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華麗なる貴族』 Brideshead Revisited (1981)
『ブライズヘッドふたたび』 Brideshead Revisited (1981)

監督:チャールズ・スターリッジ
脚本:ジョン・モーティマー
原作:イーヴリン・ウォー Evelyn Waugh 『ブライヅヘッドふたたび』
イーブリン・ウォー/ブライズヘッドふたたび / ブライヅヘッド再訪 / ブライズヘッド再訪 / 青春のブライズヘッド/ ジェレミー・アイアンズ

イーヴリン・ウォーの小説を原作にグラナダTVが製作した傑作。 滅びゆくカトリック貴族の一家を叙情的に描いた、甘美で哀切な文芸ドラマ。

英国映画協会が選んだテレビ番組ベスト100の第10位にランクイン


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Story

1. Et in Arcadia Ego(100)

1944年春、第二次大戦中のイギリス。37歳のチャールズ・ライダー大尉は、連隊の移動先がかつて自身がともに青春時代を過ごしたセバスチアンの実家であるマーチメイン侯爵家の館だと知り、追憶に浸る。

チャールズが初めてセバスチアンに出会ったのは1922年のオックスフォード。酔っ払ったセバスチアンがチャールズの窓辺で戻してしまうというとんでもない出会いだったものの、そのお詫びにとチャールズは翌日のランチパーティーに招待され、ふたりは急速に親しくなる。

セバスチアンは車を借りてチャールズを自分の実家に連れてゆく。 しかし"自分の家族は魅力的過ぎから、会わせたらきっと君は彼らのほうに行ってしまうだろう"と、セバスチアンはチャールズを家族には引き合わせず、彼が最も心を許しているばあやに紹介する。

セバスチアンとイートンで同窓だったという変わり者のアントニー・ブランシュに食事に誘われ、セバスチアンの家族について聞かされる。

大学が休みになるとチャールズは父がいるロンドンの実家に戻るが、父は早速食えない狸親父ぶりを発揮し、チャールズを当惑させる。友人のジョーキンズを食事に招いたひには、彼を勝手にアメリカ人と決めつけ、ちくちくと言葉でいたぶったりする。

チャールズが父との生活に疲れ始めた頃、セバスチアンが重傷を負ったという電報が届き、ブライヅヘッドに向かう。Melton Carbury駅前にはセバスチャンの妹ジュリアが車で迎えに来ていた。

2. Home and Abroad(53)

1924年。セバスチアンの電報は大げさだったことがわかり、ほっとするチャールズ。足に怪我をして車椅子生活を強いられているセバスチアンに呼ばれたチャールズは、美しいイングランドの夏をブライズヘッドで毎日彼と戯れて過ごす。温室や広大な庭を車椅子を押しながら回り、屋根の上で日向ぼっこ。

ふたりはセバスチアンの父マーチメイン侯爵のいるベニスを訪れ、そこで彼の愛人カーラとも対面する。 4人は観光客のようにベニスの町をそぞろ歩いたりゴンドラに乗ったりして楽しむ。チャールズはカーラからなぜマーチメイン侯爵が家を出てベニスに逃れて来たのかを聞く。

ヴェニスでの2週間の休暇を終え、二人はオックスフォードに戻る。

3. The Bleak light of day(53)

セバスチアンのお目付役にと、レディ・マーチメインの知人サムグラス氏がオックスフォードにやってきた。 ジュリアも恋人の謎めいたカナダ人レックス・モットラムを連れてオックスフォードを訪れる。

セバスチアンらは舞踏会の後にSOHOのクラブに行って酔っ払い、夜中に飲酒運転で騒ぎを起こす。軽く済むかと思いきや留置場に入れられ、新聞にまで載ってしまう。

チャールズはクリスマス休暇にセバスチアンの実家を訪れ、彼の家族とも親しくなる。しかし、ちょうどその頃からセバスチアンは酒びたりになっていった。

4.Sebastian Against the World(53)

1924年、イースター休暇をブライヅヘッドで過ごしていたチャールズは、セバスチアンの飲酒癖が益々酷くなっていくのに気づきやめさせようとする。ブライズヘッドの人々ともすっかり親しくなったチャールズに、セバスチアンは母の回し者ではないかと詰問する。とうとう家族の前で泥酔して失態を演じたセバスチアンはロンドンに発ち、チャールズも後を追う。チャールズは別れ際にマーチメイン夫人にセバスチアンをよろしくと頼まれる。セバスチアンはオックスフォードを退学させられ、チャールズもオックスフォードを中退して海外で絵の勉強をしたいと父に切り出す。

