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『ブリジット・ジョーンズの日記 きれそうなわたしの12か月』Bridget Jones: The Edge of Reason (2004)

監督:ビーバン・キドロン
脚本:Andrew Davies/Helen Fielding/Richard Curtis/Adam Brooks
原作・脚本・製作総指揮:ヘレン・フィールディング

Story

前作のラストでめでたく理想的な男性マーク・ダーシーという恋人を得て幸せいっぱいのブリジット。相変わらず体当たりレポートがウケで仕事も順調。しかし美脚の弁護士見習いレベッカとマークの親密さを見るにつけブリジットは疑心暗鬼に。マークと参加した弁護士協会のディナーパーティーでも失態を演じ、些細なことが原因で喧嘩しブリジットはマークと別れてしまう。

傷心のブリジットは勤めているTV局の仕事でタイへの取材を命じられるが、いまや人気旅行レポーターとなったダニエルも同行することに。昔からマークのものとなると手を出さずに入られないダニエルに誘惑され陥落寸前。しかしタイで麻薬犯罪に巻き込まれたブリジットは無実の罪で投獄されてしまい・・・

『ブリジット・ジョーンズの日記』 Bridget Jones's Diary (2001) の続編

 

Check!

階級の差

原作の『ブリジット・ジョーンズの日記』がオマージュを捧げているジェイン・オースティンの『高慢と偏見』Pride and Prejudice (1995)もヒロインとMrダーシーの間には階級の格差があったが、ブリジットとマーク・ダーシーの間にも階級の違いが如実に感じられるエピソードが多数見られる。

法曹協会のディナーパーティーの場面でマークの弁護士(barrister)仲間が多数登場するが、彼らはクイズに出題されるラテン語やギリシャ語を解するだけの教養があるアッパーミドルクラスの人々(だからこそ、こういったクイズの出題が成り立つ)。ブリジットはそんな彼らを見て「 Tory, upper-middle class twits」と毒づいていたが。Toryは保守党員のこと(イギリスの二大政党は保守党と労働党)。twitはスラングで、「バカ、アホ、マヌケ」くらいの意味。

イギリスのアッパークラスは王室・貴族等だが、ミドルクラスはアッパーミドルとローワー・ミドルに大別される。
アッパーミドルは弁護士や医師、銀行員(上級職)のような専門職を持った裕福な人々を指す。アッパークラスは地代など主に「不労所得」で生きているので、そこがアッパーミドルとの大きな違い。アメリカの観客を意識してか、弁護士は「lowyer」という単語を使っていたが、イギリスの弁護士は「バリスター(法廷弁護士)」と「ソリシター(事務弁護士)」に分かれる。

マークと親しげなレベッカ「脚が長くてまだ22歳で、父親はスコットランドの半分を所有している」と描写されていたように、父親が大地主という裕福な家の出らしい。

ブリジットが妊娠したかもしれないと思ったマークは、「男の子が生まれたらクリケットとラグビーをやらせて、イートン校に通わせる」と喜ぶ。クリケットもラグビーも、ともにイギリスではアッパーミドルやアッパークラスが楽しむスポーツ。イートン校は伝統あるパブリックスクールの中でも最高峰といわれる名門校(歴代の多くの首相の出身校であり、王室・貴族の子息も多数在籍している)。ダーシー家はマークに至るまで5代続けてイートン校に通っていたという台詞からも、マークの家柄がうかがえる。実際、マークの父親は元海軍提督(家柄が良くないとこの地位につくことは難しい)。一方、それを聞いた庶民のブリジットは子供を寄宿制の学校に通わせるなんてと反発する。

一方、ブリジットの方は飛行機の中で「自分は女子校出でないから」と言っていた場面からも窺えるように、ごく当たり前の庶民的な育ち。ドイツの場所さえ知らないほどだから、勉強も相当サボっていたようだ。口の悪いブリジットは「I will not fuck it up again, Mum. 」等と下品な言葉遣いをして母親に「口を慎みなさい(Language!)」と叱られる。

デパート「Debenhams」

ブリジットが母親と待ち合わせて出かけたデパート「Debenhams」もどちらかといえば親しみやすいミドルクラス向けの店。ドレスを買うのにブリジットたちは高級店ハロッズやハービー・ニコルズは選ばないかもしれない。

