。 「今からじゃタクシーでも集合時間までに南駅に着くのは不可能だねえ・・・。 空港まで乗っていく?」

しかしタクシーは断って、自力で国鉄に乗って行くことにした。 メトロで中央駅まで戻って窓口に駆け込んでチケットを買い、ホームへダッシュ、無事目的の電車に乗り込む。 電車で一時間程度とは聞いていたが、何駅くらいあるのかわからない。 ホームに電車が停まる度に窓から駅名を確認。 途中で検札に来た係員にも聞くと"あと二駅だよ"と。 ところがそのふたつ目の駅で近くにいた乗客はほとんど降りてしまい、どうみてもここはそんなに大きな駅でないが急に不安になる。 そのソワソワした様子を見て、向かいに座っていたおじさんがカタコトの英語とフランス語まじりで、空港は次の駅だと教えてくれる。 空港へはその駅からタクシーで10分くらいだとも。ああ、 「二つめ」でなく「あと二つ」でよかったのだ。 電車は再び走り出し、先刻の検札係が通りがかって次の駅で降りるようにと教えてくれた。

シャルルロワという町は、その名の通りフランス語圏に属する。 観光都市ブリュッセルではどこに行っても何とか英語が通じたが、バスがどこから出ているか聞こうと飛び込んだインフォメーション・コーナーの係員はフランス語しか話せない様子。 焦りつつも何とか知っているフランス語を総動員して時刻表を見せてもらった・・・が、このバスには間に合わなかった。 諦めてタクシーで行くことに。

実は「ブリュッセルにはボッタクリの悪徳タクシー運転手が多いらしい」という噂は散々聞いていたので内心戦々恐々としていた。 遠回りをして距離をかせぐとか、突然メーターを倒して操作するとか。 だからベルギー国内では極力タクシーを利用したくなかったのだが、非常事態だ、背に腹は代えられない。 念のために料金の目安と所要時間を確認してから乗り込む。 タクシーは自動車道を猛スピードで飛ばし、あっという間に空港に到着。 この運転手はたいそう感じがよく、心配は杞憂に終わった。 ああ良かった、シャルルロワはブリュッセルとは違うのだな。

Brussels South Charleroi Airportから発着する航空会社はライアンエア一社のみ。つまり事実上ライアン・エア専用空港のようなものだ。 空港自体も黄色と青のライアン・カラーに塗り分けられているし。 チェックインの際に私の手荷物が規定の重さ(7kg)を超えているだろうと見咎められたが、夫のとあわせてふたつなら14kgに達しないだろうと言い張ったらしぶしぶOK。 出発ゲート内はダブリン行きの飛行機を待つ人々でごった返していて、ソファも足りない状態。 徹底的にコスト削減ということか。 ハーレーにでも乗っていそうなバイク野郎風兄ちゃん団体がいて目を引く。Born to be Wild〜♪

バスが来なかったことから始まって、空港に着くまでヒヤヒヤの連続だったが、なんとか無事予定の飛行機に乗り込めてほっとする。 さて、ダブリンまで一時間。 短い空の旅を楽しむとしようか。

(第二部:アイルランド・ドライブ紀行に続く)


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