Sebastian contra mundam:「Sebastian Against the World」という意味のラテン語

5.A Blow Upon a Bruise (51)

パリの美術学校に留学していたチャールズは、1924年の年末、クリスマスの2日後にブライヅヘッドを訪れる。セバスチアンはサムグラス氏と"グランド・ツアー"としてエジプトやイスタンブールなどを旅行しており、その時の写真をスライドにして鑑賞する。しかし旅行の写真に写っているのはサムグラス氏ばかり。 セバスチアンは写真を撮る係りだったのだとその場は取り繕ったが、実はセバスチアンはイスタンブールでアントニー・ブランシュに出会った後サムグラス氏を振り切り、別行動をしていたのだった。

アルコールに溺れているセバスチアンからは注意して酒が遠ざけられていたが、狩りの日に懇願され、チャールズはセバスチアンにパブに行く金を渡してしまう。そのことが発覚し、マーチメイン夫人に責められたチャールズは、もう二度とこの館を訪れることはないだろうと思いながらブライヅヘッドを去る。

6.Julia (51)

パリのチャールズのアトリエにレックスが訪ねてきた。彼と同行していたセバスチアンが途中で行方不明になってしまったというのだ。レックスはジュリアと結婚するつもりだと告げる。

(回想シーン:昔レックスにはBrenda Championという愛人がいて、彼女のコネクションで社交界に顔が利くようになった。ある夜、Brendaの家からレックスが出てくるのを目撃したジュリアは傷つき、翌日は度重なるレックスからの電話もすべて取り次がさせなかった。直接彼女の家にやってきたレックスを許し、その日のうちにジュリアは秘密裏に婚約したのだった。)

イギリスに戻ったレックスはジュリアと結婚するために、モーブレイ神父についてカトリックに改宗する準備をするが、神父は彼の態度にはなはだ疑問を覚える。式の準備も着々と整っていた頃、兄ブレイディが、レックスには離婚歴があり、別れた妻も存命中だと家族の前で暴いてしまう。相手が死なない間に再婚するなんて、カトリックの教理ではとても許されないこと。周囲の反対を押し切ってジュリアはプロテスタントの教会でレックスと結婚式を挙げる。

7.The Unseen Hook (51)

1926年5月、折りしもゼネラル・ストライキ真っ盛りのイギリスにチャールズは戻ってきた。イーストエンドに出かけた折に、チャールズは偶然オクスフォード時代の旧友マルカスター卿に出会う。チャールズとマルカスターは出席したパーティーで偶然アントニー・ブランシュと再会する。

セバスチアンは今フェズに住んでいると情報を得たチャールズは、ジュリアに瀕死の床にあるマーチメイン夫人が息子に会いたがっていると聞き、彼を連れ戻すべくモロッコに旅立つ。モロッコでセバスチアンと同居していたクルトという青年に会い、そして重度のアルコール中毒で弱りきったセバスチアンに再会する。セバスチアンをイギリスに連れ戻すことができないまま、チャールズはジュリアからマーチメイン夫人の死の知らせを受け取る。

8.Brideshead Deserted (52)

画家となったチャールズはブライディに依頼され、ロンドンにある改修前のマーチメインハウスを描くことになる。チャールズはコーデリアとリッツで食事し、語り合う。

チャールズはメキシコなど南アメリカを2年間旅行した後、ニューヨークで妻のシーリアと待合せ、再会する。シーリアは学生時代の友人マルカスター子爵の妹で、ふたりの子供をもうけていた。チャールズ夫妻はイギリス行きの客船に乗り込むが、そこで懐かしいジュリアの顔を発見する。シーリアは自分たちの船室で一緒に乗り合わせた名士たちを招いてパーティーを開くが、ジュリアは現れない。

9.Opherns of the Storm (53)

さすがの豪華客船も嵐には勝てず、船酔いに苦しむチャールズの妻シーリアを始めとして、ほとんどの乗客たちはみな自室にこもりきっている。チャールズは人気のない船内をジュリアとともにそぞろ歩くうちに、次第にお互いの気持ちに気づき、ついに結ばれる。 船はとうとうイギリスに到着し、下船したチャールズは子供たちの待つロンドンの家には戻らず個展の準備をする。