334-348 Oxford Street W1C 1JG
www.debenhams.com

Trivial Pursuit

法曹協会のディナーパーティーで、ブリジットは「Trivial Pursuit」をよく観てるからとクイズ大会が始まったことに喜ぶ。「Trivial Pursuit」は欧米で人気のあるボードゲームだが、同名のクイズ番組もある。
www.trivialpursuit.com

*字幕では「トリビアの泉」となっていたが、フジTVの「トリビアの泉」はクイズ番組ではない。

マークの家

ブリジットの雑然とした居心地よさの漂うフラットとは対照的に、マークの家はシンプルで整然としている。キッチンもモダンな造りで、キッチンの備品はPersil(洗剤)の箱以外は全て目に触れないところに片付けられている。
www.persil.co.uk

ブリジットが覗き見して滑り落ちていたコンサバトリー(サンルームのようなもの)はイギリスの住宅によく見られるもので、マークの家の空間の余裕を感じさせる。

イギリスのお菓子:スポティッド・ディック(Spotted Dick)

ブリジットの実家でマーク・ダーシーのご両親を招いてもてなす場面。「ミニ・トリークル・タルト」等、ブリジットのママは何でもミニチュアサイズのお菓子を作っているが、この時「ミニ・スポティッド・ディック」というお菓子も登場する。Spotted Dickとは干しぶどうが入った蒸しケーキのようなもの(正確にはスウェット・プディング)だが、劇場公開版の字幕では「短小ウィンナー」などとスポティッド・ディックがお菓子であることが全く分からない表現になっていた。そのため、元海軍提督たるマークの父君が下品な言葉を口走る変人に見えてしまったかもしれない。Dickは俗語で男性のXXを指すことが多いため(辞書を引いてみて下さい)、ついそういった字幕になってしまったのかもしれないが。
注:劇場公開版の字幕担当者は前作『ブリジット・ジョーンズの日記』 Bridget Jones's Diary (2001) でもmince pieをミート・パイと訳していた。イギリスのお菓子事情には疎いに違いない。DVDでは訂正されている。

アメリカ人が聞けば面食らう言葉だが、もちろんイギリスでもSpotted Dickという語感からそちらの俗語を連想することが少なくない。この場面は「お菓子」と「ミニサイズの男性のXX」をひっかけた笑いをとる場面なのだが、このあたりのニュアンスはなかなか日本語に訳すのが難しい。でも、イギリス人にとって基本はあくまで「お菓子」。翻訳の難しいジョークはむしろ放っておいた方がいいのでは。

『ラルフ一世はアメリカン』 King Ralph (1991)にもアメリカ人の主人公が「Spotted Dick」を出されて勘違いする場面が出てくる。

ヤケ食いに走るブリジット:Ben & JERRYのアイスクリーム

ヤケになったブリジットがドカ食いしているアイスクリームのブランドは「Ben & JERRY」。BenもJERRYも男の子の名前なので、この場面の台詞は「マークと上手くいかなくたって、私にはベン君とジェリー君がいるんだから!」というジョーク。

劇場公開版の字幕では「アイスくんとクリームくん」になっていたが、DVDでは「ベンくんとジェリーくん」になっている

www.benjerry.co.uk

タイへの取材旅行

タイへ向かう飛行機の中でシャザが偶然隣り合わせた男ジェッドもシャザも、偶然「The Beach」のペーパーバックを持っていて顔を見合わせて笑う場面がある。これから出かけようとしている場所を舞台にした小説を読みたくなったというところだろう。「The Beach」はレオナルド・ディカプリオ主演の映画『ビーチ』の原作本。著者はイギリスのベストセラー作家アレックス・ガーランド。

『ダロウェイ夫人』

タイへ向かう飛行機の中でエコノミークラスにいたブリジットを自分の隣に呼び寄せるダニエル。それまでヴァージニア・ウルフの『ダロウェイ夫人』を読んでいたダニエルは「もし君が僕を退屈させるようだったら、"ダロウェイ夫人"を読むからね。」とからかうような口調で言う。

