嘆きの谷: グレンコー

おそらくスコットランドでもっとも有名なglen(渓谷)といったら、やはりGlen Coeだろう。

1692年冬、オレンジ公ウィリアム(ウィリアム三世。名誉革命によってオランダから英国に迎えられた)に忠誠を誓う文書の提出が遅れたために、英国王の命を受けたキャンベル一族によってマクドナルド一族が虐殺された悲劇の谷として知られている。 だが、そういった歴史を抜きにしても、この風景はあまりにもドラマティックだ。

A82道路を南下して行くと、Glen Coeに入ってゆく瞬間は吸い込まれるようだった。 キリリと険しい谷の斜面を染めるヒースの見事なこと。 いつまで見ていても飽きない景色とはこのことだ。 ゆっくり移動してゆく霧、谷間を流れる清流。 道路脇のところどころに設けられている空き地に車を止めて散策していると、遠くの斜面でトレッキングしている人達の姿も見える。
 

 

グレンコーで撮影された映画:
『サイコ2001Complicity (2000)
『ブレイブハート』Braveheart(1995)・・・Buchaille Etive Mor
『ロブ・ロイ』Rob Roy(1995)
『ハイランダー/悪魔の戦士』Highlander (1986) ・・・Buchaille Etive Mor
『モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル』 Monty Python and the Holy Grail (1975)

Rannoch Moor

グレンコーを抜けると視界は急に開ける。 そこは一面の荒涼とした平野・・・じめじめと湿った泥んこの上に草が密生しており、ところどころにちょろちょろと川が流れている。 平たく言えば泥濘とゴツゴツとした岩だらけの湿地なのだが、私は霧に霞むこのムーアがすっかり気に入ってしまい、いつまでも飽かず眺めていたくなった。 どこか哀愁漂う、心惹かれる風景がそこにあったのだ。 あの空気感はとても文章で表せるものではないし、ましてやとても写真で切り取ることなどできない。 浮世離れした、そんな感じなのだ。
Rannoch Moorで撮影された映画
『サイコ2001Complicity (2000)
『トレイン・スポッティング』Train Spotting (1996)Corrour Station
『ロブ・ロイ』Rob Roy(1995)
『モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル』 Monty Python and the Holy Grail (1975)

 


トロサックスの風景

Rannoch Moorを出ると、風景も植生もガラッと変わってしまった。 まるで天上から地上に舞い降りたようだ。 ゴツゴツした岩やヒースのかわりに、緑濃い豊かな林が現れる。 このあたりからはじまるTrossachs地方は、ハイランドの入り口としてヴィクトリア時代にたいへん栄えていた保養地だそうだが、これまで通ってきたハイランドとは空の色も緑の色も、全く違う。

このあたりはSirウォルター・スコットが「湖上の麗人(the Lady of The Lake)」詠んだLoch Katrine、そしてなんといってもあのロブ・ロイが活躍した地として今でも多くのツーリストを惹きつけている土地である。 ツーリスト・インフォメーションでもパンフレットをもらったが、リーアム・ニーソンの『ロブ・ロイ』公開以来、この18世紀の英雄の足跡をたどってトロサックス探索をする人々が急増したとか。

ロブ・ロイ
「ロブ・ロイ」とは「赤毛のロバート」という意味で、本名はロバート・マクレガー。「ロブ・ロイ」というカクテルもある。
>>映画『ロブ・ロイ』Rob Roy(1995)

ブリッジ・オブ・アラン: 邸宅街にうっとり

そろそろ宿を探す時間になったが、どうも良さそうなところが見つからない。 スターリングに入ってしまったら少々騒がしくなりそうなので、できればその手前でないものか。 ふわふわと田舎道を漂っているうちに、洒落た建物が並ぶ町に行き当たった。 おお、lovely! 地図で確認すると、そこはBridge of Allanという場所。 なるほど、River Allanがすぐ近くを流れている。 とにかく家人も私も建物&家具フェチである。 うきうきしながら街並やお屋敷を見て回っているうちにB&B発見。 ちょうど良かった。 遠くにスターリングのウォレス・モニュメントが見えるのも気に入った。
案内されたのは、大きなボウ・ウィンドウ(弓状に張り出した窓)が印象的な 広々とした天井の高い部屋。 ダブルベッドの他に、子供用二段ベッドまで入ったファミリールームとしても使えそうなもので、料金はen-suite(トイレ・シャワーつき)でもひとり19ポンド。 家具がパイン材なのはちょっと残念だが、こんな大きな部屋のことだ、昔は重厚でシックなオークやマホガニーの家具が置かれていたのだろう。

天井が高いとそれだけで気持ちがいいが、この部屋は天井際に凝ったモールディング(飾りの一種)が施されていて、ほれぼれしてしまう。

 


まったくイギリス人の胃袋は!

宿の主人がこの街にあるレストランのメニューを取り揃えておいてくれたので、荷解きして落ち着いてからチェック。 フレンチからイタリアン、中華までなんでもあるようだが、その中のひとつ、インド料理屋に行くことにした。

小奇麗な店構えで、入り口にはハンギング・バスケットが。 Take Away(お持帰り)もできるそうなので、用意してもらって部屋でゆっくりいただくとしよう。 メニューに載っている料理名でわからないものを教えてもらいつつ、じっくり吟味する。

ふたりならセットメニューがお得ということで、それにオプションでタンドリ・チキンを追加。 セットといっても前菜、メインとそれぞれ選べるようになっている。 前菜にSpiced Onions & Popadoms(パリパリとしたスナックのようなもの。美味)とPakora(てんぷらのようなもの)。 カレーはChicken Tikka Massalaと、Lamb Rogan Josh。 つけあわせにFried RiceとGarlic Nanで、14.95ポンド(二人分)。

用意された包みを受け取ったとき、そのあまりの重さに悪い予感がしたのだが、部屋に戻ってあけてみたらもうびっくり。 二人前どころか、4-5人前といってもおかしくない大量の料理が入っていたのである。 カレーソースもずっしり、ライスもギッシリ、これでもかっと入れてある。 ああ、げっそり。まったくイギリス人の胃袋ってやつは!

味はというと・・・ひとことで言うと「タルい」。 やはりインド料理も中華も、こればっかりはロンドンに限る。 地方都市で変わったものを食べようとするとろくなことがないと経験で学んだはずではなかったか。 日本でだって同じだ。 当地のインド料理店で食べたカレーのあまりのピンボケ具合にげっそりさせられた経験から、全然学んでいないではないか。 このカレーも不味いというわけではないが、ちょっとキレとコクに欠けるのが残念。 ただ、そのぶん前菜のPopadomsなどは美味しかった。 揚げるだけだし。

ブリッジ・オブ・アラン(Bridge of Allan)
ヴィクトリア時代に保養地として栄えた瀟洒な街。 スターリングからは目と鼻の先。
www.bridgeofallan.com
 
 

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