チャールズのロンドンでの個展は、シーリアの頑張りもあって大成功を収める。画廊にやってきたアントニー・ブランシュはチャールズを怪しげなゲイ・バーに連れてゆき、彼の作品について辛辣な批評をする。

チャールズは汽車でブライズヘッドに向かい、ジュリアと再会する。 ブライヅヘッドではレックスがパーティーを開いていた。

10.A Twitch Upon the Thread (53)

2年が経ち、チャールズとジュリアは結婚するためにそれぞれ離婚の準備を進めていた。ブライディは3人の子持ちの未亡人Beryl Musprattと婚約したと二人に告げる。しかし"敬虔なカトリックである婚約者を、不倫の関係にあるチャールズとジュリアが住んでいる家に連れて来る事はできない"というブライディの心無い言葉に、ジュリアは酷く傷つき号泣する。

看護婦としてスペインで働いていたコーデリアが久しぶりに帰国する。 コーディリアの報告により、セバスチアンはアフリカの僧院にいることを知る。

11.Brideshead Revisited (90)

1939年(第二次世界大戦開戦の年)、死期が迫ったマーチメイン候はカーラとともにブライヅヘッドに戻ってくる。マーチメイン候はローマで長男ブライディとその嫁ベリルに会い呆れ果てた話をし、このブライヅヘッド城を、ブライディ夫妻にではなく、ジュリアとチャールズに遺したいと告げる。いよいよ候の体調が思わしくなくなった時、ブライディは教区の神父を呼び、父とカトリック教会の関係を修復しようとする。父にカトリック教徒として終油の秘蹟を受けさせたいと願う家族に見守られながら、マーチメイン候は最期に神を受け入れ十字を切り、安らかに息を引き取った。父の最期の姿に心打たれたジュリアは信仰を取り戻し、チャールズに永遠の別れを告げる。

1944年春、連隊の本部として使用されることになり主を失ったブライヅヘッドの館は胸が痛むほどに荒れ果ててしまった。チャールズは屋敷の片隅に今もひっそりと住んでいたばあやに再会し、昔のままの姿を留めていたチャペルにひざまずき、神の恩寵を感じる。

 

Check!

イギリスのカトリック

原作者のイーブリン・ウォーは1930年に英国国教会からカトリックに改宗している。

イギリスではヘンリー8世がローマン・カトリックから離脱して英国国教会を作って以来、プロテスタントがカトリックよりも優位にあるため、英国国教徒(アングリカン)カトリック教徒は少数派。マーチメイン侯爵家のような貴族がカトリック教徒であるというのは非常に珍しいことで、滅び行く存在であるブライヅヘッドの人々に深い陰影を与えている。

由緒ある名家に生まれた美しいジュリアは皇太子妃も望める立場にいたが、カトリックであるという時点でその資格は無く、彼女の婿選びは困難を極めることが予想されていた。

ブライヅヘッドにはカトリックのチャペルがあり、日曜日には司祭を招いてミサを執り行う。 このチャペルに初めてチャールズが来た時、聖水盤に指を入れて十字を切っている(カトリックしかしない)セバスチアンの真似をしてとがめられる。無神論者(atheist)でないまでも不可知論者(agnostic)であるチャールズには似つかわしくない行い。

マーチメイン家の人々のうち、信仰に忠実な者と信仰から離れた者たちが対照的に描かれている。
敬虔な信者であるマーチメイン夫人と修道士になる希望を持っていたこともある長男のブライディ、無邪気に明るく信仰しているコーディリア。
それに対して夫人を憎悪するがゆえに遠くベネツィアに逗留するマーチメイン侯爵、アル中になって異国で破滅的な生活を送るセバスチアン、離婚歴のあるレックスとプロテスタント式の結婚をしたジュリア。
しかし、一時的に信仰を失っていたこの3人も、まるで"見えざる鉤と糸の一引き"(注)に掴まえられたかのように、神の元に戻ってゆく。
(注:マーチメイン夫人が朗読していたG.K.チェスタトンの"ブラウン神父"の言葉。この"The Unseen Hook"、"A Twitch Upon the Thread" というフレーズはそれぞれ第7話、第10話の副題にもなっている)

 

ブライヅヘッド城

ロケに使用されたのはヨークシャーのカッスル・ハワード。 イーヴリン・ウォーはこのカッスル・ハワードをモデルにしてマーチメイン家の屋敷を描いたと言われている。特に庭の噴水の描写など。小説にはウィルトシャー(イングランド南西部)にあるという設定。