『ダロウェイ夫人』には主人公ダロウェイ夫人の若い頃の親友サリー(女性)との淡い恋心も描かれている。また著者のヴァージニア・ウルフも同性愛的な傾向があったことは有名で、作家のヴィータ・サックヴィル=ウェスト(英国風ガーデニングファンの憧憬の的、シシングハーストの庭園を作った女性としても有名)との恋愛関係が良く知られている。ヴァージニア・ウルフは映画『めぐりあう時間たち』The Hours (2002)にも描かれている。
・・・この『ダロウェイ夫人』がブリジットが後に呆気にとられることになるこの映画ラスト近くの"大どんでん返し"の伏線になっているような気がしないでもないのだが。

*劇場公開版の字幕では『ダロウェイ夫人』という固有名詞は出てこず「エッチなビデオ」という訳になっていたが、『ダロウェイ夫人』は即物的なエロティシズムとは程遠い文芸作品だ。字幕担当者が"エマニエル夫人"や"チャタレイ夫人"の路線と混同していた可能性もある。ダニエルは多少性格に問題があるが、文学・美術にも通じ天文学や地誌の知識も持ち合わせた教養ある男(ケンブリッジ大学卒でマークの幼馴染)。こういった設定の男性が、相手がブリジットとはいえレディを前に、しかも公衆の面前(他の乗客の目に触れるような場所)でエッチなビデオを観ると言い出すなんて前後の文脈から判断してありえないからだ。第一、この時ダニエルは『ダロウェイ夫人』と思われる本を手に持っている。DVD版の字幕では単に「映画」という表現に訂正されている。

>>『ダロウェイ夫人』Mrs Dalloway (1997)

Shag

オースティン・パワーズ以来、すっかり市民権を得たイギリスのスラング「Shag(=making love)」。この映画でも至る所でこの言葉が使われている。

動くものを見ると何でもshagしたがるというダニエルだが、これまで彼が体験したbest shagの相手はブリジットだったそうだ。ブリジット以外では高校時代の男の子(some guy in the fifth grade)が良かったと言うから、ダニエルもパブリックスクール特有の同性愛を経験したということか。

The Serpentine Gallery

ダニエルがJohn Currinの作品を解説していたのは、ケンジントン・ガーデンにある美術館The Serpentine Gallery。John Currinはアメリカ出身の画家で、サーペンタイン・ギャラリーでジョン・カリン展が行われていた時期(2003年9-11月)はこの映画が撮影されていた頃に一致する。

John Currin展の記事
www.bbc.co.uk/dna/collective/A1164971

The Serpentine Gallery
www.serpentinegallery.org

www.flybmi.com

その他

ロケ地

>>>特集『ブリジット・ジョーンズの日記』 のロンドンもご覧ください

参考:ロンドン観光局サイト(www.visitlondon.com)内 "Bridget Jones Movie Map"

Primrose Hill, London

冒頭のブリジットとマークのデート(サウンド・オブ・ミュージックのパロディのような)の場面

 

パブ「Globe Tavern」 (Borough地区:8 Bedale St, London SE1 9AL >>map)

・・・2階がブリジットのフラットという設定。
(英国犯罪史上有名な大列車強盗が計画された場所としても知られる。)

 

Borough Market, London

www.boroughmarket.org.uk

タワーブリッジ, London

www.towerbridge.org.uk

Piccadilly Circus, London

電光掲示板にブリジットのことが流れる場面

Piccadilly Circus Station, London, England

Middle Temple, Temple, Holborn, London

・・・マークのオフィスの廊下の場面

ロンドンのVictoria EmbarkmentとFleet Streetの間にあるチューダー様式の歴史ある法学院。1602年にシェイクスピアが『十二夜』を初演したことでも知られる。テンプルという名は12世紀にここに本拠地を置いていたテンプル騎士団に由来している。 内部にある彫刻を施した17世紀の衝立と、ドレイク提督が乗り込んだ船の横木で作ったテーブルが有名。 テンプルバー記念碑の置かれている地点がシティとウェストミンスターの境界。(Access:地下鉄Temple駅)