作品の中でここのチャペルは、アーツ&クラフツ様式の美しい様式だと描かれている。アーツ&クラフツとは、19世紀末からウィリアム・モリスらを中心とする芸術家たちによって提唱されたスタイル。

オックスフォードの学生生活

セバスチアンの所属するコレッジはクライストチャーチ・コレッジという設定(撮影は主にハートフォードコレッジ)。クライストチャーチはオックスフォードの中でももっとも有名なコレッジのひとつで、ルイス・キャロルことドジソン教授もここで教えていた。

原作者のイーブリン・ウォーはハートフォードコレッジ出身。 セバスチアンの部屋は、実際にウォーが暮らしていた部屋を使用している。

オックスフォードの通りは馬車が行き交い、道にもところどころに馬糞が落ちている。学生たちは自転車を便利な移動手段として使っているが、これは現代のオックスフォードも同じこと。

イートン校出身

セバスチアンは英国パブリックスクールの頂点とも言える名門イートン校出身。酔って騒いでチャールズの窓辺で粗相をしてしまった時、一緒にいたのはイートン校出身の友人たち。アントニー・ブランシュもイートンにいたが、中退してしまった。

戦争

この物語の主な時代設定は、第一次大戦後、第二次大戦前の戦間期。

冒頭の場面、チャールズが第二次大戦下に軍人としてブライヅヘッドを訪れるさまが描かれている。 新任の士官である部下のフーパーに対して感じている世代の断絶、無理な要求をする上官、そしてあれほど美しかったブライヅヘッドが軍の施設として提供され荒廃した様子。

マーチメイン候は第一次大戦に従軍し、戦争が終わってもそのまま家に戻らなかった。 侯爵という位にありながら軍人として戦地に赴くのは、イギリス流の「ノブリス・オブリージュ(高い位にある者はより多くの責務を負う)」の精神。

マーチメイン夫人の弟たちはみな第一次大戦で戦死している。その弟たちの記録を本に編纂する仕事をサムグラス氏が依頼されていた。

 

ピクニック(第1話)

チャールズとセバスチアンは借りてきた車に乗ってブライヅヘッドへ向かう。途中の木陰で車を止め、用意してきたイチゴを食べワインを飲むという優雅なピクニック風景が素敵。

アントニー・ブランシュ

セバスチアンの怪しげな友人で、吃音気味である。イートン校では同窓で、アントニーもカトリック教徒だったため交際するようになったらしい。彼の父の職業の関係で外国暮らしをしてきており、イギリス生まれではない。そのためか、挨拶としてよく相手の両頬にキスをする(これはどちらかといえばラテン的な挨拶で、イギリス人はよほど親しくないとここまでしない)。

セバスチアンに招かれた食事会の席で、アントニーが窓から読み上げていたのは、T.S.エリオットの『荒地』。
>>T.S.エリオットを描いた映画『愛しすぎて 詩人の妻』

「彼はプルーストやジードと一緒に食事をする仲で、コクトーやディアギレフとはもっと親しく付き合っていた。」
『ブライヅヘッドふたたび』吉田健一・訳
・・・それぞれ作家のマルセル・プルースト、アンドレ・ジイド、ジャン・コクトー、ロシアバレエ団を率いたセルゲイ・ディアギレフのこと。 ここに並んでいるアントニーが親しく交際していたとされる名前は当代きってのセレブリティであるのと同時に、すべて同性愛者としても著名な人物ばかり。

同性愛

カーラが指摘していたように、チャールズとセバスチアンの友情はホモセクシュアルすれすれの境界線にいるのかもしれないが、しかしあくまで精神的なもの。 のちにチャールズが、セバスチアンにそっくりな彼の妹ジュリアに恋心を抱くのも、セバスチアンの代わりという見方もできなくもない。

アントニー・ブランシュは明らかに同性愛者として描かれており、よくふざけてセバスチアンにもキスをしていた。イートン校などパブリックスクール出身者には同性愛者が少なくない。アントニーがオックスフォードを辞めた理由も、ミュンヘンの巡査に夢中になったためで、イスタンブールにいたときも男の子と一緒だった。

詳細ははっきりと描かれていないが、第7話でセバスチアンと同居していたドイツ人のクルトは彼と同性愛関係にあったという見方もある。

第10話でアントニーがチャールズを怪しげなゲイバーに連れて行く場面もある。

ちなみに『ブライヅヘッドふたたび』は1999年度のTop100 Gay Booksの第19位に入っているらしい
www.sbu.ac.uk/stafflag/topgaybooks99.html

 

パブ

オックスフォードで学生たちが集まるパブの様子が描かれている。
付け髭をして食事していたセバスチアンにアントニーがキスする場面も。

テディ・ベアのアロイシアス

「私は非常に後悔しています。アロイシアスが、貴方が許して下さるまで私には口を利かないと言っていますので、今、昼の食事にお出で下さいませんか。 セバスチアン・フライト」(吉田健一訳)
・・・チャールズの部屋で嘔吐したセバスチアンからの、極めて印象的なメッセージ。

オックスフォード時代のセバスチアンが肌身離さず持っている大きなテディ・ベアのアロイシアス。 カトリックの「聖アロイシアス」は子供や若年者のための守護聖人とされているので、子供のお守り役としてのテディベアにぴったりの名前と言える。

イギリスの子供は早くから母親と離れて一人寝をさせられるので、寂しくないようにテディ・ベアを与えられることが多い。ちなみにジュリアのベッドにもテディ・ベアがいるのが見える。彼女はさすがに持ち歩きはしないが。

ちなみにオックスフォードには「アロイシアス教会」というカトリックの教会がある。
The Oratory Catholic Church of St. Aloysius Gonzaga
25 Woodstock Rd, Oxford Oxfordshire OX2 6HA

St Aloysius Gonzaga(16世紀イタリアの聖人)
www.catholic-forum.com/saints/saintl71.htm

聖セバスチアン

アントニーがセバスチアンに「君を聖セバスチアンのように矢でハリネズミのようにしてやりたいね」という場面が。

アロイシアスが聖人の名であるように、「セバスチアン(セバスチャン)」というのもまた聖人の名。 聖セバスチアン(聖セバスチャン/聖セバスチアノ)は、兵士や射手の守護聖人とされている。 3世紀、キリスト教迫害が苛烈を極めた頃のローマ軍の兵士で、キリスト教徒であることを隠して近衛兵となっていたことが発覚し処刑されることに。 弓で射殺すよう命じられたが奇跡的に命をとりとめ、改めて時の皇帝を非難する。 絵画のモティーフとなる時は、全身に矢が刺さった姿で描かれることが多い。

ちなみに聖セバスチアンはしばしばゲイのイコンとして扱われることも多い。 確かに、縛り付けられた半裸の美しい青年の体が無数の矢で貫かれているという構図はあまりにも官能的だ。 三島由紀夫が少年時代に聖セバスチアンの絵画を見て自らの性的嗜好を知ったというのは有名な話であるし、デレク・ジャーマンの映画『セバスチャン』等もその一例として挙げられる。

モロッコで外人部隊にいた元軍人のクルトの世話を焼いていたのも、兵士の守護聖人である聖セバスチアンらしいといえようか。

St Sebastian
www.catholic-forum.com/saints/saints03.htm

Et in Arcadia Ego

Et in Arcadia Ego」は「そして我もアルカディア(理想郷)に在り」「アルカディアにさえも私(死)は存在する」という意味のラテン語で、チャールズの部屋にある頭蓋骨に書かれている言葉。Nicolas Poussinの有名な絵画のタイトルでもあり、この絵の中で牧歌的な羊飼いたちが指している墓碑銘に書かれている言葉。「メメント・モリ(死を忘れるな)」という意味合いを含むため、頭蓋骨にこの言葉が書かれていたのだろう。

鉄道のある風景

ブライズヘッドの最寄駅はMelton Carbury Station。1920年代とあって、走っているのはもちろん蒸気機関車。

ヴィンテージ・カー

裕福な上流階級の物語なので、1920年代と言えど登場人物たちはみな雰囲気ある車に乗ったり運転したりしている。この時代のヴィンテージカーに関心がある方なら、たまらない映像だろう。現代的な女性ジュリアは運転もできるし、煙草もふかす。

クリスマスある風景

ブライヅヘッドでのクリスマスは2階描かれている。ホールに大きなクリスマスツリーが飾られている。二回目のクリスマス(第5話)は実際のクリスマスから数日経った後だが、欧米では十二夜(1月6日)までクリスマスの飾りはそのままにしておくものなので、ツリーもまだ飾られている。