2 Temple Place, Holborn, London

・・・マークのオフィスとして

Chiswick Business Park, London

・・・Sit Up Britainの本部

Headcorn Aerodrome, Kent, England

・・・ブリジットのパラシュート降下シーン

Buckinghamshire

・・・ブリジットのパラシュート降下シーン

The Light Bar & Restaurant, Shoreditch High Street EC2

・・・ブリジットがシャザ達3人と飲んでいたバー
www.thelighte1.com

Rigby & Peller,Conduit Street, Mayfair, London

ブリジットがパーティー用のコルセットを無理やりはめていた店。1960年以来エリザベス女王のロイヤル・ワラントを保持している王室御用達ランジェリー・ストア。

22a Conduit Street (off Regent Street)
www.rigbyandpeller.com

Institution of Civil Engineers, 1 Great George Street SW1

・・・法曹協会のディナーパーティーの場面。
撮影に使用されたのはGreat Hall

Serpentine Gallery

ダニエルがTVの撮影でJohnCurrinの作品解説をしていた美術館
www.serpentinegallery.org

Italian fountains,Kensington Gardens,London

マークとダニエルがケンカをした噴水
www.royalparks.gov.uk/parks/kensington_gardens

Debenhams, London

ブリジットのママが2度目のラヴェンダー色の結婚式衣装を買いに来たデパート
334-348 Oxford Street W1C 1JG
www.debenhams.com

Hanwell Cemetery, London

Uxbridge Road W5
www.westminster.gov.uk/communityandliving/burials/hanwell.cfm

Richmond, Surrey, England

(Inside and Around Number 9 Kings Road)

St. Bartholomew's Hospital, London

タクシーから降りたブリジットが後ろを通ったトラックに水を跳ね上げられる場面は、St. Bartholomew's Hospitalの「Henry XIII Gate」。門の入り口にヘンリー八世の銅像の脚の部分が見え、後ろにスミスフィールド・マーケットが見える。(情報提供:Eikoさん)

West Smithfield, London, EC1A 7BE

County Hall, Westminster, London

www.londoncountyhall.com

Aldbury,Hertfordshire,England

その他

Lech, Vorarlberg, Austria
Bangkok, Thailand
Nakornpathom, Thailand
Phuket, Thailand
Rome, Lazio, Italy

 

 

キャスト

Renee Zellweger .... Bridget Jones
Colin Firth .... Mark Darcy(ブリジットの恋人)
Hugh Grant .... Daniel Cleaver

[ブリジットの親族とその周辺]
Jim Broadbent .... ブリジットの父
Gemma Jones .... Pamela (ブリジットの父)
James Faulkner .... Uncle Geoffrey(ブリジットのおじ)
Celia Imrie .... Una Alconbury (ブリジットのおば)

Jacinda Barrett .... Rebecca Gillies (マークと親しい弁護士仲間)
David Verrey .... Giles Benwick (太った弁護士)
Mark Tandy .... Derek (弁護士)
Alex Jennings .... Horatio (弁護士)
Catherine Russell .... Camilla (弁護士)
Ian McNeice .... Quizmaster (弁護士会のパーティーでのクイズ司会者)

Donald Douglas .... Admiral Darcy (元海軍提督・マークの父)
Shirley Dixon .... Mrs. Darcy(マークの母)

Neil Pearson .... Richard Finch(ブリジットの上司)

[ブリジットの親友たち]
Sally Phillips .... Sharon 'Shazzer (新聞記者)
Shirley Henderson .... Jude(銀行勤務)
James Callis .... Tom (元ミュージシャン・ゲイ)

[その他]
Jeremy Paxman .... Himself
Trevor Fox .... カリスマ美容師
Paul Nicholls .... Jed (シャザと親しくなる青年。実は・・・)
Jason Watkins .... Charlie Parker-Knowles 領事補佐
Neil Dudgeon .... タクシードライバー
Richard Braine .... 牧師

 

参考資料・リンク・ソフト・関連商品情報

関連リンク

imdb.com/title/tt0317198/

www.bridgetjonesthemovie.com

www.bj-diary.jp

www.visitlondon.com

 

 

Books

原作:_The Edge of Reason_

 

サウンドトラック

 


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