ロンドンのタウンハウス

ロンドンにあるマーチメイン家のタウンハウス"マーチメインハウス"は、お屋敷街として知られる閑静なセント・ジェームズ街にある。一方、チャールズの父の家はハイドパークに程近いベイズウォーターにある。

マーチメインハウスは後に売却・取り壊しの憂き目にあうことに。 ブライディの依頼でチャールズはこの屋敷の絵を書くことになり、これがチャールズの建築画家としてのキャリアのスタートとなった。

ブルームズベリー・グループ

新入生の頃チャールズが部屋に飾っていたのはロジャー・フライによる風景を描いた屏風(オメガ工房が店じまいをした時に安く手に入れたものとか)。 チャールズの蔵書リストにもロジャー・フライの『視覚と意匠』、リットン・ストレイチー『ヴィクトリア朝名士伝』が。

アントニー・ブランシュと食事した翌日、セバスチアンの部屋を訪れたチャールズが手に取っていた本はデイビッド・ガーネットの小説『狐になった奥様(Lady into Fox)』。

アントニー・ブランシュもブルームズベリー・グループの知識人たちが集っていたオックスフォード郊外のガーシントン・マナーによく顔を出しているらしく、"ガーシントンに行く前にオルダス・ハックスレーの『昔風のへー踊り』を読んでおかなければ"などと言っている。

ブルームズベリーグループについて詳しくはこちらをご覧ください
>>ブルームズベリー・グループ (Bloomsbury Group)

1926年のゼネラルストライキ

石炭業界から端を発したストライキは全産業に飛び火し、1926年5月3日にゼネラルストライキ(ゼネスト)に突入。 イギリス中を混乱に陥れた。

www.spartacus.schoolnet.co.uk/TUgeneral.htm

ハットンガーデンでダイヤモンドを買う

レックスがジュリアを連れて婚約指輪を買いに行ったのは、ロンドンの中でもダイヤモンド取引が盛んな場所として知られるハットン・ガーデン。 ダイヤモンド産業にかかわるユダヤ人が多く住んでいる地域。 カルティエなどの宝石店で選ぶのではなく、ルース(裸石)の状態から好みの石を選ぶというところが女心をくすぐるレックスの演出。

大西洋を渡る客船

チャールズとジュリアが偶然折り合わせた船の撮影には、クイーン・エリザベス二世号が使用された。 実際に酷い嵐で大変だったらしい。

 

 

ロケ地

Castle Howard, North Yorkshire

(ブライヅヘッドとして)

17世紀末に建造されたハワード家のマナーハウス。アトラスの噴水などが印象的に使われている
Castle Howard, York, North Yorkshire Y060 7DA
www.castlehoward.co.uk

Levisham station, North Yorkshire

(Melton Carbury駅として)

North Yorkshire Moors Railway
www.nymr.demon.co.uk

Christ Church, Oxford University

1525年にウルジー枢機卿によって創立される。枢機卿の失脚後、1546年に改めてヘンリー8世によってクライストチャーチと名を変えられた。 その他卒業生には哲学者ジョン・ロック、詩人のW.H.オーデン、科学者のアインシュタインらがいる。
Oxford OX1 1DP
www.chch.ox.ac.uk

Hertford College, Oxford University

原作者のイーブリン・ウォーはハートフォードコレッジ出身。 セバスチアンの部屋の撮影には、実際にウォーが暮らしていた部屋を使用している。
www.hertford.ox.ac.uk/alumni/waugh.htm

Catte Street, Oxford OX1 3BW
www.hertford.ox.ac.uk

Wadham College, Oxford

www.wadham.ox.ac.uk

Bridgewater House, London

(第2、7、8話:ロンドンのマーチメインハウスの外観として)

グリーンパークとセント・ジェームズの間の袋小路Cleveland Rowにある屋敷
www.victorianlondon.org/buildings/bridgewaterhouse.htm

Tatton Park, Cheshire

(ロンドンのマーチメインハウスの内部として)

ナショナル・トラストの管理下にある広大な邸宅
Knutsford, Cheshire WA16 6QN
www.tattonpark.org.uk
www.nationaltrust.org.uk

Hotel Portmeirion, Wales

(第6話、南仏の場面)

富豪のウィリアム・エリス卿によってイタリア風に作られた村にあるホテル。 Portmeirionはここで撮影されたTVシリーズ『プリズナー No 6』や、陶器ブランドPortmeirionで有名。(検索:ポートメイリオン・ポートメリヨン・ポートメイリヨン)

www.portmeirion.wales.com
www.virtualportmeirion.com

Lyme Park, Cheshire

(第6話、ジュリアが結婚式を挙げるプロテスタントの教会として)

www.nationaltrust.org.uk

 

Heaton Hall, Manchester, Greater Manchester

(第7話、Nancy Tallboyの屋敷として)

18世紀の新古典主義のカントリーハウス。
Heaton Park, Prestwich, Manchester M25 5SW
www.manchestergalleries.org/html/heaton/heaton_home.jsp

Adelphi Hotel, Liverpool

(チャールズとジュリアが乗った客船のダイニングルームとして)

Britannia Adelphi Hotel : Ranelagh Place, Liverpool L3 5UL

Park Lane Hotel, London

(チャールズとジュリアが乗った客船の内部として)

BIBA, Kensington, London

(チャールズとジュリアが乗った客船のラウンジとして)
Kensington High Streetにあったブティック

 

イタリア・ベニス

マルタ島、GOZO

(モロッコの場面)

 

キャスト

Jeremy Irons .... Charles Ryder
Anthony Andrews .... Sebastian Flyte

Laurence Olivier .... Lord Alex Marchmain(セバスチアンの父)
Claire Bloom .... Lady Teresa Marchmain(セバスチアンの母)
Diana Quick .... Julia Flyte(セバスチアンの妹)
Phoebe Nicholls .... Cordelia Flyte(セバスチアンの妹)
Simon Jones .... Brideshead 'Bridey' Flyte(セバスチアンの兄・伯爵)
Mona Washbourne .... Nanny Hawkins(セバスチアンの乳母)
Roger Milner .... Wilcox (ブライズヘッドの執事)

Nickolas Grace .... Anthony Blanche(セバスチアンの友人・ゲイ)
John Grillo .... Mr Samgrass(セバスチアンのお目付役)

John Gielgud .... Edward Ryder (チャールズの父)
Michael Bilton .... Hayter(チャールズの父の給仕長)

Charles Keating .... Rex Mottram(ジュリアの夫・カナダ人)
Jeremy Sinden .... Boy Mulcaster子爵(セバスチアンとチャールズの友人)
Jane Asher .... Celia Ryder (チャールズの妻・マルカスターの妹)
Stephen Moore .... Jasper (チャールズの従兄)
Stephane Audran .... Cara (イタリア人女優・セバスチアンの父の愛人)
John Le Mesurier .... Father Mowbray(マーチメイン家と懇意にしている司祭)
Bill Owen .... Lunt (チャールズの寮の校僕)
Jonathan Coy .... Kurt (ドイツ人兵士・セバスチアンとモロッコで同居していた)
Michael Gough .... Dr Grant (第11話:マーチメイン侯の担当医)
Niall Toibin .... Father Mackay(第11話:マーチメイン侯に終油の秘蹟を授けた司祭)

Richard Hope .... Hooper (新任の士官:1944年のチャールズの部下)
John Nettleton .... Commanding Officer
Kenneth Cranham .... Sgt. Block

 

参考資料とソフト

imdb.com/Title?0083390

www.catholic.org
www.catholic-forum.com

An Evelyn Waugh Website by David Cliffe
www.abbotshill.freeserve.co.uk
www.abbotshill.freeserve.co.uk/Brideshead.html

Doughbting Halll
www.doubtinghall.com

原作

『ブライヅヘッドふたたび』吉田健一・訳/ちくま文庫
・・・名訳と誉れ高い吉田健一氏による翻訳だが、現在入手困難。(このページのトップにある写真)

洋書検索

 

ソフト

国内版ビデオ6巻組(廃番。品揃えの良いレンタル店で探してみて下さい)

輸入版VHS(5巻組)
amazon.co.jp/amazon.co.jp

海外盤DVD:
北米盤 リージョン1(amazon.co.jp/amazon.com) デジタルリマスターされており、かなり綺麗な映像。英語字幕無、特典映像あり
UK盤 (リージョン2・PAL)

輸入ソフト購入時の注意

サウンドトラック

オーディオブック

朗読:ジェレミーアイアンズ
朗読:ジェレミー・アイアンズ

BBC RADIO(CD)
BBC RADIO(カセット)


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